星になる
約1000字のショートショート
ソノミちゃん、ほら、もう泣かないで。
ミロはね、もう動かないの。お口ももう、開かないでしょ?
うん、もう何も食べない。おしっこもうんちもしない。
膝にも乗って来ない。夜になっても、ベッドに来ないの。
うん、悲しいね。でもね、そんなに泣いたら、ミロも泣いちゃうよ?
道路に落ちてたミロは、私たちと20年も一緒に居てくれた。
うんうん、ソノミちゃんは、生まれてずっと、ミロと一緒だったものね。
ソノミちゃんには、ミロはお姉さん?
違うの?
ミロはミロなの?
そうなの。
ミロはね、ママにとっても大事な子。
ミロは道路に落ちてたから、そのままならすぐ死んじゃってたわ。
でも、ママが小さな頃にうちにきて、ママと一緒に大きくなったの。
だからね、ソノミちゃんの気持ちはよく分かる。
ミロは、ミロなのよね。
きっとミロは、幸せなネコだった。マグロが大好きで、膝の上が大好きで、ベッドの中が大好きで、ソノミちゃんのことが大好きで、そして家族みんなを大好きで。
でもね、ママは泣かないの。
どうしてって?
それはね、ミロには絶対また会えるから。
絶対よ?ホントよ?
ママはうそつかない。
そうよ~、ソノミちゃんもね、ミロに会える。絶対よ?
どうしてって?
じゃ、教えてあげる。
ミロはね、これから星になるからよ?
そう、お空の星。
うそって?うそじゃないわ。ホントにそうなの。
なぜって?
パパもママもね、そのうち星になるからよ?
そんなのいやだって?
うん、いやだよね。でもね、おじいちゃんもおばあちゃんもね、星になったんだよ?
え?みんな星になるの?って?
そう、星になる。
そしてね、ソノミちゃんも大人になって、もしかしたらママになって、おばあちゃんになって、そして星になるわ。
分かる?そのとき、ソノミちゃんはミロに会う。おじいちゃんにも、おばあちゃんにも、そしてパパとママにも。
うふふ、涙がなくなっちゃったね。
え?だって、絶対会えるからって?
そうよね、絶対に会えるの。ママはうそつかない。
さぁ、ミロにお別れしましょ?
さぁ、立って。
さぁ、自分の足で。
猫のミロは、星になる。
そのうちみんな、星になる。
なぜって、私たちはみんな、星の子だから。
宇宙の始まり、原初の太陽が爆発して全ての元素が生まれた。
その元素が集まって、次の太陽を作る。
その太陽の周りに生まれたこの星で、私たちは生まれた。
ほら、みんな同じなんだよね。
おなじ星から生まれてる。
だから最後に、私たちは星に戻る。
そのときみんな、会えるのよ。
ソノミちゃんが大きくなったら、また教えなくっちゃ。
うそじゃないよ?って、言ってあげよう。
私が星に、なるときに。
星になる 了
連載形式の短編集にも入っています。
そちらもご覧いただくと、うれしいです。