22話 マークスの策略
リュナを突き刺したかと思われたそのとき。
カキ―――ンッ
気付けば短剣は弾き飛んでいた。
「おっ・・・お前は!!どうして・・・!?」
「やはり、貴様がマークスか」
フリードは剣を鞘に収める。
「リュナ、大丈夫だった?」
「・・・皆さんっ!!」
フリードの後にアリシェ、レオンが駆けつけた。
「あたしたちが睡眠薬の入った水を飲んだとでも思った!?」
「飲んでたから、俺が起こしたぞ!」
「俺はお前に飲まされた。」
昨夜水を持ってきたのはマークスだった。
眠っていた2人を、先程帰ってきたレオンが起こしたという。
「マークスさんが、どうしてそんな・・・」
リュナはマークスを見つめる。
とてもそんなことをする人には思えなかったらしい。
「リュナ。どうしてマークスがお前をこの村に置いたかわかるか?」
フリードはマークスを睨みながら、リュナに聞く。
「何でって、それは――― 」
幼くして一人ぼっちのリュナを可哀想だと思って、家族の一員としてこの村に置いてくれた。
この理由が思い浮かんだ。
だが現実は、そんな甘いものではなかった。
「お前が儀式の生贄に適任だったからだ。」
「・・・えっ?」
フリードのその言葉に、驚いたのはリュナだけではなかった。
村人たちも、そしてアリシェやレオンも初耳だった。
「どういうことだ!?」
村人たちはマークスに問い詰めた。
だが、彼は口を開こうとしない。
その代わりに、フリードが答えた。
「おそらく、マークスはいつ頃桜が枯れ始めるか知っていたのだろう。そして、儀式を行うためには若い娘の血が必要だった。だが、この村にはそれに適する者はいなかった。」
「つまり、桜が枯れる頃は、この村には若い娘がいないってこと?」
アリシェは問う。
「あぁ、そしてどこからかやって来た幼い女の子、リュナを拾ったんだ。この子なら、若い娘として生贄にすることができる。そう思って、この村に置いたんだろう。そうだろ?」
マークスは歯を食いしばった。
「・・・鋭い推測力じゃな。」
「マークスさん、これは本当なの?」
心のどこかで嘘なんじゃないかという気持ちがあった。
優しいマークスさんが、そんなことをするはずがないと。
「あぁ、そうじゃ。そこの若者が言った通りじゃ。」
「・・・そんな・・・」
リュナは、ショックのあまり膝を落とした。
「マークスを捕えろっ!!」
そう言って、村人たちは縄を持ちだし、マークスの両手を縛った。
マークスは抵抗せず、それを受け入れた。
「その手に持っている宝玉を渡せ。」
フリードが手を差し出すが、マークスはリュナを見つめてこう言った。
「最後の願いだ、リュナに渡したいんじゃ。」
「いや、何が起こるかわからん。それは聞けない。」
願いを断ると、リュナは立ちあがってマークスに近づいた。
「待ってください、私が受け取ります。」
フリードの隣に立ち、リュナが手を差し出した。
あんな酷いことをされても、願いを受け入れる優しいリュナ。
「ありがとう、リュナ。」
そう言って、宝玉をリュナの手のひらに落とした。
無言でそれを受け取った。
このあと、死が訪れるとも知らずに。




