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「Q.異世界でラノベが読みたいのですが?」「A.ダンジョンへ行きなさい」  作者: toichi
第二章 パーティ組んだからダンジョンへ!
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第15話



「うわぁああああああ!!」


 ダンジョン内に悲鳴が木霊する。


 塔型ダンジョン第一〇二三号。


 どうやらそれがこのダンジョンの正式な名称であるらしい。



 ただ、そんな面倒な名前、誰も使いたがらないのか皆、『ハーレムダンジョン』とか『自宅ハーレムダンジョン』とか好きに呼んでいるらしい。……シュールだ。


 そんなハーレムダンジョンの中でオレは早速、悲鳴を上げていた。


 ビッグワーム。


 芋虫型で大型犬くらいの大きさがあるモンスターで、ダンジョンに置ける魔物の中では最弱な、いわゆるスライム的立ち位置の魔物であるらしい。


 魔物だが一般人でも駆除出来る程度の強さで、魔力文字も持たない超低級のモンスター。



 しかし、ダンジョンで出遭う際に気を付けなければならない事がある。


 それは彼らの発射する粘液だ。



 ビッグワームが発射する粘液は粘り気があり臭い。それだけでも不愉快なのだが、彼らの発射する粘液にはマーキングの作用があり、これを付けられた冒険者は他の冒険者など構う事なしに魔物に集られる。


 一匹一匹が貧弱な魔物だが、それこそ十匹単位で集られては駆け出しの冒険者ならば死にかねない。



 動きは遅いが、鋭い歯を持っていて、こいつらに集られて死ぬのは最早拷問との呼び声がある、弱い癖に妙に恐れられている魔物なのだ。


 オレはと言えば察しの通りこのビッグワームの粘液を邂逅一番に浴び、十匹以上ものビッグワームに集られ、泣きながら逃げていた。




「ちょッ、お前らァ! こっちが逃げてるからって調子に乗りやがって! ……あ、すいません! ちょっと、待って! 止めて! オレの新品の剣を喰らうのは止めてあげて!」


 こちとら貧弱な魔物ですら手こずる程の駆け出し冒険者であり、元々はライトノベルが好きなだけの取り得なんて取り立ててない一般人だ。



 ちょっと装備を整えたからと言っても、こんな訳の分からない集団に襲い掛かられては溜まったものではない。



 エイラから借りた金で買った新品の短剣も、ビッグワームに齧られたり、粘液塗れにされたりで可哀想な有様である。



 そんなオレのピンチに仲間の冒険者はと言うと、


「ははは、何してんだい、ツバキ君!」

 などと一人粘液の被害から逃れつつ、笑いながら眺めていた。



「おい、そこの奴! 見てないで助けろォ! オレ達、仲間だろうがぁ!」


「おやぁ? 散々ボクのことをポンコツ呼ばわりしておいて、ピンチになったら助けを求めるなんてそんな虫の良い話があるのかなぁ、虫だけに。あれボク、上手い事言っちゃったかな? それに大丈夫だよ。ビッグワームに集られたくらいだったら、そう簡単に死なないから。すこーし痛い思いはするかもだけど、頃合を見てボクが助けに入ってあげるよ」


 どうやらこの女、結構根に持つタイプであるらしい。



「ふ、ふざけんな! このクソ女! 助けろ! いや助けて下さい、お願いします!」


「おやおや、まあまあ必死だねえ。んー、どうしよっかなあ?」


 尚も指を口元に当てながら、首を傾げるアレイ。


 ……畜生、助かったら、殺す! 殺しつくす!



「ん? 何だい、その反抗的な顔は? もしかしてボクは君を助けない方が良いのかな」


「い、いや助けた方が絶対良いです! それは間違いない、なんだったら暫くの間、お前の言う事何でも聞くから!」


「んー、それなら仕方がないなあ。ちょっと待ちなよ、ツバキ君」


 アレイはようやくその気になったのか、右手を構えた。



「闇を照らす紅き焔よ、我が敵を焼き尽くしたまえ。我は煉獄より来――――」


「そ、そう言うの良いから! 早く、早くぅうううう!!」


 既に足先に集られ始めている事からオレの混乱はピークに達し始めていた。


 ――――ってちょっと待て! その変な厨二病詠唱の後に続くのってまさか……。



「分かったよ、まったく締まらないなあ、ツバキ君は。じゃあ、行くよ! 『爆』破!」


「ちょ、おまッ、それ待っ――へぶら!」


 厨二病詠唱の後に放たれた彼女の爆破魔法はあろう事ことかオレの眼前を中心に展開され、ビッグワーム数匹どころかオレに付いていた粘液、そしてオレ毎吹き飛ばした。


 視界の遠くで爆破魔法から逃れたビッグワームが逃げていくのが見えた。


 オレがこうして生きているように、大した威力では無かったらしい。



 とは言え、爆破魔法を眼前に放たれたのには違いなく、オレは某Z戦士のように爆発の爪痕を残す地面の中心で縮こまるようにして横たわっていた。



「…………あ、あの」

 そんなオレの様子に怯えるかのように、おずおずとアレイが話しかけてくる。



「だ、大丈夫かい?」


「…………」


 多分、頑張れば声くらい発する事は出来ただろうが、オレはあえて無言のままに目だけはじっとアレイの方へと向けていた。



 そんなオレの心中を察したのか、アレイはビクつきながらも話しかけてくる。



「う、うん! どうやら大丈夫みたいだね。結果的にビッグワームは逃げてったし、君をあいつらから救うって目的は果たされたんだ。良かった良かった」


「…………」


「ほ、ほらさ! い、一応ボク、君の目の前に爆破魔法が放たれる寸前で威力を押し殺したり、とかそういうのやったんだよ? もし、ボクが本気で爆破魔法を君に放っていれば死ぬか、もしくは重傷を負っていた筈さ。そういう意味でボクは君を助けたって言っても過言じゃない。いやー、ボクは君の恩人だね。感謝してもしたりないんじゃないかなって」


「…………」


「え、ええとさ! ボク、実は回復系の文字とも契約してるんだよ! い、いくよ! 『治』療! う、うん! まあ完璧にっていかないまでも結構楽になっただろう? ボクがもう少し高い魔力を持っていたならば完治も可能だっただろうけれど、それはその、あれさ。そういう事もあるって事で」


「……アレイ」


「な、なんなのさ、そんな急に立ち上がって。い、いや立ち上がれるくらいには回復したんだね? いやー、良かった。じゃあ早速ダンジョンの探索を再開しよっか。大丈夫、次は君もモンスターをちゃんと倒せるだろうし、心配は要らないさ……ってちょっと、何拾ってんの? そ、それビッグワームが撒いた粘液だよね? 君を狙って当たらなかった奴……それをどうしようって言うの? 何で無言でボクのところに? じょ、冗談は止めてよ、止めてツバキ君、ボクと君の仲じゃないか――いやあああッ、犯されるぅううう!!」


「誰が恩人だテメェ! 上等だ! 喰らえ、ほら、オレと同じ目に遭わされろ! くそったれがァアアアアアアア!!」




 そうして遠くからゆっくりと姿を見せるビッグワームを確認した後にその場から逃げたオレは、顔中粘液塗れにされて魔物から逃げ回るアレイの姿を一頻り見てようやく溜飲を下げたのだった。


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