第13話
「例えば、このスカイフィッシュも魔力文字『空』を使用する魔物の一種だから、スカイフィッシュを倒すなり、食べるなりすれば魔力文字『空』を使用出来る可能性はあるよ」
「え、マジで?」
オレは先をいくスカイフィッシュの目をまじまじと見る。
その目は魚類独特の目の形をしていて、その心中を窺い知る事は出来なかったが、何となく穏やかな目をしていてオレ達に殺される、なんて事は一切考えていないように見えた。
……自分を襲いに来る魔物とかだったら、殺してもあんまり罪悪感はなさそうだが、こういう奴を手にかけるのはさすがにどうだろうか。
「あの、ツバキ君」
アレイはオレの名前をおずおずと呼ぶ。
昨日、アレイとはパーティの結成を兼ねて改めての自己紹介を終えている。
どうも昨日のやり取りでアレイの事は純粋に女の子とは思えないが、しかし女の子に下の名前で呼ばれる事には若干の抵抗を覚えずには居られない。
そんなオレの心中など知ってか知らずかアレイはお構いなしに先を続けた。
「スカイフィッシュは移動手段として便利だし、『空』の文字はあまり有用性が無いから、この子には手を出さない方が良いんじゃないかな」
「ん? 『空』とかでこいつみたいに飛べたりはしないのか?」
「この子の魔力文字はちょっと特殊でね。スカイフィッシュの身体はそれに特化したものであって、人間が同じく空を飛べたりはしないみたいだよ。それにこれは借り物だからそれをどうにかしちゃったりしたら損害賠償の請求もあるから勘弁して欲しいかな」
人間が鳥と同じく翼を持ったところで飛べないように、飛ぶ生き物は予めそれ相応に身体を作り変えているという事か。
そういや鳥とか身体の中スカスカらしいからな。それを考えればこいつも似たようなもので、『空』の文字を手に入れたところで簡単にはいかないというのも納得だ。
更に固有魔力を取り込むには一体を倒す為だけでは成立しない事が多く、普通は何十体の魔物を倒してようやく固有魔力を手に入れる事が出来るらしい。
さすがに何十対ものスカイフィッシュを倒して、使いづらい魔力文字を手に入れたとしても費用対効果を考えればいかがなものかと言う訳か。
「って言うかお前、昨日魔法使ってたよな?」
「え? うん」
アレイはオレの言葉を肯定する。
「確か……『爆』破とか言ってたか、その文字も何十体もの魔物を倒して契約出来たのか?」
つまり先の理論に照らし合わせるとこいつは魔物を何十体も倒したと言う事になる。
その信じられない事実にオレは怪訝な目を向けた。
「……どうもその顔は失礼な事を考えている顔だね」
「ソンナコトハナイヨー」
「なに、その棒読み。まあ確かにこの文字は先の方法で手に入れてないし」
「その言い方だと他に方法があるみたいだな」
「まあ、そうだね。ボクの魔力文字『爆』は元々ボクが持っていた固有魔力に基づいて契約しているんだ」
「元々持っていた?」
「『文字持ち』って言ってね。生まれながらにしてその固有魔力を持って生まれてきた人間の事をそう呼ぶんだよ。これって実は凄い事なんだよ」
得意げな表情を浮かべるアレイに対して、オレは息を吐く。
「宝の持ち腐れか……」
「ちょっと君、言葉が過ぎないかい? ここでボクの『爆』が火を噴いても良いんだよ?」
「止めろ、無差別爆弾魔が! いや、自分も巻き込む可能性あるから自爆テロか!?」
「ひ、酷ッ! 良いだろう、なら自爆テロかどうか確かめてくれる!」
「や、やべぇ! ちょ、ちょっと誰かァ! ここに無差別テロ起こそうとしている奴が居ますよお! 逮捕を! このアホを誰か牢屋にぶち込んで下さい!」
アレイの『爆』を使った魔法はオレ達二人を吹き飛ばす事は無かったものの花火のように上空に放たれた爆発は潜んでいた魔物を呼び寄せた。
魔物の群れより逃げるのに苦労したオレ達だったが、どうにかダンジョンに着く前に死亡とかいう前代未聞の全滅とはならずに済み、オレは安心すると共に今後の活動について不安を残したのだった。




