玲央と樹と陽葵(中編)
陽葵はゆっくりと顔を上げた。樹と玲央は、彼女に優しげな眼差しを向けている。
「……というかね、陽葵。僕は今、まさに。君にお願いを聞いてもらってるところだよ。今日と明日は、僕の家に泊まってくれるんだろう? 明日はちょうど夏祭りの日だ。浴衣を着て、一緒に回ってくれる? 君と手を繋いで、お祭りの屋台を巡って、最後は並んで花火を見上げる。きっと特別な1日になるよ。……君が、それを叶えてくれるなら」
ニッコリと笑って、樹が陽葵の手を取る。彼はそのまま、彼女の手の甲に軽い口づけを落とした。陽葵は恥ずかしさと照れで固まる。そんな彼女を見上げて、彼は笑みを深めた。
「僕の陽葵。本当に君は、自分のこととなると無頓着だね。いっそ、お姫様みたいに飾り立ててあげようか? ……君が憧れていたあの姿、僕は何とも思わなかった。でも、君が綺麗なドレスを着て、僕に向かって微笑んでくれるなら……話は別だ。どう?」
甘い声音で囁かれて、陽葵は顔を真っ赤にした。横にいた玲央が、ため息と共に言葉を吐き出す。
「……ああ、それは良いな。人間の姿には興味がないが、お前は別だ」
彼の手が、陽葵に向かって伸ばされる。硬直したままの彼女の頬に手を添えて、彼は強気な笑顔を見せた。
「俺も樹と同じ穴の狢だ。奴の気持ちが、よく分かる。俺たちが求めているのはお前だ。体も心も、手に入れたいと思うのはお前だけ。他の女では意味がない」
「……どうして?」
陽葵は瞬きをして、問いかけた。2人の少年が、それぞれに告げる。
「そんなの、ねえ? 前世から君のために生きていて、君のために死んだ男だよ、僕は。君が変わっていないというだけで、愛し続ける理由になるでしょ」
「俺の場合は所有欲だな。何もかも持っている樹が、未だに手に入れられていない宝。それがお前だ。俺はそれだけで、お前に価値があると思った。そしてお前を知って、確信した。……この手に落ちてきた後も、お前は輝き続けると」
彼らの声は真剣だ。本当に、心の底から告げている。それが分かって、陽葵は言葉を失った。
(……どうしよう。目が、離せない)
心臓が早鐘を打つ。求められることが、嬉しいと思ってしまった。望まれたことを、叶えたいと。
(……私、どうしたらいいの……?)
恋心を自覚した。してしまった。それも同時に。彼女は迷いながら口を開く。
「……あ、あの。……ありがとう。私も、好き。……樹くんのことも、玲央くんのことも。どうしよう、私。2人のこと、同じくらい……大好きだと、思っちゃった」




