7話 約束された未来
「あのときは充実していて、本当に楽しかった・・・」
それは、3年前のことだった。
ショーを終えたパルフェ団の団員たちは、木製の丸テーブルを囲み、木樽に腰をおろした。
テーブルには、ビールやらアルコール類の入った瓶がズラリと並んでいる。
「それじゃあ、カンパーイ!」
酒の入ったコップを交わすと、皆それを飲み干した。
ミアノは酒が苦手だったので、代わりにオレンジジュースを飲んでいた。
「今日も客が少なかったな。」
「そうだね。でも、いつかきっとたくさんの客が来てくれるわ」
「俺たちは毎日厳しい練習をこなしているんだ。この努力が実を結ぶ時が来るさ。」
「そーだそーだ!」
団員は、象や馬を使った動物曲芸を得意としたミアノ、空中曲芸専門のウェストとアイラ、道化芸担当のアスパル、マルコ、カスターの6人。
団長はミアノと共に、動物曲芸を担当している。
酔いも回り、テーブルに顔を突っ伏して寝る人が出る中、アイラはあることに気がついた。
「ありぇ? だんちょうらんは~?」
いつもなら団員と一緒に酒を酌み交わす団長が、この場にいなかった。
口は回っていないが、言いたいことがわかったミアノ。
「あたし、探してくるわ」
「おれぇが、いぐからずわってなさーい!」
アスパルは立ちあがったものの、足をふらつかせ、すぐに倒れた。
ベロンベロンに酔ったアスパルが探しに行ったら、どうなることかわからない。
外で寝られでもしたら迷惑だ。
「まったく・・・」
倒れたアスパルは、そのまま眠ってしまった。
ミアノは毛布を持ってきて、アスパルに掛けてあげた。
「俺が行くよ?」
ミアノを心配したウェストが声をかける。
だが、ミアノは断った。
「大丈夫だよ、ありがとう」
そして裏口に向かい、下ろされた幕をくぐって、ミアノは街にでた。
外は暗く、道の両端に並ぶ街灯が、コンクリートで整備された道を照らしていた。
午前1時、この時間に起きている人は少ないだろう。
そのせいか、この道を歩いている人はミアノだけだった。
この街には酒場があったため、そこに向かうことにした。
もしかしたら一人で酒を飲んでいるのではないか、そう思っていたミアノの推測は外れた。
「そんな条件は聞いてないっ!!」
酒場に向かう途中で、団長の荒げた声が聞こえたからだ。
どこにいるんだろう?と思い、辺りを見回す。
だが、両脇には店じまいした店や家が建ち並んでいて、姿は見えない。
「どこにいるんだろう」
歩みを進めると、街の入口に2人の姿があった。
「お前は富と名声を手に入れたくはないのか。嫌なら断っても構わないが」
深緑のローブを身に纏った男が、団長と話していた。
何の話をしているのか気になり、ミアノは家と家の隙間に身を隠した。
「なんたってヴァイルは人間にとって恐怖でしかないのだからな。それが曲芸をやってみろ。面白いことになるぞ。お前らはヴァイルを従わせるサーカス団として、有名になる。評判も上がり、儲かることも間違いないだろう。未来は約束されるのだ。」
「確かにそうだが・・・」
この会話に、ミアノは身体を震わした。
『ヴァイルを・・・・従わせるサーカス団・・・・』
ヴァイルは人を喰うモンスターであり、街や村の外をうろついている。
実際、ウェストの家族はヴァイルに喰われ殺されたと聞いた。
「さあ、どうする?」
男は団長に決断を求めた。
「・・・・了承した。」
少し躊躇った末、団長はそれを受け入れた。
『そんなの、絶対に嘘よ・・・・』
今の話を聞いて、怖くなったミアノは隙間を抜け出し、震える身体を抑えながら、パルフェ団のテントに向かって走り出した。




