第0話
新連載です、完結済みですので未完って事は無いです。
良ければ読んでみて下さい!
異世界転生。
オレみたいな奴にとってそれはとても聞き慣れた言葉であると共にその展開は最早、血に馴染む程、見慣れたモノだった。
四方を本棚で囲まれた自室の見慣れた光景は鬱蒼と茂る草木や木々へと変わっている。
パソコンの駆動音の代わりには何だかよく分からない生き物の鳴き声がそこら中から木霊していて。
何よりも決定的だったのは、眼前に映る生物だ。
形こそ蝶々に違いないそれは二メートルはあろうかと言う大きな羽を広げ、ほんの十分前まで冬の寒さに包まれていた部屋とは違い、汗も滴る熱さを生み出す太陽の方向へとゆっくりと飛び去っていった。
その余りに奇妙な迫力を有す蝶々を見て、オレはここが地球ではない、何処か別の場所である事を自覚した。
そう――――つまりは異世界転生だ。
異世界への転生。人によってはそれを喜ぶ者も居るだろう。
しかし、オレにとっては許されざる事態だ。
異世界転生と言えば、何やらチート的な能力を持つにしろ持たないにしろ、息を呑むようなスリルと隣り合わせの冒険へと繰り出す。
――――それは良い。
そこまでは良い。
しかし……、オレには一つ、それを許容出来ない事実があった。
命の危険があるとか、現代技術をあてにした自堕落な生活が送れないとかそんなんじゃない。
このままではオレは――――
「異世界じゃ、ライトノベルが読めないじゃねぇかァああああああああ!!」
それはオレにとっては死活問題であると共に最も危惧すべき事態に他ならなかった。
……どうしてこうなった?
オレはこのどうしようもない現実に絶望し、ライトノベルが読めないという異世界転生に置いて最早絶対と言って良い事実の元に膝を屈するしかなかった。