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出立

お待たせしました!

残念?ながら、微グロには至らず、、

暫しお待ちを。

本日の天気は快晴。

散々願っては見たものの、天候は彼奴らの味方をしたらしい。クソ野郎。…失礼。


遠征の待ち合わせ場所は、軍の施設内にある訓練場だ。

剣士達の移動手段となる飛龍は、有事でない限り市街地への出入りを禁じられているからである。


門が見えて来た。この辺りは街の中でもアッパーミドル層が住むエリアである。

駐留軍の近くは治安が良く、ある程度の金持ちには好まれるのだ。


故に、ボロボロの服を着ている自分はとても悪目立ちしていた。

先程から侮蔑と嫌悪感に溢れた視線に、針のむしろとなっていた自分にとって、軍施設の正面門が天の恵みに感じたのは致し方あるまい。


「あの、剣士ジル様に呼ばれて伺いました、冒険者のクラウディ・ラインハルトです。」


第一印象が大切だろう。その場しのぎかもしれないが、相手をしっかりと見て、要件を告げる。

焦げ茶色の肌をした門番は、自分をジロリと一瞥すると、手元にあった紙に何事か記載し、渡してきた。


「ああ、話は聞いてる。通っていいぞ。ジル様とダスカン様はこの先左の龍舎にいらっしゃる。くれぐれも失礼がないようにな。」


案外普通の対応で、意外に思った。

500メートルほど歩くと、前に見知った人影が見えた。

時を同じくして、相手も此方に気づいた様だ。手を大きく振りながら、呼びかけられた。


「やぁ、待ってたよクラウディくん!

こっちだ!」


待たせるのも申し訳ないので、少し早足で駆け寄る。


「ジル様、おはようございます。すみません、待たせてしまいましたか?」


笑顔で立っていた彼は、青と白のコートを着用しており、金髪にとても映えていた。

俺は存在自体が眩しい御仁に、人生で初めて会った。


「あぁいや、そんな事はないよ!

むしろ少し早目に来てくれて助かるよ。

あと、僕の事はジル、で構わない。

今回は、此方が君に仕事を依頼した形だしね。」


とんでもない提案を朝一でされる。

速攻で却下したいが、相手の意見を全て無下にするのは、立場上求められる態度ではあるまい。


「では、、ジル、さんでも?流石に偉大な剣士殿の御名前を敬称無しでお呼びするのは気が引けますので、、。」


お互いの折衷案として、意見を述べる。

もし、自分が敬称を省いて彼の名を呼ぶところを不特定多数の人々に聞かれてしまうと、剣士の信奉者が黙ってはいないであろう事が想像に難くない。


「うーん。まぁ、確かに急には、ね。

よし!それで手を打とう!

ではクラウディくん、今日は宜しく。」


「はい、宜しくお願いします、ジルさん。」


挨拶を済ませたあと、目の前にあった龍舎に案内される。


木造建ての建物の中には、床に藁が敷き詰められており、ふわふわとした感触が足の裏に伝わって来た。

また、建物は二階程の高さで吹き抜けの構造となっていた。


光を多く取り込めるように、との配慮か、四方に設置された木製の引き戸が全て開けられており、舎内でも風を感じられた。


なにより、目を引いたのは、飛龍である。今まで、街の上空を飛ぶ姿しか目にした事が無かったが故に、その存在感は圧巻の一言に尽きる。


見るからに頑強な鱗に覆われたその巨大な体躯は、どんな攻撃を受けようとも跳ね返してしまう、そんな生命力を感じさせた。


何よりもあの瞳!


黒色の体色に似合わず、瞳の色は澄んだ青であった。


胡乱げに一瞥された、その一瞬しか、はっきりと見る事が出来なかったが、その瞳は、俺の脳裏に焼き付いていた。


「さぁ、こっちだ。勿論、君達には珍しいのも分かるけど、これから乗るんだからね。嫌になるほど沢山見れるさ!」


確かにそうだ。自分は頷くと、素直にジルに従った。


補足:

真のお金持ちであるアッパークラス(主に貴族)は、アッパークラスのみが集まった地域に暮らしています。


読んでいただき、ありがとうございます(*^▽^*)

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