19話 血吸い桜の恩恵
引き戸から中に入ると、畳を敷き詰めた和室が1部屋。
中央には囲炉裏があり、天井からつるされた自在鉤に鍋が掛かっている。
広さは10畳といったところだろう。
囲炉裏を囲むように座ると、リュナは話し始めた。
「あの桜の木は、この村に豊作をもたらしてくれる木なの。数百年年中咲き続けた。でも今、枯れかかってる。だから猪やモグラたちが畑を荒らしたりして、何も収穫できない状態なの。だから桜を枯らせない儀式を行うための準備で、みんな大忙しってわけ。」
「へぇ!あの桜って、すごいね!」
「ワン!!(すげーっ!!)」
アリシェとレオンは感嘆していた。
フリードは疑問に思ったことを問う。
「桜が年中咲き続けるのは何故?」
「先代の血がもたらす力って言われてる。」
その言葉に驚くアリシェ。
桜が咲き続けるのは血の力と聞いて、身体に寒気が走った。
「先代の血・・・」
「その力のおかげで数百年不作になることはなかった。でも、その力が消えかかってる。だから若い娘の血、つまりあたしの血を全て桜に捧げなくちゃいけないの。そうすれば、その力はまた数百年続くの。この村も安泰ってこと。」
「リュナの死と引き換えにこの村は豊作になるのか。」
「・・・だから、リュナの死を悲しむ人はいないってことなの?」
眉間に皺を寄せたアリシェはリュナを見つめた。
そんな表情を気にせず、笑顔で頷いた。
ガタッ
その音に全員が向くと、引き戸が開いていた。
そして村人のおばさんが現れた。
「リュナ、身清めを行うから来なさい。」
「わかったよ。あ、そうだ。今日はここに泊まっていいからね。」
「あっ、待って。リュナ!」
笑みを絶やさないリュナは、立ちあがるとおばさんと共に去って行った。
そして最初に口を開いたのはアリシェだった。
「・・・あたし、よくないと思う。人の死で富を得るなんて間違ってるよ。」
「俺もそう思うぞ!」
レオンは犬の鳴き声を止めた。
「俺の推測が正しいなら、この儀式を止めないと・・・」
何やら深刻そうな表情を浮かべたフリード。
「推測って、どんな?」
「人間の血を原動力とする宝玉がある。それがこの村にあるのなら、先代の血がもたらす力っていうのは、宝玉の力だと説明できる。」
「・・・そんな宝玉があるの?」
「あぁ。血を吸わせれば、数百年蓄えてきた力を一瞬にしてすべて放つ。だから数百年は使い物にならん。」
もしリュナの血を吸わせれば、宝玉は使い物にならない。
だから、その前に宝玉を手に入れなくちゃいけないという。
「それなら、なおさら阻止しなくっちゃ!!でも、どうやって止めるんだ?」
「俺たちだけで村人を説得するのは難しい。まず、リュナを説得するべきだ。」
そして外に出る。
すると、反対側の家の玄関前に、2人の村人が斧を持って立っていた。
身清めはあの家で行われているみたいだ。
「あの様子じゃ、入れさせてもらえな――― 」
「リュナに会いたいので入れさせてください!!」
気付けばアリシェが、2人に話しかけていた。
両手を顔の前で合わせ、頭を下げている。
「ダメだ!帰れ!」
「そこを何とかお願いします!」
「お前は斬られたいのか!?」
何人たりとも入れない姿勢に、仕方なく戻ってきた。
「・・・ダメだった。」
「当り前だ!」
アリシェの行動に、フリードは呆れてため息をついた。
「ワン!!(俺、良い案があるぞ。)」
レオンは何か思いついたらしい。
だがアリシェには何も伝わらなかった。
「ワンじゃわからないよー!」
「良い案?」
フリードはレオンの言いたいことが理解できたらしい。
「ワンワン!!(あぁ!とりあえず、リュナの家に戻ろうぜ)」
そう言ってレオンは家に戻った。
「あ、待ってよ!レオン!!」
アリシェに続き、フリードも家に入る。




