55 塔
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クラリスに「優勝のご褒美は何がいい?」と聞いたら、「私に愛の告白をしなさいよ」と言われたでござる。
何故そこで愛ッ!?
「私はアリゼが好きよ。
でも、アリゼからは私をどう思っているのか、聞いてない」
「あ~……」
私がクラリスをどう思っているのか──それはもう言わなくても彼女には伝わっていると思うけれど、やっぱり言葉にしなければ駄目ですかね?
でも、自分の素直な気持ちを言うのって、なんだか抵抗があるんだよね……。
言わせんな、恥ずかしい──って感じ。
「私……前世を含めて、そういうことをしたことが無くて……。
なんだか凄く照れくさいです……」
「あら、私が最初ということなのね?
凄く嬉しいわ」
「ぐ……!」
思わず顔が熱くなる。
今ならラブコメの主人公がなかなか素直に「好き」と言えない気持ちが、分かるような気がするぞ。
古い考え方なのかもしれないけれど、大事なことを言葉にしてしまうと、それが軽くなってしまうような気がするんだ。
何度も繰り返すと『狼少年』みたいに、信じてもらえなくなる──と。
だけど一度も言葉にしないというのは、やっぱり駄目なんだろうな……。
しかし単純に、気の利いた告白の言葉が思いつかないという問題もある。
ストレートに「好き」って言えばいいだけなの?
それとも別なことを言った方がいいの?
「え~と……そのぉ……」
「そんなに言いにくいの?
だからご褒美という、大義名分を与えてあげているんじゃない。
その方が言いやすいでしょ?」
「まあ……その通りなんですけど……。
う~ん……」
クラリスの配慮はありがたい。
だけどすぐには踏み切れない。
恋愛経験が全く無い私は、思っていたよりもヘタレだったようだ。
「もう、アリゼ!
しっかりしなさい!」
「は、はいっ!」
い、いかんな。
このままではクラリスに主導権を握られて、尻に敷かれる。
よし、思い切ってやるぞ!
「姫様……それではいきますよ」
「ええ!
……って、なんだか顔が近くない?
──むぐっ!?」
私はクラリスの唇に唇を重ねた。
その瞬間、クラリスが硬直する。
そして私が唇を離すと──、
「ちょっ!?
ななななななななななん!?」
クラリスは混乱している。
両手をわしゃわしゃと動かして、挙動不審になっているのが可愛い。
「姫様……。
言葉にするよりも、行動することの方が簡単なこともあるんですよ。
これが私の気持ちです」
もうなんて言ったらいいのか分からなくなってしまったので、行動で示しました。
前世の世界ならばポリス案件だけど、こっちの世界ではそんなの関係ねぇ!
両思いだからいいよね?
「わ、分かったけど、いきなりこんな……!
バカなの!? バカでしょ!?」
「はい、バカなんですよ」
クラリスは私を罵るけど、その顔は真っ赤で、そして何処となく嬉しそうだった。
可愛いなぁ……。
「もう、今度は私からするわよっ!」
おや、負けず嫌いのクラリスが反撃しようとしている。
でもいいの?
これじゃあ、私へのご褒美になっちゃうよ?
「んっ……」
クラリスが唇を重ねてきた。
さっきは余裕がなくて気付かなかったけど、唇の感触が凄く柔らかい。
それに密着しているから、彼女のいい匂いが伝わってくる。
あと、心臓の音が凄い。
まるでドキドキが頭の中に、鳴り響いているみたいだ。
あ~、頭が沸騰しそうだよぉっっ……!
このままじゃ、クラリスにやられっぱなしになってしまうので、反撃しよう。
えい、舌を入れちゃえ。
「むぐぅぅっ!?」
クラリスが驚いて唇を離す。
その際に、ちょっと糸を引いていたのがエロい。
「またいきなり変なことをっ……!!
あなた、本当にバカなのっ!?」
「姫様が可愛すぎて、我慢できませんでした」
「もーっ!!
私にもさせなさいよっ!!」
再びクラリスの反撃。
私は甘んじてそれを受けよう。
こんな気持ちのいいことを、拒否できるものか。
ああ……私今、イチャラブしている。
ふふ……こんなに百合百合できて幸せだなぁ……。
私はこの日の為に、転生して来たのだと断言できる。
よし、ここに記念の塔を建立しようか。
……まあ、私は幸せすぎて天国に登るような気持ちだったけど、後でちょっと地獄に落ちてもらわなければならない者もいるけどね……。