玲央と樹と陽葵(後編)
2人は一瞬、その言葉の意味を測りかねて固まった。陽葵が戸惑いながら彼らを見つめる。その目を見返して、樹は彼女の手を引いた。
「……ねえ、今……僕のこと、好きって言った……?」
整った顔が近づく。陽葵は思わず上ずった声を上げて、目線を横に向けた。その正面、樹と同じくらいの近さに、玲央が来ている。
「……少しは前に進めたか。まあ、今はそれでいいだろう」
緊張と照れで、少女はもう限界だった。そこに彼の楽しそうな笑顔が加わって、陽葵は奇妙な叫び声を上げた後に気を失った。傾きかけた彼女の体を、樹がすかさず支える。
「……おっと。ちょっと追い詰めすぎちゃったかな。……でも、ようやく僕を意識してくれた。玲央と同じくらいっていうのが、気に入らないけど……」
「素直な感想だと思うがな。まあ、その気持ちを隠していても、俺たちは反応から察していただろうが……この女には、そもそも隠す気すら無いということか。そういうところも、愛らしいな」
玲央が機嫌を良くしながら言う。その言葉に、樹は目を細めた。
「……うん、僕も同じ気持ちだ」
彼女の頭を自分の膝の上に置いて、彼は優しい手付きで撫でる。そして花が咲くように、幸せそうに笑った。
「僕に好かれようとして、嘘をつく子も。他人を蹴落とす子だって、沢山いた。あの王女様も例外じゃない。そんな中で、彼女だけが僕の幸せを願って離れようとした。……本当に、どうしようかと思ったよ。悩んだ末に、結局家に帰したけど」
陽葵の頭を撫でながら、樹が呟く。玲央はその言葉を聞いて、何とも言えない表情を浮かべた。
「お前は、陽葵の気持ちを優先したのか」
「そうだ。でも、帰すべきじゃなかった。……本当はずっと、僕の目が届くところにいてほしい。もう2度と、危ない目に遭わないように。ここに閉じ込めたいくらいだ」
「……ほう、なるほどな」
暗い目をした樹の言葉に、玲央はニヤリと笑って告げる。
「好きにしろ。お前が本当に、それを実行した時は……前世とは、逆の立場になるだけだ」
彼の言葉に、樹は本気で嫌そうな顔をした。
「君はそう言うと思ったよ。だからやらない。逆効果だって、分かっているから」
「それは残念だな」
言葉とは裏腹に、玲央はずっと楽しそうにしている。その目は陽葵に向いていた。彼女は目を閉じて、樹の膝の上に横たわっている。2人の少年は、そんな彼女から、目を離すことができなかった。そうして3人は、遊び疲れた夏穂たちが戻ってくるまで、そのまま穏やかな時間を過ごした。




