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14 クラリス王女

 ブックマーク・☆での評価・感想をありがとうございました!

 それにしても王位継承権1位のクラリス王女が我が儘し放題って、危機感を持つ者はいないのかしらね?

 普通ならば多少強引な手を使ってでも、彼女を厳しく(しつけ)けるように国全体で動くはずだが。

 このままじゃ、国が滅びかねないよ?


 ふむ……誰かがクラリスを、真っ当な後継者に育成することを邪魔しているのだろうか? 

 つまり私と同様に、傀儡(かいらい)にしようと思っている者がいる……?

 で、誰か都合の良い者と婚姻を結ばせ、その者に実権を握らせるとか……。

 あるいは今の国王そのものが、既に傀儡なのか……?

 

 まあ、その辺は追々調べていくとして、まずはクラリスを私の支配下に置かないとね……。

 さて、どんな()なのかな……?


「失礼します」

 

 やがてクラリスの居室に辿り着くと、そこは城の外観に負けず劣らずの高価な調度品が並ぶ広い部屋で、税金の無駄を感じさせた。

 というか、頻繁に侍女が出入りするとはいえ、こんな広い部屋に子供1人って寂しくない?

 確かまだ13才だったよね?


「姫様、今日からここで働く新しい侍女を、連れて参りました」


「そう」


 短くそう答えたのは、ソファーに座ったままこちらを見ようともしない少女だった。

 なにやらお茶を飲んでいるらしく、そちらの方が重要だとでも言わんばかりに、こちらの方へは関心を向けようともしなかった。

 私の位置からは顔がよく見えないので、その顔立ちはよく分からないが、綺麗な金髪だということだけは分かる。


「アリゼ・キンガリーでございます。

 以後、お見知りおきくださいませ、姫様」

 

 私が挨拶すると、クラリスは──、


「必要無いわね。

 どうせ、あなたもすぐいなくなるんでしょ?」


 と、ようやく私の方を見たクラリスの顔は、レイチェルにそっくりだった。

 

「…………は?」


 私は思わず呆然とした。


 勿論、似ているとは言っても、今や私の娘となったレイチェルにではない。

 まあ、似ていると言えば似ているのだが、どちらかというと生前の──私が乗っ取っていた頃のオリジナル・レイチェルだ。

 年齢もほぼ同じだから、まだ幼児の娘よりも似ている。


 え……なに?

 これどういうこと……?


 そんな動揺する私のことを不審に思ったのか、クラリスは眉を(ひそ)めた。


「……なんなの、この間抜け(づら)

 大丈夫なのかしら、こんな馬鹿そうなので?」


 ぐふっ!?

 レイチェルに似た顔で(ののし)られると、キツイ……!

 私の娘は、将来こんな反抗的には育たないよね……!?

 ママ、信じているよ……?


「し、失礼しました。

 姫様のあまりの美貌に見とれておりました……」


「……本当に大丈夫なのかしら?」


 クラリスが胡乱(うろん)な視線を向けてくる。

 これは出だしで失敗したな……。

 クラリスにとって私に対する第一印象は、最悪とまでは言わないが、良くもないだろう……。


「まあいいわ。

 今は用も無いから、下がりなさい。

 なんなら、そのまま二度と顔を出さなくてもいいのよ?」


「……ご用の時は、いつでもお呼びくださいませ」


「ふんっ!」


 クラリスの明確な拒絶の言葉に、私はまるで(こた)えていないかのように対応した。

 とはいえ、用も無いというのならば、いつまでもここに(とど)まる理由も無い。


 そして私は、先輩と一緒に退室し、近くにある侍女達の詰め所へと向かう。

 姫様からの呼び出しがある時は、(かね)を鳴らして呼び出されるようで、それまでは他の用事が無い限りここで待機だ。


 しかしこれは一体、どういうことなんだ……。

 まるでレイチェルとクラリスに、血の繋がりがあるとしか思えないほど似ているんだけど……。


 ……あ!

 そういえばこの前、テュロサムが「王妃の姉が出奔して行方不明」だって言ってなかったか……?

 ええぇ……それってもしかして、オリジナル・レイチェルの母親だったのでは……?


「先輩、先輩、行方不明になったという、王妃様のお姉様についてご存じですか?」


「ちょっ!? あまりそういうことは城内で話さないでよ!

 下手に王族の問題に関わったら、何が理由で罰せられるようなことになるのか分からないんだからっ!」


「スミマセン。

 で、お名前などは、ご存じないのですか?」


 食い下がる私に、先輩は呆れた顔をした。


「あんたねぇ……。

 確かセリス様だと思ったけれど……。

 もう15年以上前に、何処かの下級貴族の8男坊と駆け落ちした……と、聞いたことがあるわね……。

 その時は国中が大騒ぎになったから、有名よ?」


 ああ……やっぱりオリジナル・レイチェルの母親と同じ名前だ。

 つまりレイチェルとクラリスは、従姉妹(イトコ)だという訳か……!


 それにしても駆け落ちって……。

 あの後の父親の行動を考えると、本当にろくでもない男に引っかかってしまったんだなぁ……。

 公爵家の娘で、国王の義姉にもなれたほどの地位にいた人が、最期は娼館で病死だなんて……。

 またあの父親に対する怒りが湧いてきたわ……!


 ともかくクラリスは、ある意味では私達母娘の従姉妹であるとも言えるので、少し扱いを変えてあげようかな?

 当初は傀儡として万が一の時には使い潰すことも考えていたけど、なるべくクラリスにとっても悪くない結果になるように考慮しようと思う。


 ただしその為には、クラリスの曲がった性根を正す為にも、多少強引な手も使う必要があるかもしれないけれどね……。

 真ヒロイン登場……なのか?

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― 新着の感想 ―
[一言] レイチェルの母親の設定が、これまでの話の中で一番こころを乱されました。。設定が緻密ですね。
[一言] ええぇ、マジかぁ!?オリジナル・レイチェルの母親は公爵家の娘で国王の義姉でしたかぁ。 あの父親はマジで思った以上に最低のクソゴミクズですね。。。 というか、クラリスさんの性格が悪いというより…
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