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最終話 君のためにできること

密かな決意を胸に、葬式に出た。

どこからもすすり泣きが聞こえる。

黒縁に飾られた和人の微笑む写真に、改めて現実を突き付けられると、ふいと顔を背けた。

未だ信じたくないのに、愛する彼はもう亡くなったのだと思わざるを得なかった。

親戚や会社の人、友達などが多くの方が来て、家族にお悔やみを申していた。

皆々が焼香を上げる姿を見れず、俯いたまま時間は流れていく。

今顔を上げれば、かろうじて成り立っているものがすべて崩れる気がした。

ぐっと拳を握ると、心を落ち着かせるように息を吸って、ゆっくりと吐いた。

焼香を上げる列には、垢川の姿もあった。



一通り終わり夜も更けた頃、渚沙は一人棺の中で眠る和人を見つめていた。

そっと手を伸ばして顔に触れると、ひんやりと冷たかった。

同時に心が深い闇に沈みこむ感覚に陥った。


「起きてよ、和人」


返事はなく、ただ安らかに永久の眠りについている。

今にも目を覚ましそうな優しい微笑みに、言葉をかけずにはいられなかった。

レオンを助けたときみたいに和人に手をかざした。


「リキュアレクション」


もちろん、魔法なんて使えるはずもなくそれは独り言に終わった。

死者蘇生の魔法があれば、宝玉を持っていれば、和人は生き返ったかもしれないという考えが頭を過った。


「あなたが、渚沙ちゃん?」


コツコツと足音が聞こえ、一瞬だけ止まる。

背後から聞こえた女の人の声に、ゆっくりと振り返った。

ハンカチで涙を拭う垢川が近づいてくる。


「垢川、さん」


こんなときでも、敵意を向けるくらいの元気があったのかと内心驚きながらも、目を細める。

目の前にいる人には、嫌悪感しか感じなかった。

偽りとわかっていても、あの真実の湖で見た光景が浮かんで、それを拭うことができないでいた。

もちろん、和人はこの人に何の好意も持っていないことはわかっているけれど。


「あなた、強いのね」


少し身構える渚沙の前に来ると、思いがけない行動をした。


「……ふぇ?」


何が起こったのか理解できず、間抜けな声が出た。

垢川が渚沙を抱擁したのだ。


「思いきり、泣けばいいの」


意外にも優しい手つきで背中を擦る。

垢川にとっては憎い存在であろう渚沙を、慰めている。

その心境はわからないけれど、渚沙の決意を揺るがすには充分な行為であった。

和人と笑顔でバイバイするんだという、決意を。


「……っく」


垢川の背中に手を回し、ぎゅっと服を握る。

我慢するにも、とっくに限界を迎えていた。

力が足に入らず、膝を折ると垢川はそれに合わせて屈んだ。


「一番つらいあなたが、我慢なんてしちゃダメ。無理した笑顔なんて、誰だって嬉しくないわ」

「……っく……か、ずとに、会いたい、よ」


途切れ途切れに紡ぐ言葉に、垢川は相槌を打つ。

垢川は垢川なりに、自分が和人のためにできることを考え、それを行動に移したのだ。

ポーチから新しいハンカチを取りだし、渚沙に渡す。

それを受け取ると、涙やら鼻水やらを拭き取る。

が、それらは際限なくあふれ、ハンカチでは足りなかった。


「そうよね。きっと夢で会えるわ。彼は本当に、あなたを愛していたから」

「……っ、いま、会いたい……」


延々に泣き続ける渚沙を、夜が明けるまで慰め続けた。

垢川の胸を借りて、思いきり泣いた渚沙であった。
















あれから2年が経った今、渚沙は部屋にいた。

和人からもらった『みみ』のキーホルダーを片手に、頬杖をつきながら考え事をしていた。

和人の墓には頻繁に行っていた。

多くて、一日に三回も足を運ぶほどだ。

掃除をし、和人の好きなお菓子を供え物としてあげ、線香を上げる。

その日にあった出来事や思ったことをすべて彼に話す。

毎日欠かさず行っているゆえ、和人に重い女だと思われてるかなと自嘲する。


同じように月に一回、彼の墓参りに来る男性がいた。

彼は和人の上司で、本当に仕事のできる奴だったと、渚沙の知らない和人の一面を教えてくれた。

そしてある日、連絡先を教えてくれた。

それから数ヶ月して、向こうから連絡が来たときは、優しい気遣いだけでなく、渚沙に対する想いをも綴った告白の内容だった。

もちろん、渚沙は丁寧に断った。

彼女は、死後もなお和人のことを愛していたから。


その出来事は、和人には告げなかった。

彼の言う幸せの意味を、なんとなくわかっていたから。

他の人と幸せになってということ。

渚沙はそれを破ってしまった。


ツーショットで撮った写真をテーブルに置き、ずっと眺めている。

和人のためにできることは何か、考えていた。

笑顔で別れることだったのか、それとも和人の上司からの告白を受けることだったのか。

けれど、恋しくて会いたい気持ちが消えず、それは熱を増すように膨大していく。

自分なりに遺影を見て、現実を受け入れたつもりだった。

それでも、和人に会えるんじゃないかと思ってしまう。

最後の逢瀬を思い出すと、心が痛んでならなかった。


「会いたいよ」


レグザムに行けば会える手段が見つかる気がした。

リーナやウィンリウスさえ知らない方法があるんじゃないかとも考える。

手紙にもあったように、和人は私の幸せを願ってると言っていた。

私の幸せは、和人なしに築けない。

それなら自分で掴んでみせる。

和人を、存在しない愛する人を取り戻してみせる。


死後の世界レグザムで体験した出来事は、この世界で常人としての考えを捨て去るには充分なものだった。

死した人をこの世に取り戻すと心に決めた渚沙の表情は、どこか晴れていた。

立ち上がると、すぐさま事故に遭った交差点に向かった。


大切な人との幸せを掴むために。





最後まで読んでいただき、ありがとうございました(*´∇`*)

いかがでしたでしょうか。

このお話を一小説として好きになっていただけたら嬉しいです(//∇//)


まだまだ未熟者ですが、これからも作品を書き続けていきますので、暇潰しにでも読んでいただけたら幸いです。

本当に、ありがとうございました(*^^*)


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