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27話 秘密は隠すもの

泣き疲れたアリシェは、レオンの背に乗って空を仰いだ。

照りつける太陽が、とても眩しく、そして暑い。


「このまま真っ直ぐでいいの?」

「ああ、向こうらへんに、かすかな宝玉の力を感じるぞ。」


レオンは顎でぷいっと、遠くを指した。


「それじゃあ、ラスカノンか?」


フリードは問うが、レオンはそれを知らない。


「何だそれ。食べ物か?」


聞いたことのない未知のものにレオンが目を輝かせると、アリシェもそれに乗じた。


「え?食べ物っ!?あたしフルーツが食べたいっ!」


先程、エルフェルン村で米と水を戴いたばかりだった。

だがこの二人は、食べ足りないらしい。


「・・・はぁ。ラスカノンは都市の名前だ。音楽都市ラスカノン。」

「なーんだ。」

「期待させんなよーフリードぉ。」


アリシェとレオンは、返ってきた答えに落胆した。

勝手に期待を膨らませたのはお前らだろ、と突っ込みを入れたがったがそこは我慢。

それより頭に浮かぶ様々な疑問について、ゆっくり考えたかった。


「レオンって記憶喪失なんだよね。どんなとこに住んでたんだろうね。」

「それが全然思い出せないんだよなー。生前の世界のことも!」


あのとき、レオンが言っていた"あの人"の存在。

それは恐ろしい魔法、"ヘルバーストフレイガ"を使えたらしい。

その人は、今もこのレグザムに存在するのだろうか。

いや、あんな魔法を使う人だ、きっと存在するに違いない。


「生前の世界でもレオンは大狼だったんだよね。」

「あぁ、きっとそうだと思うぞ!」


そして魔力がほとんどないアリシェが、最高級以上の魔法を使えることについて。

フリードの考えでは、宝玉の力が影響しているのではないかという結論に至る。

橙の宝玉は回復系魔法、深紅の宝玉は炎魔法。

それじゃあ、残り三つの宝玉も、何かしらの魔法に強い影響を与えるのか。

宝玉さえ持っていれば、魔力がなくとも威力の高い魔法を唱えられるのか。

だが、魔力がないアリシェは倒れてしまい、しばらく起きない。

ということは、宝玉を集めつつアリシェの魔力を高めなければならないのか。

でもどうやって魔力を高めればいいのかわからなかった。


「そいや、フリードってどんな世界から来たの?」

「俺も気になる!」


突然振られた質問に、フリードは「何だ?」と聞き返した。

考え事をしていて、問いを聞いていなかった。


「だーかーらー!フリードの生前の世界はどんなとこだったのって聞いてるの!」


アリシェは怒って頬を膨らました。

レオンも興味津々のようだった。

その内容に、表情を曇らせたフリード。


「・・・」


返答せず、黙りを決めこんだ。

その様子を察したレオンは、恐る恐る聞いてみた。


「もしかしてフリードも、俺と同じように、記憶喪失なのか?」

「・・・あぁ、そうだ。」


フリードは嘘をついた。

生前の世界のことを話したくないんじゃない。

事情があって、話したくても話せないのだ。

できることなら、すべて話したいと思っているフリード。

だがそれは、絶対に許されない。


「そうだったんだ・・・。」


聞いてはいけないことを聞いてしまったのではないか、そう思ったアリシェは口を紡いだ。

けれど、他にも聞きたいことがあるらしく、ちらりとフリードに目をやる。

それに気付いたフリードは、仕方なくアリシェに聞いた。


「質問はそれだけか?」

「・・・それじゃあ、どうしてフリードはついてきてくれたの?」


アリシェの問いは、フリードにとって答えにくいものばかりだ。

もちろん、アリシェと共に旅をする理由はちゃんとある。

だが正直に答えるわけにもいかず、咄嗟に思いついた理由を言った。


「お前が危なっかしいからだ。きっと母性本能が働いたんだろうな」

「ぼ、母性本能って・・・フリードって女の子だったの?!」

「すっげー!!フリードはオカマだー!!」

「ち、違う!!!」


思いついたとはいえ、考えもせず言ってしまった理由が、間違った方向に行ってしまった。

自分でも痛恨のミスをしたと思ったフリード。

そして、"フリードはオカマ"論を二人に浸透するのを必死で阻止した。


「ほら、あれだ。」


平坦な道を歩いて半日、すっかり夜になってしまった。

途中ヴァイルと何度か遭遇したものの、フリードの鮮やかな剣さばきにより倒された。

レオンも戦いに参加しようとしたが、アリシェが背中にくっついていたため、フリードを見守る形となった。

そして目的地、音楽都市ラスカノンが見えてきた。

遠くにあるため小さく見えるものの、街の明かりが煌びやかに灯り、賑やかな音楽が聞こえてくる。


「あそこに宝玉の力を感じるぞ!!なんか、心が洗われるような・・・」

「いいな、早く見たいな~!!」


レオンはうっとりし始めた。

その力は、感じていてとても心地がいいらしい。

宿に泊まる金がない一行は、野宿をとることにした。

明日の朝出発すれば、昼には着くだろう。

周辺から薪を集め焚火をし、体をあったかくしてそれを囲むように寝た。

夏とはいえ、夜は冷えるのだ。


「おやすみ、フリード。」

「おやすみ!!」

「・・・あぁ。」


寝ずの番をするフリード。

アリシェはレオンに寄り添って寝た。

ふさふさした毛が心地いいのだろう。

その気持ちよさそうな寝顔に、フッ、と笑みが浮かぶ。

幸せだ、そう思った。

だが、この時間が終わるときは必ず来る。

そして別れの時がやってくる。

胸に咲く黒い薔薇の紋章が、それを告げていた。


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