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【書籍化・コミカライズ】婚約破棄した相手が毎日謝罪に来ますが、復縁なんて絶対にありえません!  作者: 櫻井みこと


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 サーラは一度だけ、この帝国に身を寄せているかつての婚約者、カーティスと再会した。彼は思っていたよりもずっと穏やかな顔をしていて、サーラとルーフェスの婚約を祝ってくれた。

「君には苦労ばかりかけてしまった。本当に申し訳ないと思っている。どうか、幸せになってほしい」

 あれほど自分のことばかりだった、カーティスの言葉とは思えない。

 人は変わることができる。それをしみじみと思い知る。

(わたしも、変わることができたかしら?)

 父の言いなりになっていた自分から、ルーフェスにふさわしい女性になることができただろうか。




 カーティスはレナートの支援を得て、王妃であった母の救出と王位奪還のために動いていた。

 彼は、最初は母さえ救出すればいいと思っていたようだ。

 だが、国王である父が一部の貴族のみを優遇し、とても公平とは言えない行為を繰り返していると知って、考えを変えたようだ。

 一部の貴族――。それはおそらく、サーラの父親であるエドリーナ公爵のことだろう。

 カーティスは父の横暴を止めるために、ソリーア帝国を頼って出奔したことにして、リナン王国に戻ることになった。

 父を追い詰めてしまうかもしれない。

 レナートとルーフェス、そしてカーティスにもそう謝罪されたが、サーラはもう、実家とは縁を切った身だ。

 父の方でも、カーティスが国を出てからは、用済みだとばかりにサーラの捜索を打ち切ったようだ。今でも行方不明になった娘が、ソリーア帝国の公爵の婚約者になっていることも知らないだろう。

 昔は抱いていた両親に対する罪悪感は、もうなかった。

 カーティスはリナン王国に帰還し、たくさんの貴族達と話し合い、味方を少しずつ増やして、母親の冤罪を証明することができたようだ。

 ソリーア帝国の後押しを全面に出すのではなく、自ら貴族の元に赴いて、彼らと何日も語り合ったらしい。

 カーティスが変わったことを知った貴族達は、新しい王太子ではなく、カーティスを支持してくれた。その声は次第に大きくなり、とうとう国王でも無視することはできなくなってきたようだ。

 王妃の冤罪事件もあり、このままではソリーア帝国と争うことになる。そう危惧した貴族も多かったようだ。

 そんなときに、暗殺未遂事件が起きる。

 カーティスがリナン王国で貴族達と話し合いに向かおうとしていたとき、暗殺者が彼の馬車を襲ったのだ。

 ソリーア帝国から派遣された護衛が彼を守っていたため、無事だったが、犯人は驚いたことに、サーラの兄だった。

 兄は、王女の降嫁を許されていた。王太子の義兄になれるはずだった。

 だからカーティスが王太子に復帰することを恐れ、おそらく父にも相談せずに行動したのだろう。

 だがそんな兄の軽率な行動が、なかなか隙を見せなかった父の致命傷になった。

 娘が重罪を犯して引退を余儀なくされた、帝国のピエスト侯爵と同じだ。いくら無関係だと主張しても、それが認められるはずもない。

 最初はリナン国王も、その事件を揉み消そうとしたようだ。

 カーティスは無断で国を出て、王族としての資格を失っている。そんな者がひとり襲われたくらいで、大事にする必要はないと言い放ったようだ。

 だが、それが貴族達の反発を買うことになった。

 国王の側近であれば、犯罪を起こしても罪にならない。

 さすがにそれは、独裁的すぎる。王妃に対する冤罪や、王太子であったカーティスに対する扱いに、帝国の支配を警戒していた貴族達でさえ、反国王派となった。

 サーラには結果だけ伝えられたので、詳しいことはわからない。

 ただ、どうやら兄の単独犯ではなく、カーティスの異母弟やその母である側妃も、この事件には関わっていたようだ。

 父は兄の起こした事件の責任を取って、引退することになった。

 公爵家を継いだのはもちろん兄ではなく、サーラ達の従兄である。以前、カーティスと婚約していたユーミナスの兄だ。

 兄は、王族を襲撃した罪で身分をはく奪され、王都から追放された。

 そうして母は父と一緒に、地方の領地に移り住んだようだ。もうふたりが表舞台に出ることはないだろう。

 ルーフェスは気遣ってくれたが、サーラは大丈夫だと告げた。

 たしかに血の繋がりはあったが、家族ではなかった。

 父は最後までサーラを道具としか思っていなかったし、兄はまったく関心がなかった。

 そんな人達のために、嘆くつもりはない。




 そんな状況が少し落ち着いた頃、サーラは手紙を何通か出した。

 最初の手紙は、ティダ共和国でお世話になっていた、パン屋の店主に宛てたものだ。

 ソリーア帝国に住むことになったこと。

 店を辞めなくてはならないこと。

 せっかく借りていた家を、引き払わなくてはならないことを詫びた。

 返信はすぐに届いて、生まれた子どもは双子だったらしく、子育てが大変でパン屋を続ける余裕がなく、店はしばらく休むことにしたと書いてあり、ほっとした。借りていた家も、サーラ達が戻らないのならば、子育てに良い場所なので、パン屋の店主が借りたいとのことだった。

 もちろん承諾して、荷物などは公爵家の使用人に取りに行ってもらうことにした。

 あとの手紙は、孤児院の院長、キリネ、そしてアリスに宛てたものだ。

 ルーフェス……。彼女達にとってはルースと婚約したことを告げると、みんなとても喜んでくれた。

 でも向こうの状況は、あまり良くないらしい。

 国が荒れたせいで治安はますます悪くなり、孤児院の院長は、ずっと孤児院を安全な場所に移転したいと思っていたようだ。だが、資金も乏しく、伝手もない。いっそ全員でティダ共和国に移り住もうと思っている。そう書かれている手紙を見て、サーラはあることを思いついて、ルーフェスに相談した。

 もし彼女達がリナン王国を出るつもりならば、行き先はこのソリーア帝国でもよいのではないか。

 そう言うと、ルーフェスはすぐに承諾してくれた。皇帝であるレナートにも相談し、ロードリアーノ公爵家の領地に孤児院を建てて、そこにみんなを迎え入れると言ってくれた。サーラのような公爵令嬢ならともかく、平民の移住は自由に認められている。

 もちろん、彼女達の意志が最優先なので、こちらはそれを提案するだけだ。

 返事にはしばらく時間を有したが、キリネやウォルトなど、そこで働く人達も含めて全員で、ソリーア帝国に移住することにしたようだ。

 優しかった院長に、色々と世話になったウォルト。たくさんのことを教えてくれたキリネに、かわいい子どもたち。彼女達とまた会えるかと思うと、嬉しくて仕方がない。

 サーラにとっては両親や兄よりも、彼女達のほうが本当の家族のようだ。



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