表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

81/201

樹の妹(中編)

「そうでもない。黙っていても、向こうが勝手に解釈して、話を進めてくれるからな。まあそのせいで、深窓の令嬢だと思われているが」


「とんだ詐欺じゃねーか、それ」


春奈(はるな)が真顔で返した言葉に、夏穂(かほ)は渋い顔をする。少女はかつての友人を見上げて、淡々とした声で話を続けた。


「しかしな、メルヴィン。ならば俺はどうすればいいと言うんだ。筋肉をつけたいというのも、女としてはあまり推奨されないことなんだろう?」


「いや、そういうのは今は逆にねえだろ。好きなようにしろよ。……どっちかというと、お前が気にするべきなのは、言葉づかいじゃねえか? オレが言えたことでもねえけど」


「……むう」


少女が頬を膨らませる。


「お前も、樹と同じことを言うんだな。分かっているとも。外では俺も気をつけている。それでもたまに失敗するが。……しかしな、ここは俺の家でもあるんだ。しかも色々と言ってくる両親が居ない。それなら好きに喋ってもいいだろう。その方が気が楽だしな」


「……まあ、それはそうか」


夏穂は表情を和らげて、置きっぱなしになっていたナイフとフォークを取った。


「アンタのことをいちいち気にしてたら、いつまで経っても食事が進まないし?」


ニカリと笑って、彼女はナイフで肉を切る。その横から、既に食べ終えていた陽葵(ひまり)が遠慮がちに声をかけた。


「ええと、あの。春奈さん……? 初めまして、私は佐藤陽葵です」


「これはどうも。貴女のことは樹から聞いているので、(かしこ)まる必要はないですよ。貴女を見つけた日の彼は、本当に嬉しそうだったので、俺も良かったと思ったものです。もっとも、そこに彼……来間(くるま)玲央(れお)さん、でしたっけ。その人までいるとは、思いもしなかったのですが」


彼女の言葉に、千秋(ちあき)の目が()わる。彼女は低い声で言った。


「……話が全然分かんねえが、お前といい樹といい、玲央になんか恨みでもあんのか?」


「恨みはありません。憎しみも。ただ、対立しなければならなかっただけです。状況が、友誼(ゆうぎ)を結ぶことを許さなかった。俺も樹も、そして彼女も。そうするしかなかったから、旅立ったのです。そしてその日々は、過酷でしたが楽しい思い出でもありました。樹が先に居なくなってしまった時、俺たちが揃って後を追うことを決めたのも、それ故です。だから俺は、彼がここに来ると聞いた時、一目会いたいと思いました。彼が何を望み、どうしたいと思っているのか、その口から(じか)に聞きたかったからです」


春奈が真っ直ぐな瞳で玲央を見つめる。玲央は目を細めて口を開いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ