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第25話


 それから五日の月日が経った。


「だあらぁああああああ!!」


 気合の一閃と共に一匹の『ノイジィバット』を斬りおとした。



 ノイジィバットは読んで字の如く騒がしい蝙蝠だ。地球の蝙蝠よりも一回り大きいモンスターで、不快な超音波を発し獲物の動きを止める。



 動きを止められた間は対応力が低下する為、奴を見つけた際は真っ先に狩れとオレはアレイより聞いていた。



 そのアレイだが、今はダンジョン近くの宿舎で眠っている。


 三日目まではオレと同じくほぼ不眠不休だったアレイだが、さすがに限界を超えたのか、ちょっとずつ休息が増え、今では爆睡の構えだ。女らしくないイビキが印象的であった。


 オレはと言えば、少しでも撃破数を増やそうと夜中にも関わらずこうしてダンジョンへと足を運んでいた。



 ノイジィバットを叩き落した後、オレは奴に手を伸ばす為に跳んでいた足を着地させ、そのまま次のモンスターへと向かう。



 向かう先は『スケイルリザード』。


 後ろ足で直立するトカゲ型のモンスターで、二メートルはあろうかと言う大きさから繰り出される鍵爪を使った攻撃は当たり所が悪ければ致命傷になりかねない。



 また、『鱗』の魔法文字を持ち、魔力が通った硬い鱗は魔力の通った武具でさえも弾いてしまう。オレの持つ安価な短剣など通らなくて当たり前である。


 だが、腹の辺りは鱗が生えておらず、その辺りがスケイルリザードの弱点になる。



 オレは接近したスケイルリザードの鍵爪に注意しながら短剣で牽制をかける。


 薙ぎ払った短剣をスケイルリザードは腕の鱗でガードした。



 両腕にバックラーを装備しているような感じだ。短剣が硬い衝撃と共に弾かれると、スケイルリザードは勢いそのままに右手の鍵爪を向けてくる。


 体勢を低くし、スケイルリザードの右側に回り込むとオレは短剣を用いて腹の辺りを切り裂いた。



 スケイルリザードは苦しそうな悲鳴を上げつつ、その場に倒れ伏す。


 暫くの間、警戒して短剣を構えていたが、立ち上がらない魔物を見てオレは一息吐いた。


 そして放り投げていたバックパックを拾うと、スケイルリザードからは爪と鱗の一部を、ノイジィバットからは牙を剥ぎ取る。



 ダンジョンだけあって湧き出るモンスターから素材を剥ぎ取って、換金が可能なのだ。


 素材は武器やら道具やらに姿を変えるそうだが、オレは換金だけしているので後の事は知らない。


 換金して手に入れたお金は装備品を整えたり、道具の補充、更にはダンジョン近くに留まる為の資金に当てている。



 身に着けている装備も五日前と比べ、随分変化した。


 安価に手に入っていた胸当ては軽めの鎧に替えた。その下にはスケイルリザードの鱗と魔力文字『鱗』を用いて強化した鎖帷子。


 鎖帷子には特殊な方法で文字が彫られているらしく、『鱗』の文字もこの方法でなら魔力を持ったまま力を保持する事が可能であるそうだ。



 この鎖帷子は相当高く換金したお金の殆どを持っていかれたが、命あっての物種だ。


 ここに金をかけるのは決して悪い選択ではないだろう。


 手甲は他に良いものがなくそのままで短剣は最初に買ったものと同じものを幾つか買って腰に差してストックしてある。



 ダンジョンに長く潜り手入れをする暇もない以上、高い武器を買うよりも安価な武器を多く買っておく方が良いと考えたのだ。


 幸いにもこの短剣で貫けない魔物はこのダンジョンに居ないそうだ。


 そんな風にオレはこの五日間で随分と異世界に馴染んでいた。



 五日間の内でオレが撃破した魔物は百三十を越えている。



 ちなみにアレイは百を越えるか越えないか。彼女は恐らく一週間で二百の魔物撃破を諦めたのだろう。


 元々、ダンジョン内ではポンコツのアレイだ。この撃破数は頑張った方だとも言える。

 だが、オレもうかうかしていられない。



 このままでは二百の撃破も不可能であるかも知れないのだ。


 なにせ百三十の撃破数の内に『ランナーラビット』『ウォールゴーレム』『パワーインセクト』の三匹は未だ一匹も含まれていない。



 百三十匹を越える魔物の撃破はオレの強さに少なからず変化を齎したが、それでもこの三匹を相手にするのはまだ戦力不足だと、オレは考えていたからだ。


 しかし――――もう悠長な事も言ってられない。



 タイムアップの時間は刻一刻と迫っているからだ。




「さて、と――――おっと」


 バックパックを持ち上げ立ち上がろうとする最中、視界が一瞬揺らいだ。


「…………」

 オレは身体の調子を確かめるように胸の前に手を置いた。


 鎧のお陰で心臓の鼓動は聞こえないが、多分、脈拍数は上がっている事だろう。


 動いていなくとも荒く息をしている事がその証拠だ。



 ――――しかし立ち止まっても居られない。



「いや、……まだ、大丈夫だ」


 休息は適度に摂っているし、限界とは思えない。


 ライトノベルを読む為にオレは――――


 重くなった足を上げ、オレは一歩、また一歩を踏み出す。




 そして、ダンジョンの先にオレは一匹の、聞いていた魔物を目視する。


「――――ウォールゴーレム」


 硬く重そうな岩がレゴブロックのように積み上がり、三メートルはあろうかという人型の巨体を形成している。


 オレはウォールゴーレムに向けて短剣を構える。


 この五日間の内に慣れない手つきで何度もやっている内に覚えた型。


 オレの姿を見つけたのか、ウォールゴーレムの方もこちらに向かってゆっくりと歩みを進めている。




 生唾を飲み込み、オレは短剣を強く握り締めた後、魔物に向けて地を蹴った――――

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