15話 常識破りの魔法使い
「ねぇ、ウーパスって何?」
草原を歩き渡り、緑生い茂る森に入った2人。
その中に整備された1本道を進んでいた。
ヴァイルを恐れてるのか、人気はまったくない。
「レグザムで死した者は、別世界で生まれ変わる。だが未練があると、成仏できずにレグザムにとどまることになる。そいつらをウーパスという。宝玉を通さない限り、人間には見えないし、声も聞こえない。」
それは先程のことで十分にわかった。
「ふーん。じゃあさ、何で宝玉やこの世界のことをいろいろ知ってるの?」
アリシェは宝玉の存在しか知らなかったため、フリードがそういった情報をどうやって得たのか知りたかった。
「さぁな。」
一言で流された。
「ちょっと、さぁな。って何よ!あんた、生前の世界でもそんなクールだったわけ?」
「・・・」
フリードの表情が一瞬だけ曇った。
だがすぐに無表情に戻ったため、そのことにアリシェは気付かなかった。
「今度は無視するの?最低男!!」
フリードは急に立ち止った。
「どうしたの?先に行っちゃうよ~!!」
フリードを置いて先に進もうとするアリシェ。
一方でフリードは、何か気配を感じたらしく、道を外れようとする。
「・・・血の臭いがする。」
その臭いの元を確かめるために、道脇にそびえ立つ木々の間を歩いていく。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
フリードなしでヴァイルがいる森を歩くことに危険を感じたアリシェは、道を引き返してフリードの後を追った。
木々を縫って歩くこと数分、大木の根幹に身を預け、傷だらけで倒れている大狼を見つけた。
白くふさふさした毛は血がこびりつき、体中噛まれ痕が見られた。
目を伏せた大狼はすでに虫の息。
「おい、大丈夫か?」
フリードが声をかけるが、反応はない。
必死に生きようと呼吸するだけ。
出血は止まらず、足元には血の水たまりができている。
「フリード、やっと追い付いた・・・って、おおかみ?大丈夫!?」
アリシェは大狼を見つけるなり、すぐに駆け寄った。
「このままだと、こいつは死ぬ。」
すごく苦しそうな大狼に触れると、その体格からでは想像できないくらいのか細い脈動を感じた。
「くそっ、どうしたら・・・」
フリードは頭を抱える。
時間に猶予はないが、治療できる方法は思いつかない。
「もう、誰かが死ぬのはイヤ!!」
アリシェは無意識に両手をそっと大狼の体に当てた。
「リキュアレクション!!」
単体回復系最高級魔法の名を口にしたアリシェに、フリードは絶句した。
どんな物語でも、"自分の魔力を遥かに上回る魔法は使えない"という常識を破ったアリシェ。
使えても、せめてキュア(単体回復系低級魔法)だろう。
だがフリードは、アリシェが魔法を唱えられるとは思っていなかった。
それだから余計に驚いたのだ。
何やら古代文字が書かれた魔法陣が現れ、それは大狼を包み込むくらい大きく広がった。
黄緑や白などの光が魔法陣からあふれんばかりに出て、大狼の傷をみるみる治していく。
出血は止まり、傷は痕形もなくなり、弱かった脈も力強くなった。
大狼はゆっくりと瞼を開け、赤い瞳を覗かせる。
「よかったあ・・・」
大狼の傷が癒えたことに安堵し、アリシェは倒れた。
「・・・おい、起きろ!」
フリードは倒れたアリシェの肩を揺するが、起きる気配はなかった。




