第16話
「うぅ……酷い目にあった……」
気が済んだところで助けに入ってやった訳だが、それまでビッグワームに思い切り集られたアレイは胸当ての辺りにはくっきりと歯型が付いており、銀色の綺麗な髪の毛はぐしゃぐしゃになっている。
「それで済んで良かっただろ。オレを見ろ。オレなんてすでに半分裸なんだぞ」
対してオレはと言うと、ビッグワームに集られた挙句に爆破魔法を喰らったので新調した胸当ては大破、揃えた服も所々が破れていて、とてもじゃないが表を歩いていてはいけないような姿になっていた。
「オレを見ろって……、ツバキ君、ボクは女の子なんだからもう少し節度ってものを……」
「おい、いきなりオレを見せたがりの変態みたいにすんな。テメェの所為でこうなったんだぞ。意識してると何か寒くなってきた。何か替えの服とか持ってないのか。寄越せ」
季節はどうやら初夏のようだが、ダンジョンの中は太陽の熱が届かない上に、何処かひんやりとしていて、さすがに半裸では厳しいところである。
「女の子の服を剥ごうだなんて……。ツバキ君はボクの裸に興味があるのかい?」
「ふざけんな。そう見て欲しいのならもう少し女の子然とした態度を示せ」
「あッ! ツバキ君、それはいけないな。いけない。自分がちょっとばかし可愛いからってそういう事を言うのは戴けない」
「お前こそそう言うのは男に言う事じゃないんだよ。ふざけてると、また粘液塗りたくんぞ。……良いから替えの服、何なら上着とか持ってないのか?」
とは言えこいつも女子、替えの服が女の子モノでは辛いが。
だが、こいつの服を見る限り、どちらかと言えばボーイッシュ系だ。男のオレが着けてもおかしくない……、とまでは言わないが目立たない程度にはなるだろう。
「う……、さすがにアレをもう一度は辛いな。けれど今日は夕刻には戻る予定だったから替えの服は持ってないんだよ」
「む、そうか」
正直、こいつの服を剥いで着たいくらいだったが、さすがのオレも女の子相手にそんな事が出来る程に鬼畜でもなければ、そういう経験がある訳でもない。
するとアレイは「あ」と閃いたかのように口を開いた。
「どうした? もよおしたのか?」
「……ツバキ君。そういうセクハラは止めたまえよ。大体、女の子はトイレなんかにいかないよ。そうじゃない。そう言えばエイラから何か受け取っていたと思ってな」
アレイは背負っていた鞄を地面に置くと、中から箱を取り出した。
「エイラから? ……そんな事よりお前、よくそんなかさ張りそうなもの持ってきたな」
「備えあれば何とやらと言う奴さ。それにエイラはこう言う時、結構気が利く奴でね。下手なものは持たせないだろうと思って持ってきておいたのさ」
「そうなのか? ……なんだかオレは嫌な予感がするんだが」
オレの不安など露知らず、アレイは箱を開けてみせる。
「こ、これは――――何だ? どうやら服のようだが」
「……これは体操着って奴だよ。しかも下はブルマだ……」
箱の中に入っていたのは日本のエンタメ界では多用される記号的服装、体操着。しかも現代でもおいそれとお目にかかれないであろうブルマであった。
「この服、見る限り動きやすそうだな。ツバキ君、どうだい、これを着てるのは?」
「ああ。間違いなくエイラはそれを願ってお前にそれを持たせたんだろうよ……」
何考えてんだあの女は……。
しかもこう言う状況になるであろう事を予感して持たせたのか?
もしもそうであるならば大した奴であると言わざるを得ない。
……まったくもって認めたくないのだが。
「ふむふむ、なんだい、似合うじゃないか。……それにしても太腿が際どいところまで見えてしまうものだね。ボクだったら恥ずかしくて絶対着けられない」
「いや、オレも好きで着けている訳じゃないんだが……」
上着で太腿を隠そうにも長さが足りずに難しい。
あの女、全部計算付くだな。畜生め。
「お、ツバキ君。あっちに不審な影が……む、あれはゴブリンだね。低級悪魔だ。でもボクが居れば安心だよ。さあ、ツバキ君、奴をとっちめようではないか!」
「ああ、下がスースーする……女はこんなもん着けてるのか……」
オレは太腿に違和感を覚えつつもアレイに続いて、武器を構えゴブリンへと突撃する。
……あの女め。帰ったら覚えとけよ。
「もう少しだ、頑張れ! ボクも力及ばずながら回復魔法で支援するよ! ……あ」
「テメェ、オレが弱らせたモンスター回復させてどうすんだよ! ちょッ、まっ、ころ、殺されるぅううううう!!」
やっぱあの女よりも目の前のこのアホ女だな。
駄目だ、この女は。オレが思っていたよりもずっとポンコツだ……。




