表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/46

2話 死別

公園を出てしばらく歩くと、大きな通りに出た。

午後九時だというのに、頻繁に車が行き交うのは、近くに大きな駅があるからだろう。

駅周辺はデパートや居酒屋などがあり、仕事帰りの人や学生、家族連れなどで賑わっている。

駅から帰る人の波にのって、2人は歩いた。

この通りに、渚沙の家がある。


「いつも送ってくれて、ありがとう」


「当たり前だろ!夜道を女一人で歩かせられるか!」


疲れてるのに、いつも気遣ってくれる和人。

そんな優しい和人に、渡したいものがあった。

つないでた手を離し、渚沙はカバンに手を入れて何かを取りだした。

同時に和人も、ズボンの後ろポケットから取りだした。


「あのね、和人―― 」 「渚沙、これ―― 」


2人が手にしたものは、遊園地のマスコットキャラクターのキーホルダー。


「これ、和人にプレゼントだよ!もしかして、それ・・・」

「おう!これは渚沙に渡そうと思って、さっき買ったんだ。」


絵は違うが、作りが全く同じのキーホルダーを、互いに渡し合う。

和人に渡されたのは、"みき"というクマの男の子が描かれたもの。

渚沙は"みみ"というクマの女の子が描かれたキーホルダーを受け取った。


「・・・あはは!あたしたち、本当に気が合うね!」

「そうだな!」


前方で歩行者信号が青く点滅を始めた。


「ありがとう、和人。ずっと大切にするね。」

「すっげぇ嬉しい!!ありがとな、渚沙。」


和人はそれを、大切にショルダーバックに入れた。

そして、横断歩道の前で止まる2人。


「次の信号で、いいだろ?」

「うん。」


ここを渡って10歩も歩けば、渚沙の家に着く。

家に着けば、それは別れを意味する。

次会えるのは、また数カ月先になる。

和人には、言おうと決意していたことがあった。


「あのな―― 」


和人が言いかけたそのとき、渚沙の横を自転車が通った。



ドンッ



自転車に乗った男と渚沙の腕がぶつかった。


「いたっ」

「大丈夫か!?あいつっ・・!」


横断歩道を渡って行った自転車を睨みつけながら、渚沙の腕をつかんだ。

傷がないか確かめる。

見たところ、外傷はなさそうだ。


「だいじょーぶだよ・・・・あれ?」


しっかり握りしめていた"みみ"のキーホルダーがなくなっていた。


「どうした?」


足元を見ても落ちていなかった。

周囲を慌てて見回すと、それは横断歩道上に落ちていた。

信号はすでに赤を示していた。


「見つけたっ!!」


信号に気付かずに、走り出す渚沙。


「危ない、渚沙!」


渚沙はキーホルダーを手にして安心した。


「よかった、大丈夫だよ!キーホルダーは無事―― 」



プップ――――――ッ



「・・えっ?」


クラクションが鳴った方に振り返ると、向かってくる車のライトに照らされ目を細めた。



「なぎさああああああああああ!!!!」



キキ――――――ッ



すぐさまブレーキ音が鳴り響いた。

和人は駆けつけようとしたが、すでに遅かった。

鈍い衝突音の後、痛みより先に意識が遠のいた。


「渚沙っ、渚沙っ!!」


頭から大量の血を流し、目を伏せた渚沙を抱きかかえる。

体のあちこちも、ひどい傷を負い、血の流れは止まらない。

渚沙をひいた運転手は、車を止めすぐに駆け寄った。


「おいっ、まさか・・・」


横断歩道の手前で待っていた人たちも駆け寄り、一人が携帯電話で救急車を呼んだ。

人々は子供の目を手で覆ったり、渚沙に声をかけたりした。


「お嬢ちゃん大丈夫かっ」


「お願いだっ、渚沙!!渚沙っ!!」


泣きながら必死の和人の呼びかけに、応えることはなかった。

すでに、息絶えていた。














20××年 8月 1日 21時 16分


渚沙は、死んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ