(性)奴隷からの脱出
家畜の安寧!
あの悪夢のような夜から2、3ヶ月ほど経った後・・・
成金すだれハゲ男爵の屋敷にて
俺は思っていた。案外ここでの生活は悪くないのではないのか?と。
週3回ほど成金すだれハゲ男爵に抱かれる以外は本当に悪くない。飯は美味いし労働もない、また観賞用なので非常に丁寧に取り扱われる。
「いっそ、ここで娼年として生活し続けるのも悪くないな・・・、外は危険がいっぱいだろうし、そんななろう小説みたいに何もかも上手く行くわけがない。俺は豚に買われて飼われた哀れなミニブタでいいや・・・」
そんな人としての尊厳を失ったようなセリフをぼやいた。
「だいたいなんで剣と魔法ごときで自分の筋肉の重量の数百倍もある獣に勝てると思ってるんだ?戦いというのは物量の差なのだよ。その点ここは安心安全だ。ハゲ男爵の領地は常に衛兵たちが警備しているし、この領地は周囲を険しい山々に囲まれた中に存在している。美味しい料理も暖かい寝床も綺麗な服もある。」
俺は領主の館の屋上からなんとなく遠くの農園とそこで働く農夫や農婦を眺めてこうつぶやいた。
「ふっ・・・勝った・・・」
何一つ勝ってはいないどころか人としてワンサイドゲームでオーバーキルされているような気がしたがそこはご都合主義なので一切気にしないことにした。
「ああ・・・自分の美しさが憎い・・・」
そうやって四半刻の間遠くを眺めて遊んでいると遠くの方から馬車のようなものが見えてきた。
「え?まさか、いやそんなはずはないよな〜(笑)」
俺の独り言をよそに馬車はみるみる大きくなり屋敷についた。
かつて俺がそうだったように、執事と奴隷商人は少しの間取引をしていた。
それが済むと中からは金髪緑目のエルフの美少年が現れた。
「ほう、あいつもここの男爵に買われたのか、哀れな(笑)、まああの男爵に気に入られるようにせいぜい頑張るんだな」
俺は自分がこの男爵の館唯一の男娼であることと自分の男爵からの寵愛ぶりを知っていたので特に危機感を感じることもなくそのイベントを見過ごした。
「ふっ・・・自分の美しさが憎い・・・(笑)」
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・・・・・・・・・・
しかし、この嫌な予感はどうやら当たってしまったようだ。俺は3ヶ月間一回もあの男爵に抱かれていない。はじめのうちは(ケツの)負担が減ってラッキー!くらいに思っていたのだがそれに比例して食事のグレードは日に日に下がって行った。
そして最終的な俺の食事はお湯のようなというかただのお湯である薄いスープとじゃがいも一個となった。
寝床も今は物置部屋のような部屋・・・、というかただの物置部屋で寝起きしながら日がな一日なすこともなくモヤモヤした気分を抱えながらただ生きていた。
これがいわゆる寝取られと言うのだろうか?悲しい気持ちにおっさんの膨らまない胸を膨らませながら3ヶ月は過ぎて行った。
ある日偶然いつものように屋敷の中を散歩していると屋敷の中のメイドたち(ただし若くて綺麗なわけではなく、本当に綺麗でもない中年のおばさんたちであるが)の話を耳にすることがあった。
二人のおばさんメイドの話はこうだった。
「ねえ聞いた?ご主人様ったら今度はハードSMを男娼相手に試すらしいのよ〜」
「あら、本当?いきなりどうしたのかしらね〜」
「それがお隣のドエス男爵からハードSM趣味を教え込まれてえらく気に入ってしまったらしいのよ〜」
「ふーん、そう言う理由があったのねー、あの子たちも可愛そうね、純愛かと思えば次はハードSMなんて、一番最初の餌食はやっぱりあの銀髪の子かしらねー」
「そう〜なのよ〜!しかもそのドエス男爵の一番のお気に入りのコレクションはガラス瓶と保存液に入れた男娼の目玉らしいのよ〜!」
「いやだわ〜!」
「いやだわ〜!」
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ショックで冷や汗と脈がなくなって行くのを感じた。
遠のく意識のなかでおばさんメイドたちの話が脳内にリフレインした。
こうして俺はその日の晩にこの屋敷からの脱出を決意した。
どうやらその場に崩れ落ちていたようだが話の続きによれば次のプレイは三日後の夜とのことだった。
俺の物置小屋は面から鍵がかかっていたがオンボロなので強くドアノブを回して強くドアを押せば簡単に開くようになっていた。
屋敷中のマスターキーの位置は前に屋敷を執事が案内してくれた時に確認していたし、正直言って今はまだ管理体制がかなりずさんなようだった。
俺はマスターキーを鍵室から盗み出して以前ハゲ男爵の部屋から失敬していた一枚の羊皮紙の地図を開きつつ、食料庫に向かった。そこでは水とワイン、パンとチーズや干し肉などの保存のきく食料をたんまり雑嚢に詰め込んだ。
地図によるとどうやら一番近くの町は男爵領内らしい。仕方ないから隣の領主の町まで逃げることにした。
どうやら徒歩で10日、馬なら3日程度の距離にあるようだ。
当然馬が必要だと思い、厩に向かったが俺は屋敷の外への外出を禁じられていたため知らなかった。馬は管理系統の違いから厩には執事が普段使用しているマスターキーは使用することができなかった。
それに中からは馬を飼育する専門の使用人のいびきが聞こえてきた。
また、俺自身乗馬の経験はなかった。
「都会のサラリーマンでは馬どころか、マイカーも厳しいよな・・・」
俺は独り言を言いながら厩に背を向け、次の町には歩いて行くことに決めた。雑嚢の食べ物と水は10日間は持ちそうにはなかったが、金貨はお給金がたんまりあったのでそれでなんとかなるだろうと考えた。
どんな山深い土地でも森の中でも大抵村の一つや二つはあるものだ。
そして、そういう村人や旅人には大抵親切にされるものだということは相場が決まっているとも考えていたし、そういうものだと信じきってもいた。
こうして俺は奴隷からの解放を目指して、領地を覆う山々と草原の中に分け入って行った。
虚偽の繁栄!