20話 絶対阻止してみせるから
日が沈み、辺りが暗くなった頃。
身清めを行っている家の前には、門番がいた。
交代制なのだろう、昼に見た人とは違う村人がいた。
「どうするの?」
アリシェ、フリード、レオンは身清めの家の裏にいた。
窓や煙突がないため、玄関しか侵入経路がない。
「見てろって!」
助走もつけずに、レオンは高く跳びあがった。
そして屋根に乗っかったかと思えば、藁でできた脆い屋根のため、突き破ってそのまま落ちていった。
「キャアア!!」
リュナの叫び声が聞こえた。
「どうした!?」
村人たちが中に入ると、そこには大狼がいた。
そしてレオンは壁を突き破って、逃げ出した。
「この獣め!捕まえろ!!」
村人たちはレオンを追って村を飛び出した。
「そういうことか。」
裏に隠れてたフリードは、レオンの案を理解したのだろう。
アリシェの腕を引っ張って、穴の開いた壁から家に入った。
「ちょっと!不法侵入罪で捕まっちゃうよ!!」
「馬鹿なこと言ってんじゃない、来い!」
ある意味でまともなアリシェの意見を退け、フリードはリュナの元に駆けつける。
「も、もしかして今のは、あなたたちの仕業?」
正座をし、何やら祈りを捧げていたリュナ。
リュナの周りに置かれていた蝋燭は、レオンのおかげで全て消えた。
代わりに、空いた屋根から月の明かりが差し込んだ。
「荒々しくてごめんね。」
「単刀直入に言う。お前は死にたいか?」
フリードの質問に、リュナは先程と同じ笑顔を見せた。
「この村のためになるなら、死んでも――― 」
「あたしたちは、あなたの本心が聞きたいの。あたしはね、不作っていう村の危機を人の死で乗り越えるのは間違ってると思うの。自分たちの力で乗り越えなくちゃ、こんなことが一生続いちゃうんだよ?人は死ぬために生きてるんじゃない。」
きっとリュナならわかってくれる。
アリシェはそう思っていた。
しばらくして、リュナは口を開いた。
「・・・できることなら、死にたくない。でも、あたし一人じゃ何もできない。」
今まで浮かべていたあの笑みは崩れ、今にも泣きそうな表情をしていた。
やはりあの自然な笑顔は、上辺だけだった。
「あたしが助けてあげる!」
「通りすがりの旅人が、どうしてそこまでするの?」
リュナの問いに、フリードは正直に答える。
「俺たちは理由があって宝玉を集めている。この村にある宝玉が欲しいだけだ。そのためには儀式を止めないといけない。それだけのことだ。」
「・・・宝玉?」
リュナは宝玉の存在を知らないらしい。
確かに、先代の血がもたらす力と言っていた時点で、それが宝玉の力だと知っている感じではなかった。
「宝玉がどこにあるか、知らない?」
「知らないよ。・・・でも、マークスさんなら知ってるかも!」
「マークス?」
どこかで聞いたことがある名前だと、フリードは思い返してみた。
すると、先程の村人の会話にその名前が出ていたことがわかった。
「この村の村長なの。幼い一人ぼっちのあたしをこの村に置いてくれた優しい人よ。」
どうやらリュナはマークスを尊敬しているらしい。
だがその話に、フリードは嫌な予感を覚えた。
「知ってるなら、聞けば教えてくれるよ。」
「いや、儀式を行うときに持ってくるだろう。それまで待とう」
リュナの話を断り、フリードは提案した。
「マークスさんが持ってるとは限らないよ。」
「あぁ。だがこの村にあることは間違いない。明日の儀式で使うこともだ。この目で直接見るまで、待とう」
マークスが宝玉を隠す可能性があるなんて、彼を尊敬するリュナの前で言えなかった。
「とにかく!皆を説得するには、リュナが明日儀式を行う前に話すしかないと思うよ。あたしもできる限りサポートするからさ!」
アリシェはリュナの両手を、強く握った。
「こいつらは、お前を本気で助けたいと思ってる。だから、信じていいと思うぞ」
それはアリシェとレオンを指していた。
「・・・うん、やってみる。ありがとう、アリシェ。」
そうしてリュナは決心した。
だがこのとき、このやりとりを裏でマークスが聞いていたことは、誰も知らなかった。




