表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/46

21話 この思い、伝われ!!


リュナは形だけでもと、身清めを続けるために残った。

2人はリュナの家に戻ると、いくつかの蝋燭に、置いてあったマッチで火を灯した。


「レオン、大丈夫かな?」

「あぁ、大丈夫だろう。」


大狼の足に人間が勝るわけがない。

そう確信していたフリードも、レオンの行方が気になっていた。


「そうだね」


腰を落とすと、アリシェは寝転がった。

そのとき、引き戸をたたく音がした。


「誰だろ?」


上半身を起こし、引き戸の向こう側に目を細めた。

フリードが引き戸をそっと開けた。


「こんばんわ。リュナから言われての。こんな状況じゃ水しか出せなくて悪いんじゃが、これで喉を潤してくだせぇ。」


白髪で顔が皺だらけのおじいさんが、竹の筒に入った水を2個を渡してくれた。

アリシェはそれを喜んで受け取った。


「ありがとうございます!・・・ぷはーっ。おいしいですね!」

「・・・」


勢いよく飲みほしたアリシェとは対照的に、フリードは口にしようとしなかった。


「この水は口に合わんでしょうか?」

「いや、そういうわけでは・・・」


飲むのを渋っていると、アリシェはフリードから水を取り上げた。


「人の好意は受け取るのが礼儀ってもんよ。ほら、飲んで!」

「おいっ、ちょっ――― 」


ゴクリ。


無理やり水を飲まされたフリード。


「それではごゆっくりお休みになってくださいまし。私は失礼します。」


一礼すると、引き戸を閉めたおじいさん。


「あのおじいさん、優しいね。はぁ~、なんだか眠くなってきた。」


欠伸をしながら再び寝転がる。

そしてまぶたを閉じ、間もなく寝息を立て始めた。


「やはり、これは・・・」


フリードに強い睡魔が襲いかかった。

負けまいと必死に目をこすったり、肌をつねったりする。

だが、抵抗も空しく、フリードも眠りについた。
























翌朝。

リュナは身清めを終え、儀式の準備ができたと伝えられて家を出た。

桜の花弁は全て消え、枝はところどころ変色している。

桜は枯れ始めていた。


村人は全員揃って、リュナが現れるのを待っていた。

そして村長であるマークスは、桜の木の前で立っている。

リュナは黙ったままマークスの前まで歩き、マークスの背後にある桜に向かって礼をした。

マークスの後ろには、小さくて赤い球体が、米と水に挟まれて供わってあった。

これがアリシェたちが言っていた宝玉なのだろう。


「さぁ、これから儀式を始め――― 」

「待ってください、皆さんに聞いてほしい話があります!」


マークスの言葉を遮って、リュナは村人たちの方を見た。


「・・・何じゃ?」


マークスが怪訝そうな顔をしながら、リュナに聞いた。


「その宝玉の力に頼らず、私たち自らの力で不作を乗り越えましょう!!」


「・・・あいつは何を言ってるんだ?」

「今の話、どういうことだ?」


予想にもしなかった言葉に、村人たちは困惑した。

そして宝玉のことを知らされていないため、言っていることの意味がわからずにいた。


「この宝玉に血を吸わせることで、その力を吸収した桜は咲き続け、桜から発する宝玉の力で、今まで豊作を実らせてきました。」


この話に皆が疑った。


「それはまことか?先代の血がもたらす力とは、つまりそのちっこい玉の力ということか?」

「はい。そして、あたしがここで死んだとしても、またいつか不作になるときがやってきます。そのときも誰かを殺して豊作を得るでしょう。こんなことが永遠に繰り返されていいのでしょうか?」


リュナは皆に訴えた。

自分が死にたくないという思いだけじゃなく、村の将来を心配している気持ちも伝えたかった。


「人の死で富を得るなんて、卑劣なことだと思いませんか?」


「確かに・・・」

「それはよくないな。」


「猪がやってくるなら、畑の周りに柵を立てればいい。水の枯渇が原因なら、近くの川から水をひけばいい。・・・違いますか?」


この思いは、村人に届いていく。


「先代の血とかいうやつに頼りすぎて、自分たちで解決しようだなんて思ったことがなかった。」

「こんな儀式、行うのを止めよう!」


「自分たちの力で、村の危機を乗り越えましょう!」


村人たちにリュナの思いは、浸透した。

そう思った時だった。


「そんなことしても、必ずや豊作になるとは限らんぞ!!いいのか!?」


儀式反対の声にマークスは怒った。


「やってみなきゃわからないだろ!」

「そうだそうだ!」


声を荒げても、村人たちの考えはすでに変わっていた。

マークスの考えに反対する意見が増え、言い合いになった。

カッとなったマークスは、宝玉と、米の横に供えられていた短剣を手に取った。


「マークスさん!」

「短剣を置くんだ!」


「うるさい!何のためにお前を置いてやったと思ってるんだ!」


リュナや村人たちの制止する声も届かず、マークスは怒りに身を任せていた。


「やめて!マークスさんっ!!」

「今ここに清き乙女の血を捧げん!!」


躊躇いなくリュナの心臓めがけて、短剣を突き刺し―――



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ