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異世界の半分はお約束でできている  作者: 倉内義人
第一章
3/42

#003 邂逅パターンのいろいろ

2016年4月11日

2016年10月21日




 僕は声をかけられた瞬間。四パターンの思考を巡らせた。


 僕はこう見えても、ネット小説をかなり読んでいるので、こういうお約束は知り尽くしている。



 その一、魔物に襲われるパターン。


 ぐるるるーとか言って狼やゴブリン的な魔物が襲い掛かってくるのだ。


 主人公は命からがら逃げだして、何とか人里にたどり着くわけだ。



 その二、盗賊に襲われるパターン。


 これはやばい。


 前世で格闘技とかやってない限りは完全に死亡フラグの筆頭だ。


 運が良ければ誰かが助けてくれるとか、殴ってみたら相手の頭が『ぱっかーん』といくとか、そういうパターンもあるが、正直期待できないだろう。



 その三、エルフのお姉さんパターン


 小説ではあまりにも都合がよすぎると思っていたものだが、当事者になってみると、ご都合主義でもいいからエルフのお姉さんに来て欲しい。


 でもなー。第一声の時点で声がもうおっさんだもの。


 希望は薄い。


 せめて、このおっさんが盗賊なら、そこにお姉さんが助けに来るパターンに期待を持てるが……。



 僕は一縷の望みにかけて思い切って振り向く。


「こ、こんにちは……」


「お前、こんなところで何しとる?」


 おじさんてば、さっきも同じこと言ってたじゃないですかやだー。


 厳ついおっさんだった。


 盗賊の可能性十分。



「おい!聞いてるんか?」


「はい!聞いてます!」


 僕は記憶喪失みたいで、


 ここがどこかもよくわからず、


 なんだかわからないうちに白い光に包まれ、


 気付いたら森の中、


 手に持っていたのはこの棒っきれだけで。


 というようなことをしどろもどろに捲し立てた。



「そうか、そうか。大変ったんだな」


 話しが終わる頃になると、おっさんは目頭を押さえていた。


 僕が言うのもなんだが、人が良すぎないだろうか?


 持ち物が棒っきれの部分が一番強く琴線に触れたらしく、その時、少しだけ神様に感謝した。



 さて、このパターンは知っている。



 その四、親切なおっさんパターンだ。


 主人公が異世界に転生して右往左往していると、厳ついおっさんに声をかけられる。


 それがとってもいいおっさんで、地元の有力者だったりして、かわいい娘さんがいて、美人の奥さんがいる。



 おいおい、おっさん。


 そんないかつい顔して美人の奥さんなんてやるなー。なんていいながら、しばらくお世話になるのだ。



 出来れば、僕もそんな感じで行きたいが、出来るだろうか。


 前世の記憶はほとんどないが、コミュ力が低かったことは覚えている。


 なぜだ。


 もっと、楽しかった記憶とかを残しておいて欲しい。



「それで、おっ……おじさん。人里に出たいんですけど、どっちに行ったら?」


「いや、お前さん武器もないんだろ?とりあえずついて来いや」


 おっさんは、狩りのついでに森の奥の鉱山で鉱石を採掘していくらしいので、僕も同行することにする。


 森で一晩明かして、明日の朝に森を発つ計画らしい。



「あ、やっぱり鍛冶とかするんです?」


 鉱石の採掘と聞いて、ピンと来たので聞いてみると、おっさんはニヤリと笑う。


「おうよ!よくわかってんじゃねーか」


 わからいでか。あんた見るからにドワーフじゃないか。



「やっぱりドワーフは鍛冶してなんぼですね」


 僕がうんうんと頷くと、対しておっさんは首を傾げた。


「あん?ドワーフ?俺は『ドルフ』ってんだが、へんなあだ名は勘弁だぜ」


 ふむ?ドワーフはいないらしい。


「あの、エルフさんって知り合いにいますか?」


「んー?聞かねえ名だな。知り合いか?」


「いえ、なんとなく浮かんだ名前だったので……」


 まさかのエルフもいないだと!?


 こんなところでテンプレートが崩れるなんて思いもしなかった!


 いや、まだ希望を捨てるには早い。


 知られてないだけで、隠れ里に住んでるパターンもあるはず。


 異世界に来たからにはエルフに会うのと、猫耳もふもふだけは必ずやって見せる。



『ピコン』


「……メニュー」


「なんかいったか?……って何泣いてんだお前ぇ!?」


「なんでもありません。ありがとうドルフさん……」




【メッセージ】■□■□■□■□■□■□■□


 居るぞ、エルフと猫耳もふもふ獣人。


 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□



 ドルフさんが、「いいってことよ」とかいいながら頬を染めているが、知ったことではない。


 この世界に来たことを、初めて喜んだ瞬間だった。

2016年4月11日

2016年10月21日:表現、誤字など修正しました

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