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34話 菓子の町 メルポル

「すっげーイイ匂いがする!」


メルポルはお菓子の町として有名である。

甘い香り、香ばしい香り、その香りを嗅ぐだけでお腹が鳴るような菓子の匂いに包まれている。

それを楽しむように、鼻で呼吸するレオン。

面倒くさいということで、狼語(?)を使うのをやめたらしい。

幸い、日が沈んだメルポルでは人通りがかなり少ない。

点在する街灯と、軒並みの店から漏れる光が町を照らしていた。


「ねぇ、お菓子食べようよ!」

「おっ!俺も賛成だぞ」


アリシェが提案するも、フリードは見事に無視した。

前を向き歩いてはいるが、心は此処に在らずといった状態であるみたいだ。


「フリード、聞いてる?」


袖を引っ張ると、ようやく気づいたらしい。

アリシェに目をやり、「何だ」と聞いた。


「だーかーらー!お腹減ったからお菓子食べよー!」

「俺も腹減ったぞ」

「……ああ、そうしよう」


すると、アリシェは目を輝かせながら駆け出した。


「どの店にするか探してくる!」

「俺も行く!」


レオンもアリシェの後を追いかけていった。


「はぁ……」


フリードのため息は空に消えていく。

宿を探さなくてはと思いつつも、悩みの種は増えていた。

それは天神界とレオンの関係である。

天神界を知る者は限られている。

クアトスは例外だが、あとは例の条件を満たすごく少数の人または神しか知らない。

そして、クアトスはその存在しか知らないが、レオンはそうではなさそうだった。

そして、『ヘルバーストフレイガ』を使える「あの人」の存在。

天神界なら、それを使える人がいるだろう。

もしそうだとしたら、レオンは何者だろうか。


ガッシャーン


そのとき、窓ガラスが割れる音によって思考は中断された。


「ふん!それならこっちにも考えがある!楽しみにしとけ!」


数メートル先の店から出てきたのは、いかにも柄の悪い小太りの男だった。

黒いスーツを身に纏い、声を荒げながら不機嫌きわまりないといった様子であった。

だが、背後についているボディガードらしき人が二人店から出てくると、その態度は急変した。

ズボンのポケットからくしゃくしゃの白い封筒を取りだし、それをポストに突っ込んだ。

妖しい笑みを浮かべると、大股で歩きながら、町の奥へと消えていった。


厄介ごとが苦手なフリードは、何事もなかったかのようにその店を通り過ぎ、アリシェたちを探しに行こうとした。


「何アイツ!最低っ!」


それは窓ガラスが割れた店から聞こえた、聞き慣れた声。

フリードは、再度ため息をついた。














「大したことはない。ガラスを割られたのは初めてだけどね」


この店『ル・パルーゼ』のオーナー兼店長兼パティシエを務めるのは、好青年のティル。

その母であるミゼールは、微笑みながらガラスの破片を拾っている。


「何回も来てるのよ」

「そうなのか!」

「執拗な男は嫌われるぞーっ!」


柄の悪い男が出ていった方に向かって、あっかんべーと舌を出しながら叫ぶアリシェ。

その扉から、フリードが入ってきた。

しかめっ面をしながら。


「あ、フリードじゃん」


アリシェはレオンと共に近寄った。

アリシェを睨みながら、フリードはティルに白い封筒を渡した。


「この人は友達かい?……これは?」

「一緒に旅をしている仲間だよ」

「太った男がポストに入れていた。内容は知らん」


仲間という言葉にフリードは、一瞬だけ反応を見せたが、誰も気づくことはなかった。

そして、厄介ごとを引き込むなとまた睨んだ。

そんなことは露ほども知らず、ニカッと笑って見せるとミゼールもつられて笑う。


「あいつが?」


ティルは封を切り、中身の手紙を取り出した。

筆で書かれた汚い文字を目で追う。

そして、目を大きく見開いた。


「どうしたの?」


ミゼールはガラスの破片をちりとりに入れると、立ち上がる。

覗き込んで、その手紙を読んだ。


「……メリル……」


途端に力を無くしたのか、膝を折って床に崩れ落ちた。

手が震えている。


「……ミゼールさん?」


アリシェは屈んで、ミゼールの背中を優しく擦った。

手紙を捨てるように放って、すぐに店を出て行ったティル。

フリードは手紙を拾い、読み上げた。


『妹を返して欲しくば、明日のコンテストでは俺らを勝たせろ

 辞退すれば殺す』


「……ど、どういうこと?」


アリシェはこの事態を理解しようと、フリードを見つめた。

ミゼールは肩を震わしたまま、涙を流していた。


「俺、ティルを探してくる!」


レオンも店を出て行く。

冷たい夜風が、割れた窓の穴を通って店内に吹く。

一人冷静なフリードはこの状況の打開策を得るために、ミゼールに問う。


「……この事態に陥った理由を話してくれ」



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