13 異世界名物
ブックマークありがとうございました。
どうもオオカミです。
異世界転生した主人公の従魔として、お馴染みのオオカミですよ。
毒を駆使して倒し、ヘビの身体から乗り換えました。
ちなみに、オオカミになっても毒の能力は引き継いでいるようだ。
まだよく分からないけど、乗っ取りの時にランダムで引き継げないスキルや魔法がある……ということは、今のところ無いみたい。
折角習得したのに、使えなくなるのはやる気が削ぐしなぁ。
というか、むしろそういうデメリットがあると、生き残る確率がかなり下がる場合もあるから、迂闊に乗っ取りができなくなる。
そういう意味では、乗っ取りはデメリットを気にせずに、繰り返して使うことが推奨されている能力なんだろうな。
なお、オオカミの記憶から使えるスキルを検索してみると、どうやら遠吠えに魔力を乗せて、それを聞いた弱い生き物を金縛り状態にすることができるようだ。
これもなかなか便利そうだな。
あと、オオカミの身体に乗り換えた後に、「ヘビが持っていたスキルってなんだっけ?」と思い立ち、色々と試してみたら、赤外線を感知する能力が使えた。
ふむ……地球でならオオカミには赤外線を感知するピット器官が無いから、使えないはずの能力だけど、こちらでは魔力を利用して使用している能力なので、種族に関係なく再現できるということなのかな?
わざわざその能力専用の器官を必要としないという意味では、異世界らしい合理的な進化だと言えるな。
ということは、過去のキツネやネズミが持っていたスキルも使えるのかな?
まあ、それらしい能力を使った記憶が無いので、「狩りの基本」や「気配を消す」など、今まで無自覚に使用していたのが、種族固有のスキルだった可能性もあるが。
その辺の検証は、暇がある時でもいいや。
とにかくオオカミの身体を手に入れたことで、行動範囲がかなり広がった。
それに元のキツネの身体に近いから、違和感なく身体を使うことができる。
できれば長くオオカミの身体を維持したいけれど、この辺にはあまりオオカミがいないっぽいので、同族を狩るのも難しそうだな……。
どうやらこのオオカミも、ヘビと同様に別の土地から流れてきたらしい。
普通は群れで暮らすオオカミが、単独でうろついているからおかしいと思ったよ。
やっぱり件の外敵によって、故郷を追い出されたようだ。
いずれにしても、折角強い身体を手に入れたのだから、次も同等の強さの身体を手に入れたい。
何処かにいいのが、いないかなぁ……。
オオカミの鋭い嗅覚で探してみようか。
うん……?
なんだか湿っぽいというか、カビっぽい臭いがするなあ……?
ちょっと行ってみるか。
お、洞窟発見。
コウモリとかいないかな?
超音波は、結構使える能力だと思うんですけど。
そんな訳で、洞窟の探索を開始する。
オオカミの臭覚ではあまり変な臭いは感じないから、有毒ガスの中毒になる危険性は少ないだろう。
いや、無臭の気体だとどうしようもないが、それは溜まっていないと思いたい。
で、洞窟の中は真っ暗だけど、オオカミは勿論、キツネやネズミなんかも夜間に活動するし、その為の暗視能力も引き継いで使えるようなので問題無し。
更にヘビの赤外線感知も併用すれば、何かに擬態しているような生き物だって見逃すことは無いはずだ。
とはいえ、落盤や転落の危険性もあるので、慎重に進む。
ただ洞窟内は意外と広くて見晴らしがよかったので、さほど危険は感じなかった。
そして暫く進むと、コウモリの姿を見かけたが、取りあえず乗っ取りは保留する。
他にも何か面白い生き物がいるかもしれないしね。
で、更に奥へと進むと、ついにそいつが現れた。
大きさは30cmくらいの不定形の生物──。
リ●ル様キタ──っ!!
スライムですよ、スライム!
異世界に来て、ようやくモンスターらしいモンスターに出会ったよ。
ただスライムとはいっても、最弱として有名な水色の中華まんみたいな奴じゃない。
アメーバ型のタイプで、こっちだと物理無効や、強力な毒や酸を持っている場合もある。
このオオカミの身体で勝てるのか?
でも、スライムの能力は便利そうだし、なんとか欲しいなぁ。
そしてその能力で、女の子の服だけ溶かすんだ……。
よし、触ると麻痺する可能性もあるから、取りあえずその辺の石でもぶつけてみよう。
私は石を咥えて投げつけようとするが、このオオカミの身体だと難しいな……。
なかなか上手く投げられず、何回も失敗した。
そしてヘロヘロの投球がようやくスライムに当たったけど、石が当たった部分はちょっと形が崩れただけで、すぐにその形跡も流動する身体の中に飲み込まれてしまう。
あ~、こりゃダメージは無いだろうな。
しかし、スライムの反応は劇的だった。
私を敵だと認識したのか、身体を触手のように伸ばして襲いかかってくる。
ひいぃぃぃ!?
また特殊なエロ同人誌みたいなプレイは勘弁っ!!
私は慌てて逃げようとするが──、
「ギャンっ(熱ぅっ)!?」
スライムが後ろ足から臀部へと絡みつく。
するとそこには、火傷のような痛みが走った。
消化液か!?
私は身体からスライムを引き剥がそうとするが、器用に使える手が無いので無理。
そもそもスライムに触ること自体がダメージになるし、噛みついたりするのも大きなリスクだ。
これは道具を使わないと、対処が難しい。
となると、もうこの身体を捨てた方が早いな。
私は全速力で来た道を逆走し、コウモリのいる場所を目指す。
しかし──、
あ~、ヤバイ。
動きが鈍ってきた……っ。
これ、麻痺毒を注入されているぅぅぅ!?
でも、なんとかコウモリがいる場所まで辿り着いたので、遠吠えのスキルで金縛り状態にし、バタバタと落下してきたコウモリを倒してその身体を奪った。
あとは、即スライムから離れる。
わぁーお、オオカミの身体がどんどんスライムに飲み込まれ、そして溶かされていく。
ギリギリだったなぁ……。
あかん、これは現状じゃあ倒せないわ。
一応こっちも毒を分泌していたのだが、スライムには効かなかったようだし、耐性持ちか……。
これは遠距離攻撃か、武器が使えるようにならないと、攻略不可だ……。
取りあえず、周囲には他にも落下した複数のコウモリがいるから、身体を乗っ取ってステータスの底上げをしよう。
そして次は、洞窟の外で狩りだ。
スライムを倒せるくらいの力を、手に入れるぞー!
私は、力を求めて飛び立つ。
とんだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
当たり前だけど、生まれて初めて空を飛んだわ。