17 ホームレス王女
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なお、これから暫くの間は、クラリス視点で話が進みます。
私の名はクラリス──クラリス・ドーラ・ローラント。
このローラント王国の次期女王の座を約束されている私は、一生遊んで暮らせる身分だと言えるわね。
実際、お父様もお母様も、遊び呆けていているし、私が同じことをしたっていいわよね?
でも、侍女の中には、義務だなんだと言って、私に勉強とかを押しつけてくる者もいる。
そんな身の程知らずには、無視をしたり嫌がらせをしたりして、追い出してやったわ!
しかしアリゼとかいう新人は手強かった。
私が何をやっても、全く通用しない感じなのよね。
どんなに拒否しても、負けじと私に勉強をさせようとしてくるの。
いい加減うんざりして、身を隠してもすぐに見つかるし、今までの侍女とは何か違うような気がする……。
まるで私よりも上位の存在であるかのような……。
そんなはずないのに、何故かそう錯覚させるものがあるのよ……。
だから私は、必死で抵抗したわ。
時には物を投げつけたこともあるけれど、平然と魔法で受け止めるし、何もかも無駄に終わった……。
私にできたのは、頑なに勉強を拒否したのと、嫌いな食べ物を全部残したことくらいね。
今日なんて、昼食も夕食も私の嫌いな物ばかり出してきたから、殆ど食べてやらなかったわ!
……って、私のお腹が減っただけじゃない!
なんて嫌がらせなのかしら……。
そしてその後、アリゼが「社会科見学に行く」と言い出した時は、本気で意味が分からなかったわ。
しかもいきなり貧民街に転移魔法で連れてこられて、そのまま置き去りにされるし……。
なんなのあいつ!?
なんで私がこんなところへ、置き去りにされなきゃならないのよ!?
ここは汚いし臭いし、早く城に帰りたいんですけど!?
でも城がどっちにあるのかさえ、分からないわ……。
うう……正直泣き叫びたいけれど、強者である私はそんなことしないわよ?
弱い犬ほどよく吠えるって言うしねっ!
それにしても、ベッドの上に寝転がっていた時に連れ出された所為で裸足だから、地面が冷たいわね……。
取りあえず、靴を履くわ!
で、私が靴を履いていたら──、
「ひっ!?」
その時、何か「ガサッ」っていう音がしたの。
その音がした方を見てみたら、ゴミの塊……いやテント?……みたいな物の中から、誰かがこちらを見ていることに気付いたの。
な、なんなのよ、無遠慮にこっちを見てっ!
あれ? そういえばアリゼったら、この服が奪われるって言っていたわね?
貧乏人って、こんなものが欲しいの?
それに「命ごと」って言っていたけど……えっ、こんなもので殺されちゃうの、私!?
ま、まさかそんなことは無いとは思うけど、すぐにこの場所から立ち去った方が良さそうね。
そして私は物陰を見つけて、そこでアリゼから渡された服に着替えた。
なによこの、古ぼけた服!?
しかもミニスカートじゃないの!
でも、前の服のままじゃ目立つみたいだから、仕方がないわね……。
だけどもうすぐ秋だから、このスカートの丈じゃ、夜はさすがにちょっと寒いんだけど……。
これは早く城に帰らないと……。
でも何処へ行けばいいの?
まあ、ここは王都らしいから、歩いていればいつか辿り着くわよねっ!
……全然城が見当たらないんですけどぉ!?
もう2時間くらいは歩いたのに。
もう2時間も歩いたのにっ!!
……疲れて、もうこれ以上歩けないわ。
今夜はここで、一夜を過ごさなきゃいけないのかしら?
だけどこんなゴミゴミした汚いところで、眠るのなんて無理よね?
座るのだって嫌だわ。
でもここにくるまでの道端で、寝ている人が沢山いたわね……。
貧乏人って、帰る家どころか、眠る場所すら無いって言うの……?
むう……私もこの際、贅沢は言ってられないのかしら……?
私は比較的綺麗な場所を見つけて、そこに腰を下ろすことにしたわ。
……っ!? 冷たっ!?
うう……こんなところに座っていたら、お尻が冷えちゃうわね……。
それに……、
「お腹……空いたな……」
こんなことなら、昼食と夕食をちゃんと食べておけばよかった……。
まさかアリゼの奴、この為に私の嫌いな料理ばかり用意したんじゃないでしょうね……!?
だとしたら、絶対に許さないんだからっ!!
「ん……」
気がつくと、朝になっていた。
いつの間にか眠っていたのね……。
地面の上で寝ていた所為で体中が痛いし、全身が冷えている……。
なんで私がこんな目に……。
でも朝になったんだから、広いところに出れば、城だって見えるはずよね?
その予想通り、城が見えるところはすぐに見つかった。
……というか、意外と近い場所に城があって驚いた。
え……? 城のこんな近くに、こんな酷い場所があったの……?
私……全然知らなかった……。
なんだかモヤモヤするけれど、今はまず城に帰ることが最優先ね!
私は久しぶりに全力で走って、城に向かったわ。
走るのとかだるくて嫌いだけど、今は1秒でも早く帰りたい。
そしてようやく正門に辿り着いて、城に入ろうとしたら──、
「待てっ!
民間人は、立ち入り禁止だ!」
と、門番に止められた。
なんでよっ!?