第19話
「……どうにも締まらない感じだが。アレイ君、君はこのダンジョンをどうあっても攻略する気かね?」
「勿論だ。君ごときにボクが負ける訳もない」
レイネの口を塞ぎながら尋ねるレインハルトに対しアレイは睨みを利かせる。
そんな彼女の答えにレインハルトはにやりと笑った。
「言ったね。ではこうしようではないか。二週間だ。二週間、君達に時間を与えよう。その間、私達はこのダンジョンの攻略を進めないと約束しよう。その代わりに二週間後、私と勝負をするんだ。もしも君達が勝てば我々はダンジョンに手を出さない。それどころか君達の攻略の手助けをしよう。だが、君達が負ければ、このダンジョンに手を出さない事とそして私が今後攻略を進めるダンジョンへの手出しもしないと約束したまえ」
「そんな勝手な――――」
「断ると言うのかい、アレイ君。先程あんなにもハッキリ啖呵を切ったのにも関わらず。言いのだよ、別に受けなくとも。その時はその時だ。このダンジョンはすぐにでも攻略するし、今後君達が行く先々に私が現れないという保障も出来ないな」
「……ッ、汚いぞ、レインハルト。そんな脅し――――」
「脅しではない。私はやると言えばやる男だ。君と私は元、同じギルドに所属した身。ならば知っているだろう、私の頑固さを。何ならテンドウ君、君が私と勝負しても良い」
レインハルトはオレの方を指差す。そして高らかに笑った。
「では二週間後の決闘を私は楽しみにするとしよう。……ああ、決闘とは別に、このダンジョンの攻略だが勝手に進めて貰っても構わないし、何なら攻略しても構わないよ。それが出来るならの話だがね。……レイネ、行くぞ」
入り口に向かって先を歩くレインハルトの後ろをオレ達に深くお辞儀をしてからついていくレイネ。
ゆっくりと歩いていくレインハルトとレイネの後姿が見えなくなってから、堰を切ったようにアレイは地団太を踏み始めた。
「あの男はぁあああああ!! なんて卑怯な男なんだ! もう、もう!」
「そうか?」
「……ツバキ君。どうやら君はレインハルトの奴を無意味に気に入ったようだが……、あれは狡すっからい男だよ? 奴の実力なら中堅のダンジョンに挑戦しても良い筈。それをしないのは奴がボクらのような新人をいびって楽しんでいるからに違いないよ。奴はそう言う意味のない虐めが大好きな奴なのさ。それに今の約束の件、どう思っているんだい?」
「いや、これはつまりチャンスだろ」
「……チャンス?」
訝しげな目を向けるアレイにオレは頷いてみせた。
「ああ。先程までのダンジョン探索で色々分かった。オレ達がこのダンジョンを攻略するのは簡単ではない。それも二週間なんて期間じゃ不可能だろう」
素人であるオレに加え、ダンジョン攻略において足を引っ張りまくるアレイのコンビだ。
どう考えてもそれが容易ではない事は分かる。
「でもレインハルトは人間だ。与する方法は幾らでもある。だって別に正面から戦わなくても良いんだろ? 罠を容易するなり、毒を盛るなり、酒に酔わすなり。人間相手なら取れる手段は色々ある」
「……、君が容赦のない人間で、卑怯な人間だと言う事が分かったよ」
「オレはライトノベルの為なら修羅にもなれる男だ。その時となればお前をレインハルトの家に送り込んで無差別に爆殺するぞって脅迫しても良い」
レインハルトへの尊敬は勿論あるが、それでライトノベル欲が満たされる訳じゃない。
奴を倒さねばライトノベルを読めない、と言うならオレはその手綱を切る覚悟も持とう。
「……その作戦にはボクの犠牲が伴うみたいなんだが」
「去らば戦友よ。お前の死という十字架を背負って、オレは生涯を送るよ」
「何を良い話風に言っているんだい!? ……まったく。君の考えにはほとほと呆れ果てるよ。だが君がその気だと言うのなら良いだろう。ボクも覚悟を決めよう。けれど、僕が勝つには君の協力が不可欠だ」
「……協力?」
オレの疑問に答える事なく、アレイは踵を返すとダンジョンの入り口へと向かった。
「おい! 何処へ行く気だ?」
「戻るのさ。ボクに考えがある」
アレイはそう言うと得意げに胸を張った。
「君をボクの師匠に合わせてあげるんだ」
ここで第二章は終了です。
次回からはちょっとした修行回を挟みつつ進んでいくと思います。
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