14話 新たな冒険へ
ミアノ、私たちを自由にしてくれて本当にありがとう
あなたが助けようとしてくれなかったら、私たちはいつまで続くかわからない恐怖におびえながら、あの暗い箱の中でずっと過ごさなくてはならなかった
だから後悔なんてしないで
私たちは死んでしまったけれど、あなたは私たちの分まで生きるのよ
久しぶりに聞いた、温もりのある声に心があたたかくなるのを感じた。
それはミアノだけでなく、ウェスト、アリシェ、フリードもそうだった。
「あたしね、小さいときに死んで、レグザムに来たの。そのとき、幼い私を育ててくれたのが父さんと母さんなの。2人が背中を押してくれたから、立派なサーカス団員になるという夢を叶えることができたんだ。」
ミアノは小さな瓶を見つめた。
「父さん、母さん、本当にありがとう」
ミアノのことだけが心残りだったようだ。
ミアノと話せたことで、2人は無事に成仏したらしい。
その証拠に、辺りを包んだ真っ白な光が、橙色の宝玉に吸い込まれ、アリシェたちはいつのまにか舞台に戻っていた。
「俺がもっと早く、駆けつけられたら・・・」
3年前パルフェ団を解雇されてからウェストは、ずっと行方を追っていたらしい。
そして今日、やっと見つけられたのだという。
「ウェストが駆けつけてくれただけで本当に嬉しかったわ、あたし。とても心強かった」
ミアノが微笑むと、ウェストは頬を赤らめた。
「そ、そっか。」
嬉し恥ずかしいからか、指で鼻の頭をこすった。
そんな光景がとても羨ましく感じたアリシェ。
「アリシェはこれからどうするの?もしやることがないなら、一緒に・・・」
「ごめん、ミアノ。あたし、一緒に行けないんだ。」
顔の前で両手を合わせた。
「どうして?」
「あたし、願いを叶えるために宝玉を集めなくちゃいけないの。」
アリシェはミアノの首飾りを見つめる。
「でも、それはミアノの大切なものだから、いらないよ。」
「宝玉は5種類すべて揃える必要がある。いらない宝玉などない。」
フリードは言い切った。
その言葉に、困惑するアリシェ。
和人には会いたい。
でも、誰かの大切なものを奪ってまでその願いを叶えることはできない。
「あたしにはもう、必要ないから。アリシェ、受け取って。」
「ミアノ・・・」
自ら首飾りについた宝玉を外し、アリシェの手に握らせた。
「必要としている人が持つべきよ。」
そう言って、ニコッと笑った。
「・・・ミアノ、ありがとう。大切にするね!」
受け取った宝玉を、腰から下げた袋に入れた。
「ミアノ、パルフェ団の皆を集めて、またサーカスをしよう!」
「そうね!」
パルフェ団再結成に意気込むウェストとミアノ。
「フリード、あなたはどうするの?」
アリシェが尋ねると、フリードは答えた。
「・・・お前についてく」
「・・・えっ!?本当に?」
先程の戦いを見てもわかるように、かなり強い剣士がついてきてくれるのはありがたい。
それに宝玉のことや、この世界のことについて豊富な知識を持っているみたいだ。
「フリード、ありがとう!」
満面の笑みでフリードを迎え入れるアリシェ。
「あぁ。」
『お前を守れるのは、俺しかいないから』
無表情のフリードがそんなことを考えてるだなんて、誰もが思わないだろう。
そんな彼の秘密は、いつか明らかになる。
サーカス団のテントから出ると、ミアノはアリシェに抱きついた。
「アリシェ、あなたに出会えて本当によかったわ。」
アリシェも強く抱き返す。
「あたしもだよ!ミアノ、ウェストと一緒に頑張ってね!」
「うん!」
「お互い頑張ろうな」
「あぁ。」
ウェストはフリードと握手を交わした。
ひと時の抱擁が終わると、トラルベルの街を背に、アリシェとフリードは歩きだした。
「またね~!!」
姿が見えなくなるまで手を振りあうアリシェとミアノ。
そうして2人は、ミアノ、ウェストと別れ、宝玉集めの旅に出た。
どんな未来が待っているのかも知らずに。




