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24話 終焉は火炎地獄

「今渡すなら、お前の命だけは助けてやるぞ。」


徐々に歩み寄ってくる二人を、アリシェは睨んだ。


「・・・さない・・・」


リュナをそっと地面に横たわらせる。

リュナが命をかけて渡してくれた宝玉は、死んでも渡さない。

そう心に決めていた。


「聞こえないんですケド??負け犬の遠吠えってやつかしらん☆」


キャハ☆と笑うと、アリシェを見下ろした。

フリードやレオンが相手でも全く歯が立たなかったとんでもなく強い魔法使いを相手に、アリシェが勝てるわけがない。

それは村人たちが思っていたし、アリシェ自身もそれを認めざるを得なかった。

だがフリード、レオン、リュナを傷つけたこの2人がとても憎かった。


アリシェの目の前にやってくると、2人は歩みを止めた。

マークスがアリシェに手を差し出す。


「ミレリア、十数えてコイツが渡さなかったら殺していいぞ。」


ミレリアと呼ばれた女性は頷いた。


「もっちろん♪あたしのとびっきりの魔法をお見舞いしちゃうんだから☆」


どす黒い笑みを絶やさず、ミレリアは鼻歌を歌いだした。

この状況がとても楽しいらしい。


「ダ・・メだ・・!!アリシェ、逃げ・・・るんだっ・・!!」

「犬っころは黙ってらっしゃい☆ロクシィガ!!」

「レオンっ!!」


ミレリアがレオンを睨み唱えると、レオンは石となり動かなくなった。


「これで邪魔者はいなくなったわね♪アハハ☆」


ミレリアは、アリシェに向き直った。


「・・・絶対に、あんたたちを許さないっ!!」


怒りや悲しみなどの負の感情に心を支配されたアリシェ。

感情が高ぶり、涙を流しながら立ちあがった。


そのとき、空気は一変した。


「お前に何ができ―――!?」


マークスの言葉を遮って、アリシェは目を伏せ、何やら呟き始めた。


「この悪しき魂を全て焼き尽くし」


その様子に、マークスはたじろいだ。

ミレリアは、ハッと何かを思い出したようだ。


「な、何だ?」

「この魔法は・・・いや、あり得ないわ♪怖がることないよん、マークスちゃん☆」


そう言いながらも、ミレリアの表情は濁り、額から汗が噴き出した。

もし勘が当たっているなら、それは手に負えるものではないとわかっていたからだ。


「灰となりて地に還さん」


アリシェの言葉に反応して、マークスとミレリアの足元に、2人をを中心とした大きな魔法陣が現れた。

血で描かれたような解読不能な文字が円に沿って並んでいる。


「ウィーガ・シールド!!」


魔法陣上で、魔法唱えてもそれは無効化される。

魔法使いにとって、そんな初歩的なことさえ忘れてしまう程、ミレリアは焦っていた。


「嘘よ、そんなっ・・・!」


次の瞬間、アリシェの目が見開いた。




「ヘルバーストフレイガ!!」




一瞬にして辺り一帯に広がった眩い光に、村人たちは目を覆った。

魔法陣からほとばしる炎が天高く上がり、それは瞬きする間もなく二人を燃やした。

声を上げる間もなく、口は、肌は焼け落ち次第に骨が見え始める。

血液は蒸発し、炎柱は骨をも焼き尽くす勢いで、さらに燃え上がった。

死ぬまで焼き尽くす炎から逃れる術はない。


石化が解かれたフリードは、視界に入った炎に焦点を当てた。

それは魔法をよく知るフリードでも見たことがない魔法だった。

あの女が唱えたものなのか。

まさか、アリシェがあの炎の中に居るのではないか。


だが、その考えが間違っているものだとすぐにわかった。

姿を探せば、アリシェは立ちながら、燃えゆく炎を無言で見つめていた。


そして、マークス、ミレリアは跡形もなく死んだ。

炎は消えると、魔法陣も消え失せた。

この逆転劇に、村人たちは歓声を上げた。


それを見届けると、アリシェは意識を失くして倒れる。

地面に倒れそうになるのを、フリードが受け止めて支える。


『あの魔法は、アリシェが・・・?』


やがてレオンの石化も解けると、村人たちとフリードは、アリシェとレオンをリュナの家に運んだ。






翌日、戦いで傷を負ったレオンと気絶したアリシェは眠っていた。

フリードは二人の傍を離れることなく、看病を続けた。

レオンの手足に包帯を巻き、血が染みると新しい包帯に替える。

アリシェが汗をかくと、布でそれを拭き取り、冷たい水に浸した布を絞って額に当てる。

村人は不作を乗り越えるための準備にいそしんでいた。


村人であるマークスとあの魔法使い、確かミレリアとかいう女との関係も気になっていたが、それより疑問に思っていたことがあった。

レオンを助けた時や今回も、なぜアリシェが最高級クラスの魔法を使うことができたのだろうか。

いや、あの炎魔法は最高級を超えたものであった。

炎魔法は低級から、フレイア、フレイラ、フレイガ、そして最高級クラスが"フレイガレクション"という名前であることは知っていた。

だが村人から聞いた話では、アリシェは"ヘルバーストフレイガ"と唱えていたらしい。

そんな魔法は聞いたことがなかった。


「ん・・・」


レオンが目を覚ました。


「起きたか。」

「あ、フリード。・・・アリシェは大丈夫か?」


隣で寝ているアリシェの頬を、前足で触れる。


「あぁ、まだ寝ている。アリシェが起きたら、彼女の葬式に出て、ここを出よう。」


村人たちが、リュナの葬式にアリシェたちも参列してほしいと頼んできた。

もちろん、すぐに了承した。

きっとアリシェも、リュナの葬式に参加したいだろう。


「俺の時も、今回も、アリシェはすごい魔法を使って助けてくれたな。」

「あぁ、そうだな。」


「今回はどんな魔法を使ったんだ?」


1回の魔法で二人を殺したというほどの殺傷能力が高い魔法をレオンも知らなかった。

しかも殺した二人のうち一人は、高い魔力を持ったとても強い魔法使いだったのだ。


「"ヘルバーストフレイガ"というものだ。」

「ヘルバースト・・・フレイガ?」


フリードはあの状況を説明し始めた。

村人から聞いた話も含めて。

するとレオンは、何かを思い出したように顔を上げた。


「それ、あの人も使って――― うっ!!」


頭をブンブン振って、急に来た痛みを紛らわせようとする。

だが、痛みは強くなる。


「おい、レオン!?」

「・・・頭が、割れそう・・・」


あまりの痛みに、涙があふれた。


「横になれ、レオン。今頭痛薬を貰ってくるから、待ってろ。」


そう言うとフリードは、家を飛び出した。

治まらない頭痛が襲う中、レオンの脳裏に1人の女の後姿が浮かんだ。

だがモザイクがかかったように、その後ろ姿は歪み、見えなくなっていく。


『ダメだーっ!!』


その残像の中で、レオンは力の限り叫んだ。

これは過去の出来事なのだろうか。

そして、この女は誰なのだろうか。


やがて、レオンの意識は深く落ちた。

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