物語少年とデュラハン少女
Caeruleum Mundus(旧Fantasy World Project)のキャラで小説を書いてみました。
デュラハン(首を着脱可能な種族)が首を外すシーンがあるので微妙にグロ注意?です!
ぼくは"ものがたり"というものがすきだ。
じかんがあれば、"ものがたり"をよみ、"ものがたり"のせかいにひたる。
きょうもとしょかんで、"ものがたり"をよむ。
"ものがたり"には、むずかしいことばがおおくて、だれかとはなすときも、そのむずかしいことばがでてきて、いみをきかれてしまう。
れんあいしょうせつ、すいりしょうせつ、ぼうけんしょうせつまで、いろいろな"ものがたり"をよんだ。
それはまるで"ほんのむし"だった。
となりにおんなのこがすわる。
あおかみあおめで、くびになにかまいている、おんなのこ。
どんなほんをよんでいるのかはわからない。
そのおんなのこは、ぼくのほうをむくなり、いきなり。
「……むずかしいほんをよむのね」
「ものがたりだよ、これは……まもののおんなのことにんげんのおとこのこのはなし」
「ふーん……わたしのほんも……まもののほん」
ぼくがうまれるちょっとまえまで、まものとにんげんがせんそうしていたそうだ。
しかし、いせかいからきたゆうしゃが、まものと"わへい"をむすんだみたいだけど、くわしいことはしらない。
でも、きっと、ぼくがおとなになったら、このはなしは"ものがたり"になるとおもう。
そこからかいわはつづかないまま、ふたりはほんのせかいにもどった。
あれから、あのおんなのことなんどもあうようになった。
たくさんかいわをかわすようになった。
おんなのこのなまえは、レベッカ・ダークというそうだ。
でも、どうしてレベッカちゃんは、くびになにかまいてるんだろう?
きになってしまって、ぼくはあって10かいめのあるひ、こうきりだした。
「レベッカちゃんのそのくびわ、なんかかっこいいかも……」
「いや……ただのくびわよ」
「そうなの……」
それでおわってしまった。
それいらい、ぼくはとしょかんのそとでもレベッカちゃんとあうようになった。
レベッカちゃんとなかよくなっていく。
もしかしたらくびわのことは"きんき"だったかもしれないけど、それでレベッカちゃんはぼくをきらうことはなかった。
もうあうのがなんかいめなのかもわからなくなったころ、レベッカちゃんは……
「……ねえ、わたしのうち、こない?」
「え……」
「つたえたいことがあるの」
「ここじゃはなせないこと?」
「うん」
レベッカちゃんはしんこくなかおでぼくをみつめる。
でも、さいきん、レベッカちゃんとあうとどきどきする……
きっと、"こいごころ"だとおもう。たぶん、すきになっちゃったんだ……
なら、ぼくのこたえは。
「……いいよ、ぼくは、きみのはなしをきくかくごがある」
「……ありがとう」
ぼくは、レベッカちゃんにあんないされてレベッカちゃんのいえをめざす。
……でも。ここはもりのなかだ。
「……だいじょうぶなの? ここ、すごくふかいもりだよ?」
「だいじょうぶ。このみち……いやこのもりははきけんなまものはでない」
いまはレベッカちゃんのはなしをしんじるしかなかった。
そして、ついたのは、もりのなかにたつ、ぶきみなやかた。
でも、なかは、そうじがいきとどいてて、すごくきれいなやかただ。
"ものがたり"だと、くものすがたくさんはってて、かぐがぼろぼろで、おばけがでるものだから、ふあんだったけど。
レベッカちゃんのおかあさんとおとうさんは、いまはいないようだ。
やかたにあがり、レベッカちゃんのへやにあんないされる。
レベッカちゃんはしんこくそうなかおをしている。
「……こほん。おどろかないで、わたしのはなしをきいてくれる?」
「……だいじょうぶ」
そうひとこというと。
レベッカちゃんはくびわをはずす。
そこにきずがあるわけではなかった。じゃあなんで。
そうおもうと、レベッカちゃんはじぶんのくびをもちあげた。
すると、レベッカちゃんのくびは、からだからはなれた。
ふつうのひとなら、ここですごくおどろいて、にげだすところだっただろう。
でも、ぼくはふしぎとおどろかなかった。"ものがたり"でよんでて、そんざいはしってたからだ。
レベッカちゃんはデュラハンだった。
「……あれ? おどろかないの?」
「ぼくはきみのそのすがたをみておどろかなかったから……こんどはぼくのはなしをきいてくれる?」
「えっ?」
ぼくは、いをけっしていう。
「ぼく、レベッカちゃんのことがすき。きみがデュラハンだったとしても、それはかわらない」
「えっ……えっ?」
「くびがはなれるからってかんけいないよ、ぼくは"レベッカちゃん"がすきなんだから!」
ぼくはこのしゅんかん、すごくどきどきしている。
レベッカちゃんはぼくをきょぜつするかもしれない。
そうなることが、レベッカちゃんがじつはデュラハンだったことよりもこわい。
「わ……わたしなんかで……いいの?」
レベッカちゃん……ないてる?
「わたしね……きみとあうまえ、デュラハンだとしったともだちがみんなはなれていっちゃったの」
ひどいはなしだ。どうして。
「わたしはただのアンデッド……なのに! "しにがみ"だの"じごくのきし"だのみんないうの! それがこわくてくびがはずれないようにくびわをしてたの!」
だからなのか。
「でも……あなただけよ、わたしなんかをすきになってくれる"きとく"なひとは」
「ぼくは"きとく"なひとでいい、そもそもぼくもほんをよみすぎて"いしあたま"だのなんだのぼろくそにいわれてるから……デュラハンとつきあってなんだかんだいわれたっていたくもかゆくもない」
「わたしのことをデュラハンとしってもともだち……いやそれいじょうでいてくれるひとはあなたがはじめてよ……うれしい……うれしいよ……」
レベッカちゃんのからだのりょうてのうえでレベッカちゃんのくびのめからなみだがながれる。
レベッカちゃんのからだがくびをゆかにおくと、からだだけでぼくにだきつく。
すきなひとにだきつくじぶんのからだをみるきもちって……どんなきもちなんだろう?
……きょう、ぼくにすきなひとができました。
俺は昔自分で書いた本を読み返す。
確か、レベッカちゃんを好きになった話をいろいろ脚色とかして書いた、恋愛小説。
この小説はヒットし、これがきっかけで俺は作家への道を歩むと決めた。
そのレベッカちゃんは、今も、俺の恋人として隣にいる。
彼女は、俺を好きになってもしばらくは、首を外すことに抵抗を感じていたが、いつしか人前でも首を外せるようになった。
……それが成長かはさておいて。
デュラハンという種族は、デュラハンを死神とする"物語"がきっかけで、偏見を持たれていたと知った。
その偏見が解けたのは、奇しくも俺の例の小説が発売された直後の話であった……
デュラハンは身体にも意思が芽生えるそうだ。
子供のうちは身体に自我がなくほぼ首の意思の通りに動くが、成長するうちに身体にも意思が芽生え、首と身体で別々の考えを持つようになるという。
また、首と身体が繋がっているときは首の意思だけになり、身体の意思が抑圧される。
そうなると、首を外した時に身体が首の意思に反する行動を取るようになるとか。
しかし、首と身体は感覚では繋がっているので、長い間"身体の意思を抑圧しなければ"多くの場合首の意思の通りに身体は動いてくれるとか。
デュラハンとは、そんな種族らしい。
俺は、今日も小説を執筆する。
「カエルラくん、執筆は捗ってる?」
首を外し、その首を小脇に抱えた姿のレベッカちゃん。
「ああ、捗ってるよ」
「でも不思議よね、物語を読むうちに物語を書くようになっちゃうなんて」
「そうだな」
「私もカエルラくんの物語が好きよ、昔から物語は好きだから」
誰かを好きになるのに、理由はいるのだろうか?
いや、ない。それは、俺とレベッカちゃんが証明する。
相手がデュラハンでも、構わない。
わけあってレベッカさんの名字が「ダーク」になりました。
関連するページでの表記はいつか直しておきます。