遊技場(後編)
「そう言われても、何となく見てるくらいでコースの把握なんてできないよ。それに私、ながら見が多いし」
陽葵が頬を膨らませる。夏穂は画面を見ながら続けた。
「にしたって、過去作くらいはやってるでしょ。なんでスタートダッシュの時点で失敗してんのよ」
「……だって、意外と難しいんだもん、これ」
「うむ、確かに。自分の体を使わん分、勝手が分からぬものではあるな」
春奈が訳知り顔で頷く。夏穂は深いため息をついた。
「……アンタも同意してんじゃないわよ。もういいから、雷引いたら使ってよね」
「う、うん。分かった」
そう言って、陽葵はコントローラーを握り直す。樹に教わりながら、なんとか進んで、アイテムを取ったらすぐに使う。それを繰り返しても、彼女は結局最下位から抜け出せなかった。それでもゲームが終わった後に、少女は感嘆の声を出す。
「はー……大変だったけど、楽しかったね。もう1回やる?」
「……いいわよ別に。新しいゲーム機、触ってみたかっただけだし」
夏穂がコントローラーを放り出して告げる。彼女は春奈の方をチラリと見て、樹に向かって問いかけた。
「ねえ、せっかくだから皆で楽しめることをしない? なんか提案してよ。ここ、アンタの家だし」
「……まあ、そうだね。テニスコートとか、後はスポーツ用品も一通り揃ってはいるけど。一応、プールもあるよ」
「はあ? だったら最初からそう言いなさいよ。水着なんて持ってきてないんだけど」
「……ない、わけじゃ……」
樹の声が次第に小さくなる。夏穂は彼に詰め寄った。
「何。まさか用意してあるの?」
「……それは、まあ。サイズも種類も、それなりに」
「陽葵のためだろう? いじらしいを通り越して、少し気持ち悪いとすら思ったぞ。まだ再会の挨拶すらしていない時から、浮かれて色々と買い揃えていたからな」
春奈が豪快に笑いながら口を挟む。樹は目を伏せて、申し訳なさそうにした。
「……仕方がないだろ。僕だって、男なんだから。好きな女の子の水着姿を、見たくないって言ったら嘘になるよ」
小さな声で溢された言葉に、陽葵は困ったように笑う。反対に、夏穂は冷たい目をしていた。
「で? それ、当然貸してくれるんでしょうね」
「もちろん。……君たちが良ければ、だけど」
「良いわよ、もう。この際、誰のためにとか、そういうことは気にしないことにするわ」
その言葉を残して、夏穂は渋い顔で席を立つ。春奈は笑いながら、扉の側まで移動した。
「では、私たちは別室で着替えてくるとするか。覗くなよ?」




