表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

150/392

55 塔 

 ブックマーク・☆での評価・誤字報告・感想をありがとうございました! これがあるから、モチベーションも維持できます!

 クラリスに「優勝のご褒美は何がいい?」と聞いたら、「私に愛の告白をしなさいよ」と言われたでござる。

 何故(なぜ)そこで愛ッ!? 


「私はアリゼが好きよ。

 でも、アリゼからは私をどう思っているのか、聞いてない」


「あ~……」


 私がクラリスをどう思っているのか──それはもう言わなくても彼女には伝わっていると思うけれど、やっぱり言葉にしなければ駄目ですかね?

 でも、自分の素直な気持ちを言うのって、なんだか抵抗があるんだよね……。

 言わせんな、恥ずかしい──って感じ。


「私……前世を含めて、そういうことをしたことが無くて……。

 なんだか凄く照れくさいです……」


「あら、私が最初ということなのね?

 凄く嬉しいわ」


「ぐ……!」

 

 思わず顔が熱くなる。

 今ならラブコメの主人公がなかなか素直に「好き」と言えない気持ちが、分かるような気がするぞ。

 古い考え方なのかもしれないけれど、大事なことを言葉にしてしまうと、それが軽くなってしまうような気がするんだ。

 何度も繰り返すと『狼少年』みたいに、信じてもらえなくなる──と。


 だけど一度も言葉にしないというのは、やっぱり駄目なんだろうな……。


 しかし単純に、気の利いた告白の言葉が思いつかないという問題もある。

 ストレートに「好き」って言えばいいだけなの?

 それとも別なことを言った方がいいの?


「え~と……そのぉ……」

 

「そんなに言いにくいの?

 だからご褒美という、大義名分を与えてあげているんじゃない。

 その方が言いやすいでしょ?」 


「まあ……その通りなんですけど……。

 う~ん……」


 クラリスの配慮はありがたい。

 だけどすぐには踏み切れない。

 恋愛経験が全く無い私は、思っていたよりもヘタレだったようだ。


「もう、アリゼ!

 しっかりしなさい!」


「は、はいっ!」


 い、いかんな。

 このままではクラリスに主導権を握られて、尻に敷かれる。

 よし、思い切ってやるぞ!


「姫様……それではいきますよ」


「ええ!

 ……って、なんだか顔が近くない?

 ──むぐっ!?」


 私はクラリスの唇に唇を重ねた。

 その瞬間、クラリスが硬直する。

 そして私が唇を離すと──、


「ちょっ!?

 ななななななななななん!?」


 クラリスは混乱している。

 両手をわしゃわしゃと動かして、挙動不審になっているのが可愛い。


「姫様……。

 言葉にするよりも、行動することの方が簡単なこともあるんですよ。

 これが私の気持ちです」


 もうなんて言ったらいいのか分からなくなってしまったので、行動で示しました。

 前世の世界ならばポリス案件だけど、こっちの世界ではそんなの関係ねぇ!

 両思いだからいいよね?


「わ、分かったけど、いきなりこんな……!

 バカなの!? バカでしょ!?」


「はい、バカなんですよ」


 クラリスは私を(ののし)るけど、その顔は真っ赤で、そして何処となく嬉しそうだった。

 可愛いなぁ……。


「もう、今度は私からするわよっ!」


 おや、負けず嫌いのクラリスが反撃しようとしている。

 でもいいの?

 これじゃあ、私へのご褒美になっちゃうよ?


「んっ……」


 クラリスが唇を重ねてきた。

 さっきは余裕がなくて気付かなかったけど、唇の感触が凄く柔らかい。

 それに密着しているから、彼女のいい匂いが伝わってくる。


 あと、心臓の音が凄い。

 まるでドキドキが頭の中に、鳴り響いているみたいだ。


 あ~、頭が沸騰(フットー)しそうだよぉっっ……!

 このままじゃ、クラリスにやられっぱなしになってしまうので、反撃しよう。

 えい、舌を入れちゃえ。


「むぐぅぅっ!?」


 クラリスが驚いて唇を離す。

 その際に、ちょっと糸を引いていたのがエロい。


「またいきなり変なことをっ……!!

 あなた、本当にバカなのっ!?」


「姫様が可愛すぎて、我慢できませんでした」


「もーっ!!

 私にもさせなさいよっ!!」


 再びクラリスの反撃。

 私は甘んじてそれを受けよう。

 こんな気持ちのいいことを、拒否できるものか。


 ああ……私今、イチャラブしている。

 ふふ……こんなに百合百合できて幸せだなぁ……。

 私はこの日の為に、転生して来たのだと断言できる。


 よし、ここに記念の塔(キマシタワー)建立(こんりゅう)しようか。




 ……まあ、私は幸せすぎて天国に登るような気持ちだったけど、後でちょっと地獄に落ちてもらわなければならない者もいるけどね……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] クラリスさんよりアリゼさんの方がヘタレでしたw クラリスさんはどストレートですw 確かに、アリゼさん初めて正々堂々正真正銘にガチの百合百合イチャラブを体験出来ましたね!めでたしめでたし〜 …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ