16話 悲しみの夢逢瀬
和人が泣いている。
明らかに嬉し涙ではなさそうだ。
同じ単語を何度も繰り返し呟いて、何かを悲しんでいる様子だった。
その単語が何なのか全く聞こえない。
こんな姿の和人は初めて見た。
どうして泣いているの?
聞いてみようとしたけれど、声が出なかった。
何で声が出ないんだろう。
もう一度試してみた。
けれど、言葉が出てこない。
こうしてる間も、和人は泣いている。
和人は隣にいるあたしに気付いてないのかな。
気付かないフリをしているの?
泣いてる姿を見ていられなくて、彼の肩に触れてみる。
あたしが慰めてあげたい、話を聞いてあげたい。
そう思ったけれど、あたしの指は彼の肩に触れることなくすり抜けた。
・・・そっか、そうだった。
あたしは死んでるから、つまり霊なわけだから、触れられないのも、言葉をかけられないのも仕方ないんだ。
もしかして和人が泣いてるのも、あたしが死んだから?
和人を悲しませてるのは、あたしが原因なの?
ごめんね、ごめんね、和人。
でももう少し待ってて、あたし絶対和人に会いに行くから。
そのとき、視線を感じた。
その方へ目をやると、遠い遠いところに明るい茶髪のロングヘアーの女性が立っていた。
それを見て、とても嫌な予感がしたんだ。
見覚えのある女性・・・そうだ!和人の勤め先の社員だ。
名前は忘れたけれど、和人が見せてくれた社員旅行の写真に載っていた。
常に和人の隣をキープしていた女性。
和人はかっこいいからモテるだろうし、その女性は和人が好きなんだよ。
そう言って和人を困らせたこともあったね。
あの視線は、あたしを見ているんじゃない。
和人を見ているんだ。
それがとても怖かった。
あの人に和人を取られる気がした。
嫌だよ、和人に近づかないで!
あたしは和人から離れていく。
和人の隣に居たいのに、何かがあたしを引っ張るんだ。
必死にもがいて抵抗するけれど、和人との距離はどんどん離れていくばかり。
そして和人は、あの女性に気付いた。
だからだろう、いきなり涙を拭いだした。
女性は和人に歩み寄っていく。
嫌だよ、他の女の人なんて見ないで!
嫉妬心剥きだしのあたしは、薄れゆく意識を手放した。




