14 リベンジ
ブックマーク、ありがとうございました。
洞窟よ、私は帰ってきた!
どうも、おサルさんです。
コウモリになって空が飛べるようになったので、上空から獲物を探していたら、木の上にいた。
そいつを毒でサクッと狩って、乗っ取りましたよ。
いや、空が飛べる能力を手放すのは、ちょっと惜しかったんだけどねぇ……。
元人間としては、身体1つで空を飛べるというのは夢のようだった。
初めて青空の下で飛んだ時の感動は、言葉では言い表せないと思う。
でもコウモリの身体では、厳しい自然界を生き抜く為には、少々心許ない。
あと、結構疲れるので、段々飛ぶことにも飽きてくる。
そしてコウモリのままでは、どうやってもスライムには勝てないというのが、1番の問題だ。
最強を目指すのなら──いや、目指さなくても、外敵に脅えずに暮らせるようになる強さを得る為にも、スライムの打倒は必須だ。
その為には、サルの身体は打って付けなのだ。
ええ、ようやく念願の、人間に近い形態の身体を手に入れましたよ。
この身体のメリットは、なんと言っても道具を使えること。
あの直接触れると、カウンターダメージを受けるスライムの身体を攻略するには、道具を使うのが1番手っ取り早い。
取りあえず適当な木の棒を拾って、棍棒を作った。
これで殴ったところで、スライムにどれだけ効くのかは分からないが、これが攻略の本命ではない。
詳細は割愛するが、結構準備に時間をかけたので、なんとかなるはずだ。
そんな訳で、再び洞窟に来ましたよ。
そしてその奥で、スライム発見!
ふっふっ、今度は覚悟してもらうよ、スライム君。
まず、この蕗のような大きい葉っぱで作った包みを用意します。
これをスライムに投げ入れます。
下ごしらえはこれで終了。
ね、簡単でしょう?
スライムはその包みが餌か外敵だと勘違いして、体内に取り込み始めた。
そして当然、包みの材料である葉っぱは消化されて、中身が漏れ出してくる。
そこで私は棒を突き入れて、その包みの中身とスライムを攪拌した。
包みの中身は大量の砂だ。
その砂を身体の中に混ぜ込まれたスライムの動きは、狙い通り鈍くなった。
単純に身体が重くなったというのもあるのだろうけれど、身体に大量の不純物が混ざった所為で、末端を動かす為の神経伝達のような機能が寸断されているのだと思う。
この砂はすぐに溶かしたり、体外へ排出したりすることはできないだろうから、ここからは全部私のターン!
それに不純物が混ざったスライムの身体は、結合力が弱まっているはずだから、簡単にバラバラにできるだろう。
そんな訳で私は、棍棒でスライムを殴りまくる。
なるべく本体の端の方から、抉って切り離すように……!
その攻撃の繰り返しの結果、スライムの身体はどんどん小さくなってゆく。
これはなかなか地味な作業だ。
大量の塩があったら、ナメクジのように浸透圧で水分を抜くことができるだろうから、もっと楽なんだろうけどなぁ……。
まあ、その前に海や塩湖を見つけなきゃ、塩は作れないが。
いや、岩塩ならこの辺にもあるのか?
どのみち加工の手間は必要だ。
他にも石灰石が手に入れば、生石灰に加工して使うという手段も有り得た。
生石灰は水分に触れると熱を発するので、スライムを内部から焼き殺すこともできたかもしれない。
ただ、加工する為には加熱する必要があり、先に火をおこす道具を作らなければならないし、更に石灰を加熱加工する際に使う竈とかも作る必要がある。
下手をすれば、準備だけで数ヶ月以上かかるだろう。
なのでこの案は不採用だが、前世の知識と道具を使える身体があれば、魔法とかに頼らなくてもモンスターを倒すことは不可能ではないのだ。
しかし1から道具を作るのは、とにかく時間と手間がかかるので、この大自然の中でサバイバルと並行して行うのは、ちょっと難しいだろうな。
だからこそ私は、もっと生物的に強くならなければならない。
そんな訳で、現状では単純な道具しか使えないから、スライム1匹倒すのにも結構な労力が必要になる。
それでも10分くらいスライムを殴っていたら、乗っ取りが発動した。
計画通り!(悪い顔……は無いが)
幸い本体から切り離された部分が新たな個体として独立することも無かったし、無駄に敵を増やすだけの結末にならなくて良かった。
たぶん分裂には、個体を形成する核のような部位が必要なのだろう。
しかし乗っ取ったスライムの体内には、まだ大量の砂が残っているなぁ……。
まずは前の身体であるサルを吸収しつつ、砂を体外に排出しなければ……。
だが、砂の排出はなかなか難しいぞ。
体内の状態を詳細に把握して、なおかつ体組織の流れを繊細に行わなければ、意識的に砂を排除することはできない。
砂の成分によっては、消化液で溶かせる場合もあるのだろうけれど、どのみち時間はかかるだろうな。
だけど、これも悪いことばかりではない。
3日ほど悪戦苦闘した結果、身体操作の能力が格段に上昇した。
まるで体中の細胞の全てを、コントロールできるかのような感覚だ。
だから私は、その身体操作能力を利用して、アメーバ状の身体の組織を中心に向けて集中させる。
これによってなんと、丸いグミのような姿を再現することに成功した。
まさに日本国民から愛されていた、あのスライムの形に近づいたのだ。
しかも体組織が凝縮されているから、たぶん防御力も上がっているぞ。
そして身体の任意の場所を収縮させて、ポヨポヨと跳ねて移動することも出来るようになった。
これで移動速度も格段に上昇した。
これならば、洞窟の探索も捗るはずだ。
おそらくスライムがこの1匹だけということは無いだろうから、他のスライムも狩って、強化の足しにしよう。
ひゃっはー!
スライム狩りじゃーっ!!