36 ダンジョン温泉
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とりあえず、倒した魔物の解体実習は終了した。
クラリスが解体したカピバラは1体だけだが、さすがに残り全部をやれと言うほど私も鬼ではない。
残りは学院で子供達の実習に使うか、食肉業者にでも売ろう。
ともかくカピバラを空間収納にしまう。
「姫様が解体した肉は、後ほどご馳走しますね」
「鬼畜だわ……」
なにやらそんな風に評されたが、こういうのは食べるまでがワンセットだからね。
こうして生命の重みを学んでいくのです。
「さて、それではまず……姫様を綺麗にしましょう」
私はクラリスに浄化の魔法をかける。
動物や血液などに触ったのだから、病原菌が身体に付着している可能性もあるし、この処置は必須である。
しかも返り血などによる服の汚れだって消える。
「姫様もこの魔法を覚えた方が、いいかもしれませんね」
「そ、そうね……。
今なら、最優先で習得したい気分よ。
でも……まだ臭いが身体に染みついているような気がするわ……」
「まあ気の所為でしょうけど、それならこれから温泉に行って、身体を洗いましょうか?」
「温泉?」
「実はこのダンジョンの深い場所に、お湯が湧き出ている場所があるのですよ。
そうですね……今日は姫様も頑張りましたから、フルコースで洗って差し上げましょうか」
「え……何されるの、私……?」
通常の城での業務では、クラリスの入浴の際に髪や身体を洗い、そして風呂上がりには身体を拭くなどの補助を行っている。
私の感覚からすれば、「全部自分でやれ」とは思うのだが、それが貴族や王族の慣習なのだから仕方がない。
いずれにしてもその通常業務で、毛繕いスキルを用いてまで洗うことはない。
ぶっちゃけそれを使うと、料金を取ってもいいくらいのサービス過多になってしまうのでね。
実際学院の子供の中には、お金を払ってもいいからして欲しいという者もいる。
でも、異性を意識し始めた年頃の男子には、絶対にしてあげません!
性的なことはしていないはずなのだが、なんとなく風俗っぽくなるので。
で、目指すのは最下層だ。
「え……なにここ?」
クラリスは転移魔法で連れてこられたこの場所を見て、今までのダンジョンの内部と様子が違うことに困惑していた。
「元は魔族の居住区だった場所ですよ」
だから魔族が利用していた温泉がある。
本来なら管理者がいなくなった温泉など、すぐに使えなくなってしまってもおかしくないのだが、ダンジョンの機能によって劣化することはなく、状態は維持されているようだ。
まあ、カビなどはどうしても発生するので、たまに私が来て浄化魔法で掃除はしているけどね。
勿論それは、気が向いた時にレイチェルと一緒に訪れて、温泉を楽しむ為だ。
だがクラリスとしては、驚愕の事実だろう。
「ええっ!?
魔族って……本当にもういないのよね?」
「まあ帰ってきたとしても、私が秒殺しますから、問題無いですよ。
ともかく、温泉を楽しみましょう。
脱衣はこちらで行います」
私とクラリスは脱衣場に入り、服を脱ぎ始める。
「……あなたも入るのね」
「折角の温泉ですから」
通常は身分の差もあるので、あくまで入浴の補助だけで、私とクラリスが一緒に入浴することはない。
いつもは濡れてもいい服を着たまま浴室に入っているので、クラリスと裸の付き合いは初めてということになる。
……ん?
クラリスから視線を感じるな?
「何か?」
「……どうやったら、そんなに胸が大きくなるのかしら……?」
クラリスが気まずそうに聞いてきた。
あ~、クラリスも胸が小さいことがコンプレックスなのか。
私もレイチェルだった頃は、そうだったから分かる。
そしてオリジナルレイチェルと従姉妹であるクラリスは同い年くらいだが、どちらも胸は平らな方だ。
……これは遺伝じゃないかなぁ……。
思えばオリジナルレイチェルの母親も、そんなに胸は大きくなかったような……。
その妹のクラリスの母親も、この前チラ見した限りでは、豊満ではなかった。
一方アリゼの身体は、クラリスと同い年くらいの頃から、既にある程度大きかった。
あれだけ食糧事情が厳しかったにも関わらず、育つ時は育つのだ。
だから私にも、どうすれば大きくなるのかなんて、全く分からない。
「……揉めば大きくなると言う説もありますが、ちょっと分かりませんね……」
「揉めば……」
クラリスが真剣な顔をして、自分の胸を見つめていた。
さすがに「揉んであげましょうか?」と言うほど、私もリチアではないので、見ないふりをしておく。
そんなやりとりの後、私達は温泉に浸かった。
勿論作法として、軽くかけ湯は済ませてからだ。
「これは……気持ちいいわね」
「ですね。
温泉にはある種の病気を癒やす効果や、肌を綺麗にする効果もあるそうですよ」
まあ、ここの泉質はよく知らないが。
それでもやはり温泉は、普通のお風呂よりも身体が温まるような気がする。
そしてほどよく身体が温まったら──、
「姫様、ここに座ってください。
まずは頭を洗いますよ」
元々は魔族が使っていたであろう椅子に、クラリスを座らせた。
「今日は特別に、本気で洗いますからね」
「えっ!?
本気でって、どういうこと!?」
動揺するクラリスに構わず、私は洗髪を開始した。
次回、微エロ展開。