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「Q.異世界でラノベが読みたいのですが?」「A.ダンジョンへ行きなさい」  作者: toichi
第二章 パーティ組んだからダンジョンへ!
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第18話


 一先ずオレは再度、強く彼の拳を握り締めた後にアレイへの隣へと戻った。



「……あ、おかえりなさい」


 アレイは生暖かい目でオレの事を出迎える。



「えー……、コホン」

 仕切りなおすように男が咳払いをすると、再び、侮蔑を込めた微笑を称えた。


「ど、どうやら見る限りそのへんた――少年は君の仲間のようだね、アレイ君。と言う事は君はダンジョン攻略を諦めていないようだ。ほとほと諦めの悪い奴だね、君も」


 なんだか先程と同じような前口上を繰り返す男。



「ふ、ふん。どうして君の忠告を受け入れなくてはいけないんだい? ボクはボクの道を行く、それを君がどうこう言う権利はない筈だ」


 アレイも男に啖呵を切るが、どうも言葉の端々にキレがない。


 何? オレの所為? 


 しょうがないじゃん。男の慧眼に感動しちゃったんだし。


 それを口にするのもまたしょうがないじゃん。



「それで。この方々はどなた様であらせられるんですか?」


 男の方がお困りのようなので、オレは助け舟を出す事にする。



「なんか君、どうも様子が変で紹介したくないんだけど。まあ良いか。こいつらはね」


「待ちたまえ、アレイ君」


 アレイが紹介しようとしたところを止める男。



「そっちの君も覚えておきたまえ。私は冒険者にして貴族に名を連ねるその名もレインハルト・聖・エイレンルートだ。貴族として聖の文字を戴いた由緒正しきエイレンルート家の長男にして、やがては国の趨勢を担う者。まあ覚えておきたまえよ、平民諸君」


「勿論で御座います、レインハルト様。貴方様の名前は私の脳裏に深く刻み込みました故」


「あ、アレイ君! 私が覚えろと言っておいてなんだが、この男はどうもやり難い! 一体なんなんだね!?」


「……いや、ボクに聞かれても」


 二人して困り顔を浮かべるが、これは仕方のない事である。


 レインハルト様に忠誠を誓う事は最早、当然の責務と言えよう。



「そこの、あー……名前はなんだい?」


「貴方様が覚えるような大層な存在ではありません。この私の事はどうぞお好きに、なんならそれとかこれとかお望みとあればゴミとでも好きなようにお呼びになって下さい」


「いや後でも良いから名前は教えてくれ……。あと街中や城でならともかくこんな所でそうもへりくだられても扱いに困る。その下げた頭を上げて姿勢を楽にしてくれ……」


「なんとお優しい……さすがは陛下、貴方様がお望みとあらば……」


「陛下ではない……。あのアレイ君、この男は本当に一体なんなんだね!?」


「なんなんだろうね、ホント」


 オレはレインハルト様の言葉通りに姿勢を元通りに直す。


 それに何処かほっとしたような表情を浮かべるレインハルト様は紹介を続けた。



「そして、こいつは私の従者であるレイネだ。君達と話す機会はそうないと思うが、宜しくしてやってくれ」


「どうも、紹介に預かりました、レイネです。本当にいつもレインハルト様がお世話になっています。どうぞ存分に詰ってやって下さいまし。大層お喜びになるでしょう」


「……おい、貴様。今、なんと言った? どうも従者らしからぬ言葉が聞こえたが」


「気のせいで御座います、ドエム様」


「そうかそうか――――いや、今、ドエム様って言ってたよな、おい!?」


「何を馬鹿な、お耳が遠くなられたのではないですか? 痴呆ですか? ただでさえ利口な頭でないのですから、無理はなさらぬようにして下さいね」


「…………」


 そんなレイネの物言いに何か言いたそうにしていたが、やがて諦めるようにして口を噤むレインハルト様。



 さすがはレインハルト様。従者の粗相にも寛容なようだ。


 器の大きさがその所作から滲み出ている。



「……それで、アレイ君は良いとして、君の名前はなんだい?」


「私の名前は天道椿で御座います、レインハルト様」


「あの、テンドウ君……。普段は呼ばれ慣れてるんだが、君はその、レインハルトと呼び捨てて呼ぶ事を特別に許そう。……と言うか君にへりくだって呼ばれるのは何故か恐怖を感じる」


「仰せのままに、マイマスター」


「それも止めてくれ……」


 レインハルト様改めレインハルトはそう指摘する。



 このオレの溢れんばかりの尊敬を込めた呼び方であったが、そのレインハルトがそう言うからには仕方ない。万感の想いで諦め、レインハルトという名前にオレの全ての尊敬を込めるとしようではないか。



「さて、ようやく紹介も済んだところ……。アレイ君」


 再度、レインハルトはアレイへと向き直る。



「君の事だ。私がこのダンジョンの攻略を進めている事は何処かから聞いていたのだろう? 何故このダンジョンの攻略に乗り出そうとしているんだい?」


「……、ボクがどこのダンジョンを攻略しようとボクの勝手だ。君の知るところではない」


「それがそうでも無いんだな、これが。君とて冒険者の端くれ。ダンジョン攻略の際のマナーくらいは知っているだろう? 『ダンジョン攻略が他ギルドと重なる場合は、攻略の前に挨拶しなければならない』――常識だろう?」


「ではレインハルト、それはしきたりであってルールではない事も了解しているだろう? それに君とボクの仲じゃないか。こうして君とはここで挨拶も交わしている訳だし……、見逃してはくれまいか?」


「いやいや、私とてこれで君へ謝罪を要求したり、あまつさえ物を奪おうなどと言う事は考えていないよ。ただ、知っておいて欲しいんだ。『このダンジョンの攻略は私がいる以上、不可能である』という事をね。確かに君の実力では他のダンジョンの攻略は難しいという事は承知しているが、しかし、だからと言って私の縄張りにこられても困るんだよ。私も寛大だ。君の練習としてここを使う事に関して口出しはしないが、君が本格的にダンジョン攻略を試みるというからには私にも考えがあると言う事だよ」


「……ッ、言わせておけば、金にあかせて魔力数値の高い食事ばかりを取り、苦労もせずに強くなった七光りが随分と偉そうな口を叩くじゃないか。それに君の魔力数値ならば、そろそろもう一段上のダンジョンへ挑戦しても良い筈。それがこんな所に留まっていると言うことは大方怖気づいているんだろう。はッ、冒険者が聞いて呆れるよ、この臆病者が」


「なんだと?」


「なんだい?」


 売り言葉に買い言葉とばかりに火花を散らす二人に対して、オレは口を開く。



「おい、アレイ」


「なんだい、ツバキ君。今の状況を見て分かるだろう? ボクは今、君に構っている暇は無いんだ。それよりも君もあの男に何か言ってやってくれたまえ」


「いや、そんな事よりだ」


 オレはアレイに今、最優先事項を問いただす。



「お前はレインハルトに名前で呼ばれていて随分と親しげじゃないか……、オレのレインハルトとどういう了見で馴れ馴れしくしているのか聞かせて貰おうじゃないか……ッ」


「何に嫉妬しているんだい、君は! ……まあ良い。ボクは少し前に大手ギルドに所属していてね。彼とはその時のメンバーだったんだよ」


「なるほど、それで」


 妙に親しげなのはそういう事だったのか。



「つうかお前、何でそのギルド辞めたんだ? 大手ギルドってんなら一々止めない方が都合が良かったんじゃないのか?」


「いや、なにボクにも一身上の都合と言うのがあってだね」


「……、クビになったんだな、お前」


「ち、違うよォ!」


 必死にかぶりを振るアレイだったが、これは多分当たりだな。



「それを言うならレインハルトだってそうだ。こいつもボクと同じような理由だぞ」


「き、君と一緒にしないでくれないか。私はその、あれだ。貴族だからな。長いものに巻かれるのではなく己自身の手で道を切り開く事こそが大切である事を知っていたのだよ」


「……どうやら図星だね」


「ち、違うわ!」


「アレイ。レインハルトは違うと言っているんだ。レインハルトは嘘をつかない。いや、むしろ嘘も真実へと変わる。そういう事を言っているんだよ、彼は」


「いや、それも違う……」


「ツバキ君。妙な崇拝がエスカレートしている気がするからそろそろ自重したまえよ」


 オレの言葉にレインハルトとアレイはそれぞれ怪訝な表情を浮かべる。



 ふむ。確かにそろそろ行き過ぎていたきらいはあるし、調子に乗っていた節もある。

 自重しろ、天道椿。オレはやれば出来る男なのだから。



「大体テンドウ君。君はこの女をどう思っているんだい? この女のポンコツさは私の度量を以ってしても許容しがたいもの。君はこの女とパーティを組んでいるようだが、実際この女は使えないだろう?」


「何を――――」


「……いや」


 彼の言葉に激昂するアレイをオレは静止した。



「レインハルト。お言葉ですが、彼女はポンコツではありません」


「……ツバキ君」


「ポンコツではなく――――超ポンコツです」


「……ツバキ君。――――ツバキ君!?」


 なにを、と反論しようとするアレイの口を塞ぎながらオレは言った。




「いや、超ポンコツどころか、超絶的なポンコツ、これはそう無自覚スパイと言っても過言ではありませんよ。魔法を唱えさせれば標的を外す――がそれはまだ良いほう。時には味方を爆破魔法で撃ち抜くその天才的なまでの駄目っぷりは最早、人間地雷。味方である筈なのに何故オレは奴の方を警戒しないといけないんだ! そんな味方あります!?」


「ふッ、その程度でポンコツを名乗るとは片腹痛いですね」


 そんなオレの言葉に何故かレインハルトの従者であるレイネが反論した。



「レインハルト様は確かにその実力に置いてはまあまあ使えます。しかしながらいかんせん素行が酷い。誰かれ構わず突っかかっては面倒事を引き起こし、その都度エイレンルート家に迷惑をかける。当主様がレインハルト様の行いにどれだけ頭を痛めていらっしゃるかは分かりません。しかもレインハルト様と来たら、齢二十になるにも関わらずその面倒な性格から彼女はおろか女の子と自然に喋る事すらままならないヘタレっぷり。なんですか、『私の人生に置いて女など必要ない。貴族とは孤独なもの……孤高な私に見合うような女子が居ないのでは仕方がない』って。アレイさんはダンジョン探索に置いてポンコツなだけでこちらは人生においてポンコツなのですよ。この産廃をどう扱えば良いのですか?」


「……むぅ。レインハルトへの文句は許せないが。話を聞く限りこちらに負けず劣らない面倒さと中々の童貞力……これは一本取られたと言わざるを得ないか」


「いえ、……言って置いてなんですが、そちらも中々の苦労をされている様子。認めざるを得ませんね」


 オレとレイネは歩み寄り、お互いの健闘と今後の苦労を慮って固い握手を交わす。




「「――――いや、なにこれ!?」」



 そんな光景を見てアレイとレインハルトの二人は同時に声を張り上げていた。

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