18話 枯れない桜 エルフェルン村
一行は森を抜けた先にある村にたどり着いた。
村の入口に、『エルフェルン村』と書かれた看板が立っていた。
わら屋根の家が円になって建ち並び、中央には点々と花がついた大きな桜の木が植わっていた。
花の付き方からして咲き終わろうとしているが、不思議と葉は1枚も生えていない。
そよ風にのり、桜の花びらが舞う。
「すごーっ!桜でかいね!!」
「ピンクの花びらがひらひらしてるぞ!」
レオンから降りると、アリシェはレオンと共に桜に向かって駆けだした。
この村の神木なのだろう、桜の木に注連縄が巻かれていた。
『今の季節は夏。どうしてまだ桜が咲いているんだ?』
アリシェとレオンがはしゃぐ一方で、フリードは考えていた。
レオンによると、この村のどこかに宝玉はあるらしい。
だが、この村に宝玉がありそうなところの見当がつかない。
「あの短剣はどこだい?」
「マークスさん家の神棚に置いてあるぞ。」
「あれは、また上手くいくかのう」
「大丈夫さ、前も成功したんじゃ。」
旅人が来ることに気付かないほど、土にまみれた布地の服装を纏った村の人々は、忙しなく動いていた。
会話を聞く限り、何やら行うらしい。
そしてフリードの元に、1人の女の子がやって来た。
金色の髪が、風になびいている。
巫女服を着ていたためか、村人の中でひときわ目立っている。
「旅人が来るなんて、珍しいね」
「・・・この村の者か?」
女の子は頷いた。
「そうよ。リュナっていうの。でも、明日には・・・」
自然な笑顔を浮かべるリュナ。
「明日には、何だ?」
「あたし、死んじゃうの。」
本心からそれを当然のように言った。
「なぜ笑っていられる?」
自分の死がわかっていれば、慌てふためいたり、それを悲しんだりするだろう。
いろいろと後悔したりすることもあるだろう。
リュナはそういう表情を一切見せない。
自分が死ぬことを心の底から受け入れているように見えた。
「あたしが死ねば、この村を救える。皆が喜んでくれるんだもん。」
「そんなのおかしいよ!!」
レオンと共に戻ってきたアリシェ。
どこから話を聞いたのか知らないが、アリシェはリュナに近づいた。
「誰かの死を喜ぶ人なんていないよ!」
「あなたは何も知らないから、そんな綺麗事が言えるのよ。」
リュナは呆れて、ため息をついた。
「ワン!(綺麗事なんかじゃないぞ!!)」
そのとき、レオンが叫んだ。
「レオン、それ犬の泣き声だよ。何でしゃべらない―――ふがっ!! 」
「綺麗事が言えない理由を教えてくれ」
フリードはアリシェの口を塞いで言った。
大狼が人間と同じ言葉をしゃべると、周囲から好奇の目で見られるだろう。
なので街や村に入ったときは、人間言葉を話さないという約束を交わしていた。
だが、どうして大狼が犬の鳴き声をするのかフリードも理解できなかった。
「いいよ。でも、外じゃなんだから、家においでよ」
リュナは自分の家屋に入るよう、一行を案内した。




