表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

92/201

一休み(前編)

少しだけ積極的になった陽葵(ひまり)が、水しぶきを立てながらはしゃぎまわる。(いつき)玲央(れお)は、彼女を見ているだけで満たされた。自然と、2人の動きが(にぶ)くなる。結局、また決着はつかなかった。それでも2人は、満足そうに笑っている。


「あー、楽しかった。……少し休もうか。鈴生(すずなり)。休憩場所を、作ってくれる?」


樹がニッコリと笑って、入り口の方に視線を向ける。そこには誰もいないように見えた。けれど、しばらくして。物陰から女性が現れる。


「……そう仰ると思って、既に用意しています」


彼女は振り返って、複数人のメイドを呼んだ。呼ばれた女性たちは手際良く、プールサイドに簡易的な椅子と机を置く。それを見て、樹は目を細めた。


「……ありがとう。流石だね」


休憩場所の準備を終えたメイドたちが、その言葉に揃って頭を下げる。鈴生はそのまま続けた。


「お飲み物は、何がよろしいですか? 大抵の物は揃っていますが」


「そんなのオレンジジュースとか、その程度でいいでしょ。……いいよね?」


夏穂(かほ)がプールから上がりながらそう言って、樹の方に視線を向ける。彼は笑顔で頷いた。


「そうだね。僕もそれでいいと思う」


その言葉を聞いて、メイドたちが動き出す。一糸乱(いっしみだ)れぬその姿に、陽葵は感嘆の声を()らした。


「……すごいね。この人たちって、いつもこうなの?」


「まあね。皆、ベテランだから。ほら、若い子は1人もいないでしょ?」


樹は笑顔でプールから出て、陽葵の手を取って彼女を引き上げながら告げる。その言葉に、陽葵は改めてメイドたちを見た。


「……確かにそうかも。そうか、何でもできる人しかいないんだ」


「にしてもどうかと思うけどな。第一、他人に世話をさせるなんて、若い頃からそんなことを覚えさせてどうすんだよ」


千秋(ちあき)が不機嫌そうな顔をする。樹は笑顔のまま、メイドから受け取ったタオルで体を拭いて、椅子に座った。


「そうは言っても、この豪邸を僕だけで管理することはできませんから。人に任せられることは、やってもらってもいいでしょう? 僕も、何もできないわけではありませんが……彼女たちはプロなので、僕より仕事ができるんです」


「そうですね。樹様には、他にやるべきことがありますので」


彼の言葉に、オレンジジュースの瓶を持って入ってきた鈴生が、淡々とした声で同意する。彼女はコップを机に置いて、ジュースを注ぎながら続けた。


「リモートワーク、でしたか。離れていても、お父様に任せられた支社の決済は、樹様のお仕事です。もっともこの方は優秀すぎて、すぐに終わらせてしまいましたが」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ