11話 救出作戦
翌日、パルフェ団特別公演と称されたビラが配られ、予想しなかった出来事に街中の人は喜んだ。
年に1度しか見れないサーカス団のショーが、また見られるのだ。
昨日より多くの客が来場しているらしい。
ミアノが望んだこの公演を、団長は快諾した。
作戦は、ショーが始まればヴァイルは舞台に立つ。
それでヴァイルがいない隙に、ミアノの家族を救出するというものだ。
ショーが始まった今、アリシェはサーカス会場裏口にいた。
「あれがヴァイルの檻ね」
裏口脇に置いてある、トラック1台分はあるだろう格子状の檻が1つだけ置いてあった。
そして中に、木製の箱が置いてあった。
赤い染みが、点々と付着していた。
テント内から客の喝采が聞こえる。
『ヴァイルの玉乗りです、ご覧ください!』
スピーカーを通して、ミアノの声が聞こえた。
ヴァイルがいない檻に近付く。
鍵は外してあったため、素早く檻を開けて、箱に走り寄った。
1秒でも早く家族を解放するため、蓋を開けた。
「助けに来ましたっ!・・って、あれ?」
だが、そこには何もなかった。
てっきりこの中にいると思っていたため、この展開に驚いた。
「・・・ここにはいないの?」
辺りを見回しても、このサーカス会場は街の外にあるため、草原とテント、そして街しか見えない。
檻の床も箱同様、赤い染みが点々とついている。
もしかしたら、テント内でミアノが探し忘れてるところがあるかもしれない。
裏口から入ろうとして、檻から出た。
「手遅れだよ。」
その言葉に驚き、声の主を探した。
目をやれば、檻の格子にもたれかかって立っている男がいた。
トップを短めにしたミディアムレイヤースタイルの黒髪に、半袖の白ポロシャツとジーパン。
袖から覗く腕はたくましく、かなり筋肉がついていることがわかる。
彼は腕を組み、目を伏せていた。
「あんた誰っ!?」
戦闘力0のアリシェは、勝ち目がないと思いながらも、とりあえず構えてみた。
「その床や箱についてる赤い染み、まだ生温かいんだよ」
「えっ・・・?」
男の言葉の真偽を確かめようと、アリシェは檻に入り、赤い染みに触ろうとしてしゃがんだ。
人差し指でそっと触れると、確かに生温かい。
そして指には赤い染みが、いや、血がべっとりと付着した。
「これ、これって・・・」
男の言いたいことが分かった。
ミアノの家族は、今日此処でヴァイルに食い殺されたのではないか。
檻の中をよく見ると、血の華が飛び散ったかのようにあらゆるところに咲いていた。
頭上も、床も、格子も、檻の外にも、それは散っていた。
「そして、これが証拠。」
男は来い、とアリシェを手招いた。
おそるおそる近づくと、男の手のひらには血に塗られた白い粉というか、小さな小さな破片の集まりがあった。
「もしかして、・・・お骨?」
男はこくり、と頷くとそれを小さな瓶に入れた。
「ヴァイルは血肉しか食べないが、腹が減りすぎると骨まで食うという。そのときに散らばった破片だろう。」
「いや、嘘を言わないでよ!あんた現場を見たわけじゃないんでしょう?」
「それじゃあこの状況を、他にどうやって説明できるんだ?」
気が動転しそうなアリシェとは違い、男は冷静に考えていた。
だが、悔しさのあまり拳を固く握っていたことをアリシェは知らない。
「あたし、ミアノに助けるって言ったのに――― 」
アリシェが言いかけた時、スピーカーから声が聞こえた。
『私から皆さんにご報告がございます!』
どうやら団長がマイクを持ったらしい。
会場内がざわついているのも、スピーカーを通して聞こえる。
その声に、男は話すのをやめた。
『ミアノは、今日このヴァイルを提供してくださった方と結婚します!』
この話に、客から祝福の喝采が起こった。
そしてアリシェと男は、突然の報告に目を大きく開けた。
『何よそれ!そんな話聞いてないわ!!』
「させるかっ!!」
ミアノと男は同時に声を荒げ、男は走って裏口から入って行った。
「・・・絶対に許せないっ!!」
ミアノの家族を食い殺したヴァイルが、ミアノの人生を縛ってきた団長がとても憎い。
アリシェも男に続いて会場に向かった。




