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「Q.異世界でラノベが読みたいのですが?」「A.ダンジョンへ行きなさい」  作者: toichi
エピローグ ラノベ読むからダンジョンへ!
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第48話


 恥ずかしながらオレは告白を受けた経験に関して人より多い自信があった。


 ……まあその全てが男子からの告白だった訳だが。


 とは言え、慣れてくると告白される事に躊躇みたいなのがなくなっていく。


 相手の気持ちを冷静に受け止める事が出来て、その上で返事を返せてしまうのだ。


 だがその逆ともなると話が別だ。



「どうしたんだい、テンドウ君。改めて話って?」


 呼び出した相手であるアレイがやって来た。


 場所は橋の上を選択した。街には水路のように幾つか川が流れているので、小さな橋がそこかしこにあるのだ。



 雰囲気のある場所として選択したのだが、果たして正解だったのだろうか。


 レインハルトとの決闘から三日の月日が経っていた。



 『分解』と『構築』を使った所為か魔力を殆ど使い切った為にまた随分と寝込んだりしたが、それもどうにか身体を動かせるまで回復した。



 その後、オレは気になっていた事を処理する為にこうしてアレイを呼び出したのだ。


 宿屋で言っても良かったのだが、何となく大事な事のような気がして場所を選び、こうして彼女の前に立っている。



 だが、


「いやな、実は、その……」

 一気に話してしまおうとして言葉に詰まった。



 いざとなると中々言い出しづらい。


 告白する連中は誰もがこんな恥ずかしさを覚えていたのだろうか。



 そう考えると凄い連中だ。


 男のオレに告白している時点で変態であるとも言えたが、それはそれこれはこれである。


「なんだいなんだい? もしかして告白って奴かい? いやー、ボクも罪作りなものだね。まさか君にまでモテてしまうとは」


 雰囲気を出し過ぎたのか、先んじてそんな事を言われてしまう。



 こいつ、本当空気とか読まないのか。



「いやさ、実はそうなんだよ。言いたいことがあってな」


 そう言うとアレイは「へ」と真顔になった。



 なんだ、どうしたんだ、こいつ。



「君がボクに? 告白?」


「ああ、そうだが」


 これ以上、隠しても仕方がないしオレは正直に言ってのける。


 するとアレイは引き攣った笑みを浮かべた。



「え、へへ、あー……そ、そうなんだ。ふーん」


「なんだよ、顔を赤くして。何がおかしいんだよ」


「え!? い、いやおかしくなんてない、ないさ! けれどね、なんか気付かなかったと言うか、そういう事もあるのかって言うか、そんな風に思ってくれていたのが、なんか嬉しいって言うかそのえーと……」


 急にそんな風な言葉を捲くし立てるアレイ。


 いや、本当にどうかしたのか、こいつ。



「じゃあ言うぞ。良いか?」


 彼女の変な様子に付き合っても居られないので、オレはオレのやるべき事を終わらせる事にする。



「あのさ、アレイ……」


「あ、あの……やっぱちょっと待ってそう言うのはもっと長く付き合ってからって言うか、その、お互いをもっとよく知ってから……」


 依然として真っ赤な表情でごちゃごちゃとなにやら言っているアレイを無視して強引にオレは言いたい事を言ってしまった。



「オレと正式にギルドとパーティを組んでくれ!」


「あぁあああああ! ちょっと、そんなのもう少し時間を置けばボクだって――――え?」


 オレの告白にアレイは呆けた表情をみせた。



「え、告白って……それかい?」


「ああ、そうだが」


 オレの言葉にアレイはほっと胸を撫で下ろすと、笑った。



「なんだなんだ、そうか。いやぁ、君がそういう雰囲気出してくるから本当にどうしようかと思ったよ。……ま、まあでもボクとしてはそれでも結構嬉しかったけれど、まだちょっと早すぎるかなって思ったり思わなかったりしてね」


 ぐにゃぐにゃと身体をくねらせるアレイに対し、オレは首を傾げる。



「……? お前一体オレが何を言うと思ったんだ?」


「え!? い、いや何でもないよ?」


「何でもない訳ないだろ? なんか気になるし、何を思ったんだよ」


「え、いや、その……」


 そう言って口ごもるアレイに対し、オレは益々訝しげな目付きを向けた。



「それは、その、だね……なんと言うか、そのツバキ君がボクに好きって言うかもなんて事をちょっと思ったりしてさ……」


「は? オレがお前を好き? いやいや、そんな事ある訳ないじゃん。ばっかだな、お前。確かに今更パーティ解散するのも何かあれだし、その為に頑張ったりしちゃったけどさ。でもお前とはそう言うのじゃないじゃん。有り得ない有り得ない。お前だって違うって思っているだろ、それなのに何をそんな馬鹿な考えを――――うわ! 止めろ、何をするんだ、テメェ!」


「うるさいうるさいうるさい! ちょっとでもそういう考えを起こしたボクが馬鹿だったよ! 喰らえ、『ばく』――」


「ああッ、馬鹿止めろ! お前マジでそろそろ捕まるぞ!」


 アレイが爆破を唱える前に口を塞ごうとするオレだったが、その過程で顔面にパンチやら引っかき傷やらを受けてしまった。



 ……いや、こいつだって多分断る気だったんだろ?


 そんな奴からの好意なんて受けたくないのが普通じゃないのだろうか。



 オレだってそれで結構苦労してきたと言うのに、こいつは一体何を考えているのだろうか。


 取り敢えずつまりはこう言うこと。



 ……ラノベの女子と違って現実の女の子は複雑なものなのだろう。





 ※※※






「聞きたいんだけどさ」


 オレはようやく落ち着いて橋の欄干へと寄りかかるアレイへと言った。


「お前の親父って作家なんだろ?」


「……まあね。それがどうかしたのかい?」


「そのペンネームって覚えてる?」


 暫くの間、ずっと気になっている事があった。


 オレがこの世界に引きずり込まれた理由についてだ。


「ああ。まあ、そりゃあこれかなってのはあるけれど……。君、それを聞いてどうするんだい?」


「悪いが大事な事なんだ」


 アレイはオレの様子を見て察したのか、少しだけ嫌そうだったが答えてくれた。



「……、えーとちょっと待って何だったか。確か志木屋――――」


「『志木屋永世』、か?」


「ああ、そうだそれそれ。……ちょっと待って。何でそれを君が知っているんだい?」

「いや、ちょっとな」


 オレは彼女の言葉を聞いて確信を持つ。


 この世界に転生する直前、オレはメールを受け取った。



『君はライトノベルが好きなようだが、どうやら私の書いた本を気に入ってくれたらしい。この続きを読んでみたいか』――――こんな内容だ。



 そのメールにオレは「当然だ」と返して、そして気付けばこの世界に居た。


 それはそれとして。


 もしもオレが作家だとすれば、本を書き上げた時、どう思うだろうか。


 完成した事に喜ぶかも知れない。


 しかし、多分、それだけじゃ満足出来ない。


 結果として書き上げた本は人に読んで貰いたいのではないだろうか。


 だが、読んでくれる人が居なかったとすれば?


 それは探してでも、畢竟、「相手を呼び出して」でも読んで貰おうとするかも知れない。


 この世界に作家は居ない、と聞いた。


 そしてオレがこの世界に来るきっかけとなったのはとある読んだ事も聞いた事もないようなライトノベルの冒頭を読んでしまったからだ。


 ここまで来ればその二つを繋げるのはそう難しい事ではない。



 ――――どうやらオレとこいつが出会ったのは意外と偶然でもなかったのかも知れない。



「アレイ」


「何だい?」


「お前の親父さん、見つかると良いな」


「そのつもりだよ。……どうしたんだい、いきなり」


 アレイは疑問の声音を口にしながら小首を傾げるが、オレはそれに答えなかった。


 面白いライトノベルを探す為にこんな所までやって来たんだ。



 是が非でも読ませて貰うぜ、志木屋永世さんよお。



 オレは静かにその決意を固めていた。



「ま、とは言え、今は遠くの事より近くの事だな」


 そう――――読みたいライトノベルはまだまだ沢山あるのだから。




「行くぞ、アレイ――――ライトノベルを読みに!」

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