9話 決断
「団長が、そんなことを・・・」
ウェストは、聞かされた真実に頭を抱えた。
「あたし、団長と話し合うつもりなの。」
「そうだな。とりあえず、これは俺たちだけの問題じゃない。中にいる皆を起こそう」
「うん!」
2人は立ちあがり、中に入ろうとした。
そのとき、背後から複数の足音が聞こえた。
「事を穏便に済ませたい俺の気持ちを、わかってくれるよな。」
それは紛れもなく団長の声だった。
「団長っ・・・!」
「・・・ヴァイルを引き連れてきたのか」
ウェストが睨みつけた先、団長の背後には5匹のおぞましい姿をした獣、ヴァイルが唸っていた。
全身緑に染まった毛は逆立ち、チーターと同じ体格をしている。
「ヴォォ・・・ヴォォ・・・」
その10の赤い瞳は、ミアノとウェストを捉えていた。
牙を剥き出して、飢えに満ちた目をしている。
それに臆さず、ミアノは立ち向かった。
「団長、話したいことが――― 」
「まさかお前が見ていたとはな。まあ、いいだろう」
団長は見慣れない鞭を手にしていた。
「ミアノ、お前に選択肢をやろう。俺についてくなら、仲間がこいつらの餌になることを止めてやる。断れば、どうなるかわかるな?」
「何であたしだけなの?仲間も一緒に・・・」
「お前は俺と同じく、動物を操るのに長けているから連れて行く。他の奴らは使い物にならん。」
「もしかして、ヴァイルを主体としたサーカス団にするつもりなの?」
「それじゃあ、俺たちの今までの努力は・・・」
「そうだな、これからはミアノと二人・・・いや、2人と5匹でパルフェ団としてサーカスをしていこうと思っている。アッハッハ」
団長は高らかに笑った。
ウェストは悔しさのあまり、拳を固く握った。
だが、ウェストになす術はなかった。
「あたしは嫌よ。これからも皆と一緒にサーカスを続けたい。ヴァイルなんて必要ないわ!」
「そうか、そんなに拒むか。それなら・・・」
バシンッ
鞭を打つと、遠くから2匹のヴァイルが駆けてきた。
その背には人が乗っていた。
どちらも縄で縛られ、口にはガムテープが貼られている。
「あ、あれはミアノの・・・」
「母さん、父さんっ!!」
ミアノの呼びかけに反応しない2人。
どうやら気絶しているようだ。
「拒むなら、この2人もこいつらの餌にするぞ!さあ、早く選べ!」
声を荒げ、地面に鞭を打った。
その音に、ヴァイルはみな歩みを一歩進めた。
こんな団長に、何を言っても無駄だと悟ったミアノ。
「・・・家族が、仲間が犠牲になるなら、あたしはついていく」
「ミアノ、ダメだっ!」
団長のもとに行こうとするミアノの腕をつかんだ。
「・・・止めないで、ウェスト」
そして、ウェストに小声で囁いた。
「また皆でショーができる日が来るように、あたし頑張るから。」
「ミアノ・・・」
ウェストの手をつかみ、ゆっくりとそれをほどいた。
「良い決断だ。ウェスト、お前は中にいる奴らを全員起こして荷物をまとめさせろ。ミアノ以外全員解雇する」
「くそっ・・・」
解雇宣告は伝わり、みな団長に抗議しようと外に出た。
だがヴァイルを見た途端、血の気が引いたのを感じた。
抗議ができぬまま、皆は強制的にパルフェ団から去っていった。




