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34 魔法少女クラリス

 ブックマーク・☆での評価をありがとうございました!

 アリゼです。

 侍女ですが、何か? 

 今日も今日とて、王女様のお世話をしているよ。


 ダンジョンまで遠征して行ったクラリスの魔法修行は、1日1時間程度でもいいから毎日行うようになった。

 その結果がこれだよ!


「み……水が出たわ!」


 クラリスは3日ほどで、魔法の発動に成功した。

 普通ならもっと時間がかかるのだろうけれど、私が彼女の身体に直接魔力を流して、その動きを体感させたおかげで、コツを掴むのが比較的簡単だったのだろう。


 なお、最初に使わせたのは、水属性の魔法だ。

 他の属性だと、暴発させた時に怪我(けが)をする可能性が高いからだ。


「素晴らしいです、姫様。

 やはり魔法への適性が高いですね。

 才能がありますよ」


「ふふーん、でしょー?

 私はやればできる子なんだから!」


 自分で言うなよ。

 クラリスは魔法を成功させた達成感で、得意満面になっている。

 これで魔法を学ぶことに楽しさを見いだしてくれるのならば、それは良いモチベーションになるだろう。

 当面は褒めて伸ばす方が良さそうだ。

 ブタもおだてれば木に登る──って言うしね。


 それに才能があるというのも、おそらく事実だ。

 元々王家の祖先なんて大昔の英雄か何かなのだろうから、その遺伝子を受け継いでいるのならば、潜在能力は高くて当然だともいえる。

 更に無能が王になる訳にはいかないから、代々それなりに能力を鍛えていたはずだしね。


 まあ今は褒めて伸ばすにしても、次の段階に入ったら少し厳しくいくつもりだよ。




 1月ほどが経過したころ、クラリスの魔法攻撃は10数メートルほど離れた目標にも、見事命中するようになった。

 ふむ……これなら……。


「今日は姫様1人で、魔物を倒してもらいます」


「えっ?」


 さすがにクラリスは、「寝耳に水」というような顔をしている。

 まあ普通に考えれば、魔法を習い始めてから1ヶ月で実戦というのは有り得ない。

 ただ彼女の魔法技術の伸びは悪くないし、私がサポートすれば危険はないだろう。


「えっ、無理じゃないかしら!?」


「大丈夫ですよ。

 姫様は遠くの魔物を、狙えばいいだけです。

 魔物が近くまで来たら私が対処しますので、危険はありません」


「そ……そういうことなら……」


 そんな訳で今日は、ダンジョンの5階層で魔法実習を行う。

 さすがに初心者であるクラリスの魔法では、この前までいた50階層の魔物は倒せないだろうからね。


 で、転移してから暫く待つと、魔物の反応があった。


「姫様、魔物が来ますよ。

 分かりますか?」


「う……う~ん?

 なんとなく?」


 クラリスには一応索敵も教えているけど、その精度はまだまだのようだ。


「準備はいいですか?

 来ますよ!」


「う、うんっ!」


 直後、通路の奥から7体の魔物が姿を現した。

 クラリス1人で殲滅するには、ちょっと数は多いけど、強さはそれほどでもない。

 しかし──、


「えっ、ちょっ!?

 可愛いんですけど!?」


 こちらに向かって突進してくるのは、齧歯類のカピバラに似た魔物だった。

 確かに外見は可愛いのでクラリスの動揺も分かるが、明らかに人間に対して害意を持っている魔物である。


「関係ありません。

 行ってください」


「で、でも、なんか可哀想!?」


「それでは、いざという時に生き延びることができませんよ!

 どうしたのです!

 それでもこの国で最も高貴な一族の末裔ですか!?

 いいからなぎ払いなさい!!」


「くっ!」


 直後、クラリスから放たれた炎の魔法が、カピバラの群れを飲み込む。


「これで、どう!?」


「まだです!!」


 炎の中から、5体のカピバラが飛び出した。

 一撃で即死させるには、まだまだクラリスの魔法では威力が足りなかったということだ。


「敵が倒れるまで、攻撃を撃ち続けてください!」


「えっ、ええ~っ!?」


 しかし動転しているクラリスは、魔法の構築が遅れている。

 仕方がないにゃぁ……。


「ほっ!」


 突撃してきたカピバラは、私が形成した「結界」によって弾き飛ばされた。

 衝突の衝撃で死なれて「乗っ取り」が発動されても困るので、ゴムのように柔軟性のある膜状の結界である。


「今ですよ、姫様!」


「わ、分かってるわよ!」


 クラリスはカピバラに向けて、風の刃を撃ち放つ。

 先程の炎の魔法では広範囲に広がって、自分自身にも被害が及ぶと考えたのかもしれない。


 それに風の刃の魔法は、複数の敵を同時に倒すことには向いていないが、連射性能が高いので手数を増やすことによって複数の敵にも対応できる。

 更に先程よりもカピバラが接近しているので、標的として狙いやすかったというのもあるのだろう。


 結果、カピバラは、程なくして全滅した。

 

「ふむ、悪くない判断ですね。

 全弾命中で、コントロールも悪くないですよ」


「そ、そう?

 まあ、当然よね」


 多少動揺はあったが、初めての実戦としては問題ないだろう。

 もっと落ち着いて対処ができていれば、私が「結界」を形成する必要すらなかったかもしれない。


 ふむ……ダンジョンの浅い階層とは言え、ソロのバトルができるのなら、DかCランクの冒険者相当の実力があると考えてもいいだろうな。

 これは魔法初心者とは思えないほどの、素晴らしい成長ぶりだ。


 思えばキエルとマルガもある程度基礎ができていたとはいえ、2ヵ月程度でAランク以上の実力まで鍛えた実績が私にはあるので、クラリスだってあと1ヵ月もあれば、一人前に仕立て上げることができるかもしれない。


 その実力が何処まで伸びるのか、今から楽しみだ。

 次回は明後日の更新予定です。

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