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「Q.異世界でラノベが読みたいのですが?」「A.ダンジョンへ行きなさい」  作者: toichi
第二章 パーティ組んだからダンジョンへ!
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第14話



 

 ダンジョンという事でどのようなものかと考えていたが、魚車で到着した先に見たのは天上へとそびえ立つ塔のような建物であった。


 塔の周囲には即席の小屋が幾つか建てられている。恐らくは集まってきた冒険者を相手に商売を行っている連中のものだろう。見れば食料品の他に装備品、道具、野営道具と言ったものまで揃っているようである。



「なあ、ダンジョンの周囲ってのは基本、こんな感じなのか?」


 オレは隣を歩くアレイへと聞くと、彼女は頷いて見せた。



「まあ規模は小さいけれど、概ねこんな感じだよ。ダンジョンってのは人の集まる場所だからね。商人にとっては儲けのチャンスという訳だ」


 半ば予想はしていたが、これはやはり規模が小さいものであるらしい。


 何故なら商売をしている連中に活気がないし、ダンジョンへと入る連中も少ないからだ。



「この規模が小さいのって何か理由でもあるのか?」


「色々あるよ。何せこの辺の地域はダンジョンの激戦区だからね。例えば『あらすじ』によってはその人気もまた振るわないことだってある」


「『あらすじ』?」


 そう返すオレにアレイはダンジョンの入り口を指差した。



 入り口へと近づくにつれてオレはダンジョンの入り口に日本語で案内のようなものが書かれている事に気付いた。


 まじまじと見ると、ダンジョンにはこう書かれていた。



『「妹と姉と従妹と居候に迫られて、色々耐え切れない俺の自宅ハーレムは爆発しそうです」

 両親が海外出張で一人暮らしを満喫出来ると思った矢先、俺、和泉いずみ 健太郎けんたろうの元に生き別れの妹を名乗る少女、春日井かすがい まい(小六)が尋ねてきたかと思えば、その舞は何故だか俺にベタ惚れ。

「おにーさま、いってきますのちゅーをしましょう?」などと条例待ったなしのアプローチを仕掛けてきて――――その内、留学に行っていた筈の姉や子供の頃に結婚の約束をしていたらしい従妹、果ては日本への留学のホームステイ先として我が家にやって来た金髪幼女も我が家に加わり――――自宅軒先禁断ラブコメディ、開幕!』




「…………」

 オレはそれを眺め、両の拳を握り締めた。



「分かったかい、ツバキ君? この『あらすじ』はダンジョンを攻略した際に読めるライトノベルの内容を書いたものなんだよ。これを読んで冒険者はダンジョンを攻略するかどうかを決めるんだけれど、このように『あらすじ』によっては攻略を避けられ――――」


「――――良い」


「え、ツバキ君。今なんて――――」


「これ! こう言うのだよ! このわざとらしく突っ込み所が多いけれど、そんなもの全部ぶっちぎって魂が滾るようなシチュエーションをぶち込んだかのようなテンプレハーレム系! いやー、やはりあらすじだけ触れてもやっぱ良いものだなあ! ん、どうした?」


「いや、君はこれ気に入ったのかい?」


「何だ、お前は気に入らなかったのか?」



 オレの質問にアレイは首を傾げる。


「いや、ボクはともかくとして……。なんだか皆、テンプレハーレムものって避ける人が多いからさ。そう言うものなのかなーって」


「それを避けるなんてとんでもない!」


 オレは手を振り上げてアレイの言葉を否定する。



「テンプレハーレムもの。確かにこのあらすじを見る限りテンプレハーレムものだし、多分、中身を見てもテンプレハーレムものに違いないんだろうけれど。だから何だ!? テンプレが駄目なのか!? ハーレムは飽きるものなのか!? 否! 断じて否! 確かに新しい発見は無いかも知れない。新鮮な出会いは無いかも知れない。大した理由なんてなく女の子達は主人公に皆惚れていて、それを良いことにずっと女の子達へのアプローチを続けるような、そんな作品かも知れない。だが、ライトノベルに求められるのは新鮮な驚きだけじゃないんだよ。ライトノベルはそんな器の小さい媒体ではない。テンプレハーレムもの、良いじゃないか! 可愛い女の子の可愛い展開や仕草を求めて何が悪い! 何が悪いってんだ! 主人公とヒロイン達が楽しそうで、時に辛い展開もあるけれど、それもまた女の子達との絆を深める為のもので、ハーレムものに求められる資質ってのはなぁ、単純に面白いってだけじゃないんだよ! 女の子が可愛い、それだけで良いんだよ! そんな彼女達を見て、そしてそんな女の子達の為に身を削り頑張る主人公を見て、オレ達は勇気を貰うんだ! 人気が出ないかも知れない。一般層には受け入れがたいかも知れない。『またテンプレハーレムものかよ』とかそんな中傷なんて気にしないで良い! オレはこんなテンプレハーレムものを定期的に見ては『ああ、なんか帰ってきたな』みたいな、例えるなら産湯に浸るかのような、そんな感慨に浸るんだよ! それを避けるなんてとんでもない、とんでもないんだよぉ!」




「ちょ、ちょっと!」


「どうした? ちゃんとオレの話を聞いていたのか?」


「聞いていたよ。聞いていたさ。……だからちょっと疲れている訳で」


 アレイは何処か憔悴しきったかのような、そんな表情をみせた。



 ……おっと、どうやらアクセルを踏み抜きすぎたらしい。





「ボクが言っているのは世間一般的に言って人気が出づらいのかなって」


「なるほど。そういうことか」


 オレもテンプレハーレムものが一定の人気を勝ち得たとしても、そこからヒットしづらいって言うのには悔しいが同意せざるを得ない。



 ハーレムものがライトノベルに置いて基本形である事には違いないだろうが、そこから他作品と差別化する為に普通は色々手を打っておくものだ。



 このダンジョンを形成した作品が他作品より差別化出来ているかと言えば、分からないと言わざるを得ない。



「それにこの作品は『魔力』にも人気でなかったみたいだからね。必然的に我々もこの作品は取り合いにはなりづらい。この激戦区である地域なら尚更さ」


「……魔力?」


「魔力にも意志があるって話はしただろ? こいつらもボクらと同じく面白いライトノベルを求めているんだ。まあボクらにして見れば面白さの参考にする指標みたいなもんだね」


 この世界では文字に魔力が宿り、魔力には意思が宿る。


 だが、魔力は文字であれば何でも良い訳では無いらしい。



 意思を持つ魔力は文字の集合体であるライトノベルを「批評」し、その上で宿るそうだ。

 当然ながら面白い作品に偏って魔力は宿るし、残念ながら悪い「批評」を受けた作品には少ない魔力しか宿らない。



 そして、比較的少ない魔力しか宿らなかったライトノベルは低いレベル且つ規模の小さなダンジョンしか形成出来ず、それは冒険者にとって一目で分かる。


「ボクがここを選んだのはこの付近で一番規模が小さく、レベルの低いダンジョンだからだよ。他は冒険者の競争も激しいし、そもそもボク達が攻略できるようなダンジョンではないからね」


「競争相手が居ないって事はオレにとっては都合が良い訳だが……」


 それにしても複雑な気分である。



 異世界に来てまで批評に晒される作品達とはなんとも世知辛い。



 それに人気が出ずとも面白い作品は沢山あるのだが……、この辺は商業作品。人気の出やすい作品が売れ、売れる作品こそ正義であって、売れない作品への風当たりは強い。

 そんな事を考えているとアレイはかぶりを振った。


「競争相手が居ないという訳じゃないんだけど。って言うか面倒なのが居るかもだけど」


「?」


 そのはっきりしない物言いに疑問を覚えたが、しかし「まあ良いや」と嘯く彼女の言葉にオレは気にする程の事でもないのだろう、と考えた。



「一先ずはボクらの結成ギルド初のダンジョン攻略だ。気合を入れて行こうじゃないか」


 そう口にするアレイに続き、オレはライトノベルを手にする為にダンジョン攻略への記念すべき一歩を踏み出した。


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