遊技場(前編)
「……で、春奈ちゃんはどこに行ったの?」
夏穂が楽しそうに笑いながら口を開く。樹は少し考えてから答えた。
「多分、遊技場じゃないかな。案内するよ」
そう言って、彼は5人を先導する。大広間を出て、広い廊下を進み、角をいくつか曲がったところで。彼は立ち止まって、左側にあるドアを開けた。その向こうには、ビリヤードの台とダーツの的、奥には最新型のゲーム機まで置いてある。そして、その前のソファには少女が座っていた。彼女はドアが開いた音を聞いて、入り口の方に目を向ける。
「ああ、来たのか。それで何で遊ぶんだ?」
「そりゃ当然、Stitch3があるんならそれをやるに決まってるでしょ。ていうかよく手に入ったわね、未だに高倍率なのに」
話しながら、夏穂が樹の横を通り抜けて部屋に入る。春奈は目の前の機械を見つめながら、困ったような顔をした。
「……これは樹が当てたんだ。俺はよく知らないし、抽選にも参加してない。ゲームにはあまり興味がなくてな」
「えー、それもったいなくない? あるのに使ってないってことでしょ。落ちた奴らから刺されるわよ。因みにアタシも落ち続けてるから刺す」
そう言いながら、彼女はゲーム機の電源を入れる。陽葵たちは順番に部屋に入って、春奈と同じソファに座った。樹が後ろ手で扉を閉めて、レースゲームを起動した夏穂に声をかける。
「コントローラー、専用のもあるけど使う?」
「使う」
「じゃあ出そうか。4人までだから、順番にね」
樹はそう言いながら側に来て、机の上にハンドル型のコントローラーを置く。夏穂が真っ先にそれを取って、陽葵に渡した。
「はい、とりあえずアタシと陽葵は確定ね。で、後2人は? じゃんけんで決める?」
「俺はいい」
「私も後からで良いですよ」
夏穂の問いに、春奈と渚が即座に返す。樹は柔らかな笑みを浮かべた。
「僕と玲央は、両方参加すると加減ができなくなるだろうから……僕も1回目は遠慮するよ」
その言葉で話は決まった。玲央と千秋が残ったコントローラーを取って、ゲームの中でレースが始まる。そして陽葵は、あっという間に周回遅れになった。
「あれ、これどっちに行けばいいんだっけ……?」
夏穂が爆走している横で、彼女は手を止めて画面を見ながら首を傾げる。それを見て、樹は笑みを深めた。
「そのまま右に行って、そうそう。そのトンネルを潜った先で、カーブを曲がればいいんだよ」
彼が横から助言する。陽葵はその言葉に従って、ゆっくりと走り始めた。その直後に、1回目のレースが終わる。接戦の末に3位で走り抜けた夏穂が、呆れた顔で横を見た。
「アンタ、いくらなんでも遅すぎない? 実況とか見てるでしょ、コースくらいは把握しといてよ」




