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モノノ怪さんごくし!  作者: 蟻足びび
黄巾の乱
22/23

黄巾の乱 其の玖

「ここが、そいつの家か...」

「うん、そうみたいだよ〜!聞いたところによると」

「アポ無しかよ!留守だったらどうする!それにしても、なんだここ。ポツンと一軒家に取り上げられてもおかしくないんじゃねえの?」


俺らは、もはや誰も住んでないのではないかとさえ思われる、ひどく古ぼけた家屋の前にいた。

場所は徐州。劉家屋敷のある益州の成都からは、とてもではないが、徒歩で行ける距離ではない。

そこで我ら一行は、ヒメの転移チートを使い、ここまで一っ飛びすることにしたのだ。

ヒメのこの能力は、一度にヒメを除く二人しか同行できないため、シリューくんは留守を担当することになり、ヒメ、リュウビ、そして俺の3人が、こうして出掛けてきているのだ。


「でも、ここに住んでるっていう人が、戦争の舞台裏で何やら工作をしていたというの?にわかには信じれる話じゃないけれど」


ヒメが言う。

そう。ここは、先日の黄巾党との小競り合いの時、全ての筋書きを作り上げた(とリュウビが推理した)張本人が住んでいるという家なのだ。


「心配はいらないよ〜!あたしの推理は、シャーホームシックをちょうえつする!」きらーん

「誰だよ!ただの家好きじゃん!」

「あ、江戸川乱歩か!」

「どうやったら江戸川乱歩をそんな絶妙な間違え方できんの!?」


せめて、シャーホームシックはシャーロックホームズの間違いであれよ!

............シャーホームシックって恥ずかしいなぁ。


「ん、待てよ?___________いや、江戸川乱歩は探偵じゃなく、推理作家だぁ!10回クイズみたいな言葉遊びをやめろ悔しい!!」

「うわぁ、りょふくん鋭い!」


ばたり、とやられたふりをして倒れるリュウビ。

なんて楽しい会話なんだろう。

不覚にもノリノリでツッコんでしまった。


「むぅ.........シャーロックホームズは、りょふのすまーとふぉんで知って、ボクが教えたやつ……」

「?えっとヒメさん?もしかして、ふて腐れてんの?」

「ふんっ!知らないもん。さっさと済ませて帰ろーよーだ」

「お、おう。まあ、そのつもりだけど.........」


と言ってもここ、なにか嫌な予感がする。

気のせいだろうか.........誰かに見られているような.........


カサカサッ____


「な、なに?」

「いや、わからん。俺も聞こえた」

「あたしも。どこかから監視されていたみたいだよー、あたしたち。ずっと視線感じてる」


耳を澄ます。

そもそもここは深い山の奥であり、草木が生い茂っている。隠れながら尾行するにはもってこいの環境だ。

四方八方深い緑。何か危ない気配を感じ、俺たちは身構える。


「りょふ、危ないッ!!」

「お____っけいっ!」


ヒメの声で反射的に体を逸らす。

その刃は俺の髪をかすめ、飛んできたところから対角にある木に突き刺さった。


「___あっぶな!誰だ、こんな時に......!」


草陰から足音が聞こえた。だんだんと近づいてくる足音。


「ごくり___」


俺たちは、その刺客の登場に息を飲む。

やがて____


「お、女の子......?」


姿を表したのは、俺と同い年くらいの女の子だった。

紫紺の髪をツインテールにした、言ってしまえば綺麗な感じの。


「なに?あんたたち。ここに何しにきたって言うの?答えてごらんなさい」


その女の子は不敵な笑みを浮かべ、腕を組んで問うた。

その質問に、リュウビが一歩踏み出し答える。


「あたしはリュウビ!このお家の主に用があって来たの」

「リュウビ___?ハッ、そんな戯言に騙されるとでも?あの子に会わせるまでもないわ。あんたたちはあの子に会う前にここで果てる!」

「は、はぁ?もうちょっとお話をしてからでもよろしいのでは...」


そんな俺の言葉なんて聞こえもしなかったかのように、何やら魔法陣のようなものを虚空に描き、


「『扉は開かれた。汝我に力を貸さん!九尾』」


と詠唱したかと思うと、彼女の前に一匹の狐が現れた。大きさはその女の子ほどもある。

そう、ただの狐ではない。尾が九つ、いわゆるキュウビだ。


「不届き者をやって!」


すると、キュウビは凄まじい勢いで、リュウビへと突進する。

なんだなんだなんだ??なんか始まってしまったぞ!?

体に纏った青いオーラを口に溜め、今にも襲い掛からんとするキュウビに、リュウビは


「もうまだお話終わってないでしょ〜!?」


と頬を膨らませ、


雌雄一対の剣しゆういっついのけん十文字じゅうもんじ〜!!」


と、虚空から二振りの剣を出現。それを交差させ、防御を___いや、違う。攻撃だ。

その交差を解くことで、見えない空気の動きが刃となった。


思わぬ攻撃に避け遅れたキュウビは、気絶し地に落ち、白煙とともに消えた。


「ッッ!!......やっぱり、まだまだなのね.........ごめんね、九尾ちゃん。無理させちゃって」

「リュウビさん!?」

「あいや、殺してはいないよ〜!そもそも、召喚系に呼び出された使い魔はそう簡単には死なないの」

「いや、いや、え.........戦えないんじゃなかったのぉぉ!?!?」


俺とヒメが戸惑う中、たった一人で妖怪を倒してしまったリュウビに、開いた顎が塞がらない。


「戦えないよ?ちょーうんやヒミコちゃん、ましてやりょふくんの様には。でも、中級妖怪を倒すくらいはね〜?できないとだめでしょ?」


できないとだめでしょ?じゃねえよ!

普通にヒメ並みに強いんじゃないか!?


「それは無い」

「な、なんのことかな」


ヒメは時々俺の心を読むようなことがあるんだよな。



リュウビは、その子の元へ歩み寄り、へたり込む彼女に目線を合わせるように、しゃがむ。


「召喚術式って、あの子の得意技だよね?君は、あの子のお弟子さん?」


あの子?誰のことだ?

すると彼女はぷいと顔を逸らし、


「関係、無いでしょ。いいわ、さっさと行きなさいよ___あんたたちが悪い奴らかどうかは、あの子が見極めるわ」


んん、拗ねたな。

ていうかさっきから、あの子あの子って言ってるけど......今から会う人って、この子の知り合いでもあり、リュウビの知り合いでもあるってこと?

んん、わからんなぁ。とりあえず、


「大丈夫だ、安心して。俺たちは悪いやつじゃねえよ。俺もよくわかってないんだけど、どうやらここの主さんがちょっとばかしキーパーソンらしいんだ。んだから、少し話をしにきただけ」


倒れ込んでしまっている彼女に、ほいと手を差し出す。


「え.........?」

「ほら、早く起き上がって。君には、案内をしてもらうぜ!」

「ぁ、ありがと......」


と控えめに呟き、小さく手を重ねた。



◇◇◇◇



屋敷内にて。


「じゃあ改めて自己紹介から。私はシバイよ。そしてこの子が」

「.........コウメイ.........」

「よろしく」「......よろしくです......」

「おう、よろし......はぁぁぁぁぁ!?」


司馬懿!?孔明!?なんてこった!三国志演義にて、あれだけ熱い死闘を繰り広げたその二人が......三国の逸材とも呼ぶべき二人が、今ここに揃っているというのか!?

リュウビも、目を丸くし、「なるほどそう来ましたかぁ」と意味深に頷く。

 

「シバイちゃんよろしく!そしてこの子こそが、今回の件のきーぱーそんなんだよりょふくん!ね、コウメイちゃん?」

「......しらない」


おうおう、あの諸葛亮孔明の仕業ってんなら俺も納得だよ。

ちなみに、コウメイちゃんって呼んでるってことはやっぱり知り合いなの?


「またまた〜〜。コウメイちゃんのしたことは、全部お見通しだよ!もう、このお家だって探すの大変だったんだよ?ほんとおひさだね!もう10年くらい?」

「......しらない」


あのさぁ、リュウビさん。もっと色々情報をくれてからここに来ても、遅くなかったのではないでしょうか。もう頭がパンクしたよ。手遅れだよ。


んんんでも、二人には何か深いストーリーがある予感......小さい頃一緒にいて、なんらかの理由で別れざるを得なくなってしまった、みたいなことか......

戸惑いは俺だけでなくシバイにも見えた。


「ちょ、コウメイ!?知り合いなの!?誰なの?説明して」

「......しらない」


コウメイは誰にでもその態度を取るらしい。はっきり言ってめんどくさそうだ。

......もうちょっと構ってあげてもいいんじゃ無いか?

もちろんそんなものに構わず、リュウビは旧友との再会の喜びをあらわにしながら、(明らかに嫌がっている)コウメイに詰め寄る。


「知らない間にお友達なんて作っちゃって〜!あたしたちはすぐ別々になっちゃったもんね......あっはは、こんなところで会えるなんてね〜〜」

「あつい......はなれて」


もしこれがアニメだったら、目の前で会話(?)に花を咲かせる(?)女子たちを見て、俺は後頭部に大きな汗を垂らしているところだろう。

なんで、こんなにも美少女ばかり出てくるんだ。

コウメイの容姿はといえば、こうだ。無作為に下ろされた長い銀髪に、やる気のないような、特徴的な垂れ目。透き通る白眼。布一枚でできていそうな衣を羽織り、全体的に存在感が薄い。コウメイらしいといえば、らしいのか?

もうちょっと喋って、もうちょっと愛想を振りまいてみたら?可愛いのに。自信もとうよ!


一方、なんか成り行きで仲間外れみたいになってる可哀想なヒメは俺に問う。


「なあ、キミ。これが女子トークってやつなのか?」

「ああ、ヒメ、いたのか。これはね、もはや会話じゃないのよ」

「ああ、そうだよな。これは会話じゃ無いよな」


リュウビは、きっと全部知ってやがったし、あれだけ犬猿の仲と言われたシバイとコウメイが仲良くしているというよくわからん状況だし、とりあえず俺は、何も考えないことにしよう。

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