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その6 オリジナリティについて ①

今回の考察は3分割されています。

 今回は『オリジナリティ』について。

 前回、私はテンプレが『潜在的な二次創作』である以上、『原作』を超えることはできない――なんて偉そうなことをほざいたわけだ。

 よって、今回はその逆。

 二番煎じと呼ばれないような『オリジナリティ』溢れる作品ってなんなのよ、という疑問について考えてみることにした。


 いったいどこまでが『二番煎じ』で、どこからが『オリジナル』と呼べるものか。小説全体において、その議論をすべき部分と、するべきでない部分が存在する。

 まずはそこの線引きをしておこう。

 でないと、「主人公は日本人」という時点で、あらゆる小説が『二番煎じ』になってしまうからだ。


 今回も色々と例を出してみよう。

 果たしてその点が『オリジナリティ』を問うべき点なのかどうか、皆さまも考えてみて欲しい。


1. 炎の魔法名と言えば『ファイヤーボール』

2. 魔王はかわいい女の子

3. ヒロインとの初対面は、魔物(または盗賊など)に襲われるところを助けるシーン

4. レベル、HP、MPといったステータスの概念

5. 高飛車お嬢様の髪型と言えば『金髪ドリル』

6. 氷属性最強魔法の名前は『アブソリュートゼロ』

7. ギルドで初めて受けた仕事は『薬草摘み』→『ゴブリン討伐』

8. 主人公の武器は『創造魔法で創り出した日本刀(かつ高性能)』

9.  女騎士「くっ……殺せ!!」

10. ステータスの高さがG~EXの順に表示される


 では、順に考えてみよう。

 1番は、確かにあまりにありふれている名前だが……これは『二番煎じ』を通り越して『定番』『お約束』と呼べる領域だ。別にファイヤーボールと言って「○○のパクリだろ!」なんて感想も出ないだろうし。

 2番も特に問題なし。今では女の魔王もそう珍しくはない(自作品(うち)のフルールちゃんは二番煎じなんかじゃありませんっ!!)。

 3番もまたありふれたシーンだが、危険と隣り合わせの異世界ファンタジーにおいて、こういう状況での出会いはいくらでも転がっている。

 4番もまた、定番と言えるだろう。ありとあらゆるゲーム世界において、なくてはならない概念だ。

 5番は……これは、『様式美(ようしきび)』というものだ。ハリセンを持ったらツッコミ、こたつにはみかん、クリスマスには○ンタッキーのチキンと同じくらいに(異論は認めんぞ!)。



 ここまでは、『オリジナリティ』云々の話に当てはめる必要はない、と私は判断した。

 私としては、ちょうどここをボーダーラインとして設定している。



 6番。これは『二番煎じ』だろう。某大作RPGシリーズ(あれにはゼロは付いてなかったが)にはじまり、幾多の厨二病全開な作品で使われていそうな名前である。自分でも書いててちょっと恥ずかしかった。

 7番。これも定番……と言いたいところだが、依頼内容はそのまま物語の構成に繋がっている。つまり「同じ流れの物語になる」以上、これも『二番煎じ』だ。依頼なら他にいくらでもあるだろうに。

 8番。間違いなく『二番煎じ』だ。もうアンタらどれだけ日本刀好きなんだよと言いたくなるくらいに、俺tueee系の主人公はこの設定ばかりだ。絶対折れない魔法、火とか雷の属性付与(エンチャント)設定が付いていればもう完璧。

 9番。これを『二番煎じ』と言わずに何と言うの? でも、嫌いじゃない。

 10番。『二番煎じ』。ご存知の方も多いだろうが、『腕力・EX』といった表現は、某聖杯戦争の設定が元ネタである(それより前に使われていたのかもしれないが……)。


 違いとしては、大半の人間が「ああ、分かる分かる」と答えるような内容を『定番』とし、読者の一部が「それ知ってる。○○とかに出てきた(出てきそうな)よね」と答えそうな内容を『二番煎じ』とした。

 この区切りはあくまで私の主観なので、異論があればぜひ仰ってほしい(2と5以外で)。





 では、本題に入ろう。

 『オリジナリティ』として評価される対象というのは、一言で言ってしまえば『発想』だ。

 他の誰もが思いつかないような設定や描写は、その物語の完成度が高いほどに読者の目を釘付けにするものだ。

 そういう意味では、9番を初めて世に出した作家(なのかどうかは知らないが)は、凄まじい『オリジナリティ』の持ち主だったと言えるだろう。


 突拍子もない設定が『オリジナリティ』なのではない。

 いかに読者の心に強く、長く残る内容であるのかが『オリジナリティ』の見せ所だ。

 ではここで、あなたの作品の『オリジナル』度を測るために、様々な角度なら『オリジナリティ』を考察してみよう。





 まずは『オリジナリティあるキャラ』について。

 個性的な性格、変わった服装、『オリジナリティ』を表現できる部分は多々あるが……最も強烈に表現できる部分といえば、『台詞(セリフ)』だろう。

 台詞(セリフ)には、そのキャラの人となりが表れる。

 過去の偉人や有名人が『名言』というものを残すように、台詞ひとつでそのキャラを語ることだってできるのだ。


 ここで一度、ネットの検索エンジンで『名言』と入力していただきたい。

 実在の人物、創作のキャラ問わず、名言集と呼べるものが出るわ出るわ。その一言一言が、その人がどういう人物なのかをありありと語ってくれている。

 例えば、こちら。私も非常に好きな言葉である。


「君が次に叩く1回で、壁は打ち破れるかもしれないんだ!」


 『熱血』の代名詞とも言えるプロテニスプレイヤー、松岡修造氏の熱い(、、)お言葉だ。直接お会いしたことはないが、松岡氏がどんな人物なのかがこの一言だけで伝わってくる気がする。

 文字を操る小説において、このような『名言』を残せるキャラを作ることは、『オリジナリティ』のひとつの極致(きょくち)と言ってもいいだろう。

 これまでどんな経験をして、どんなことを考えて、どんな生き方をしてきたのか――『名言』はそれを如実に物語ってくれる。




 

 コツ、というほどのものではないが……ここで一度、自作品のキャラに心理テストをしてみるのはどうだろう。

 テスト内容は4つ。



A. 目の前に、「試験に合格するためにすごく頑張ったのに、不合格になって落ち込んだ友人」がいるとする。あなたはその友人に何と声をかけますか?


B. とある貴族から「世の中は金だよ。地位も名誉も、人の心さえも、すべて金で買える」と言われました。何と答えますか? なお、反論ではなく同意しても構いません。


C. いきなり神様が現れて、「今異世界がピンチなのです。助けられるのはあなたしかいません」と言われた。さあ、何と答えますか?


D. 強敵が現れて大ピンチ。仲間を逃がすために戦うことを決意するも、まず勝てる見込みはありません。死ぬ覚悟で挑む前に、あなたは仲間に何と声をかけますか?



 作品のキャラ全員でなくともいいが、主要人物(メインキャラクター)にはひと通り受けさせてみてほしい。

 では一例として、私の拙作“AL:Clear”より、ヒロインの少女である楯無鈴風(たてなしすずか)さんに答えてもらおう。



A. 「辛いよね、悔しいよね、苦しいよね……よーし、今回は特別にあたしの胸を貸してあげよう。存分にお泣きなさい! それで、涙が枯れるまで泣いたら、また頑張ろう? あなたの道は、まだまだ先に続いてる。立ち止まってる暇なんてないんだから」


B. 「へーお金ってすごいんだねー。……でも、どれだけ大金積まれようがあたしはあんたみたいなヤツを好きになることはないけどね。断言する」


C. 「えっ!? そんないきなり過ぎ……ぐぬぬ、でも困っている人がいるんだし、ここで逃げたら女が(すた)るってもんだし……えーと、あたしの幼馴染に報連相(ほうれんそう)(報告・連絡・相談)してからでも、いいっすか?」


D. 「なーに、これくらい平気へっちゃらだよ! なんせあたしには最後の切り札――愛と勇気と友情パワーがあるんだからね。この力がある限り、あたしは絶対に負けないよ」



 おそらく拙作を読んでいない方でも、鈴風という少女がどんな性格のキャラなのかは大まかにご理解できたのではないだろうか。

 この先、彼女が『名言』と呼べるほどの叫びをしてくれるかどうかは私も知る由はないが、私は胸を張って、この子を有一無二の『オリジナル』だと言える。





 ここで面白いのが、おそらく鈴風に近いようなキャラが登場する作品は数多あるだろうが、それでも「絶対に台詞が被らない」という点だ。

 ちなみにDの質問――これは某聖杯戦争のとあるシーンをそのまま切り取って作った質問だ。ちなみにこの作品内で、実際のキャラの台詞が、


「――別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?」


 である。

 これは、台詞そのものがカッコいいのではない。

 そのキャラが「勝てないと分かっている」「仲間(作品内では主人(マスター))に弱い所を見せるつもりがない(、、、、、、、、、)」「相性が悪かろうが、立ち向かわず逃げるなど恥」といった複雑な感情を織り交ぜつつ(実際の作者の意図はまた違うのもしれないが)、その上でこんな憎まれ口を叩くことができる、このキャラの強い精神性に痺れたのだ。

 だから、仮に他作品のキャラが同じ台詞を使ったとしても一切心は動かないし、格好いいとも思えない。


 どんな人にも自分だけの言葉(、、、、、、、)というものが必ずある。

 物語の進行に応じて、キャラに決まった台詞を喋らせている(、、、、、、)限り、永久にたどり着けないのが『オリジナリティあるキャラ』だ。

 その2でもあったように、『テンプレ』においてキャラの内面に深く切り込まないと発生する弊害はこんなところにも存在したわけだ。

 そのキャラがどんなに珍しい戦い方をしようと、変わった出で立ちをしていようと、考え方や言動に特徴が無ければ、それは没個性なのである。


 こと『テンプレ』小説においては、名前が違うだけでまったく同じ設定の高校生なりお姫様なり出てくるものだ。

 だが同じようなキャラでも、これまでどんな人生を送ってきて、どんな考え方をしていて、確固たる『自分』を持っているキャラであれば、名言とまでは行かないものの、印象に強く残るような台詞は自然と発生してくることだろう。


読んでいただいた作者さん、お手すきな時にでも感想欄で自キャラの心理テストの回答を聞かせてもらえると嬉しいです。


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