21 監禁王女様
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ちょっと短めです。その代わり、後書きでオマケあり。
私が連れてこられたのは、古びた小さな家だった。
こんなところが、犯罪組織の拠点だというの……?
しかし中に入って地下に下りると、結構広いことが分かる。
なるほど……秘密の基地という訳ね?
そこにはいくつもの牢屋があって、中には小さな子供や女の人が何人も閉じ込められていたわ。
これが全員攫われた人なの……?
この国の治安は、終わっているわね!
そして──、
「ここで大人しくしていろ。
お友達も一緒だから、寂しくないだろ?」
「あなた……!」
私が入れられた牢屋の床には、トカゲがうつ伏せで倒れていた。
殴られたのか、顔が少し腫れているみたいだ。
「ね、ねえ、大丈夫なの……!?」
「ん……?
ああ……お前も来ちゃったのか……。
折角その頭を隠す為の帽子を見つけたのに、無駄になっちゃったな……」
と、ボロボロの帽子を差し出してきた。
「……!」
このトカゲ……私の為に歩き回って、捕まったっていうの……?
「馬鹿な子ね……!
なんで会ったばかりの私の為に、そこまでするのよ……!?」
私の問いに、トカゲは不思議そうな顔をした──ような気がする。
トカゲの表情はよく分からない。
「そんなの当たり前だろ?
孤児は助け合わなきゃ、生きていけないんだ」
「……!!」
「いや……助け合っていたって、今までも沢山仲間がいなくなった……。
でも何もしなかったら、また仲間が消えるだけだ。
だからあたしは、やれることはやる」
「そう……凄いわね、あなた……」
「そうでもないだろ」
いいえ、凄いわ……。
私にはやれることがあったはずなのに、なにもしてこなかったもの……。
私が何もしなかったから、みんな……こんな目に遭って……!!
「うう……。
ご、ごめんなさい……」
「なんでお前が謝るんだよ……。
というか、泣くなよ……。
どうしたらいいのか、分からなくなる……」
トカゲはそんなことを言ったけど、私の目からは涙が溢れて止まらなかった。
私は手渡された帽子を抱きしめたまま、泣き続けた。
それから私達は、牢屋の中で1日ほど過ごした。
牢屋の中の居心地は最悪だったわ。
ベッドや椅子は無いから、床に直接座ったり寝たりしなければならないのよ……。
石造りで冷たいから、これなら路地の地面の方がマシかもしれないわね。
まあ、風が吹き込んでこないのはいいんだけどさぁ……。
しかもトイレが水瓶なのよね……。
臭いし汚いし、周囲を覆うものが何も無いから、トカゲや向かいの牢屋から用を足しているところが見えるのよ。
音や臭いも伝わるわ……。
これなら屋外でする方が開放感があって、いいかもしれないわ……。
い、いえ、こんなことに慣れちゃ駄目ね……!!
でも、現状ではこれを受け入れるしかない。
もう王女としての尊厳が、削り取られていくのを感じる……。
そして今までの生活がどれだけ恵まれていたのか、嫌というほど実感できたわ……。
あと、食事は出してもらえないようね……。
なんでかしら……?
このままじゃ私、空腹で死ぬんですけど?
食事が出てこない理由を、トカゲが教えてくれた。
「逃げたり抵抗したりする為に必要な、体力を奪う為だろうなぁ……」
「そう……。
本当に酷いことをするわね……。
それで……これから私達はどうなるのかしら?」
「そりゃあ……」
トカゲが答えようとした時、近づいてくる足音に気付いた。
手枷を持った男達だ。
「さあ、楽しいオークションの時間だ」
「売られるのさ……」
それは改めてトカゲに言われなくても、分かりきっていた。
そして、全然楽しくもなんともないだけど!?
ともかく私達は手枷をはめられて、オークション会場へと運ばれることとなる。
そこで私の今後の人生は、否が応にも決定してしまうのだ……。
……まあ、それは想像の斜め上と言えばいいのかしら?
予想外の決定の仕方だったけれどね……。
今更な裏設定―キエルは「主人公の前から『消える』」という意味で名付けられていますが、意外と強固な絆が形成されたので、消えませんでした。初期案では、主人公とは2度と会えない展開も有り得たんですよね。
そしてレイもハゴータに不意打ちされて致命傷を負い、やむを得ずハゴータを乗っ取る……という初期案も。まあ、書き進めていく内に、「ハゴータじゃ、絶対に不意打ちできない」ってなったが、もしもその展開になっていたら、キエルは「レイの仇」と勘違いして、ハゴータを乗っ取った主人公のことを憎み続けることになっていたかもしれません。