お昼ごはん(前編)
「私も千秋さんと同じくらい、強くなりたいです」
「ハア? アンタは十分強いだろ。コイツら相手に、真っ向から交渉できるんだから」
陽葵が心の底から溢した言葉に、千秋は真顔で返す。そのままレストランに向かって移動しながら、彼女は話を続けた。
「強さなんてのは、結局は総合力で決まるもんだ。力がないなら技を磨けばいいし、そもそもアンタとアタシは違う。アタシには少し長く生きてる分の経験があるだけだが、アンタはこのバカ共に愛されてるんだ。だからコイツらに対しては、アタシよりアンタの方が強いんだよ。まずはそれを自覚しな」
彼女の言葉に、陽葵は目を見開いて考え込む。樹と玲央は何も言わないことで、その言葉を肯定した。そのまま無言で歩き続けて、6人はレストランに到着する。そこでは丁度、店員が店の前の紙を捲って待っている組を確認していた。
「えーと……来間さん6名、今いらっしゃいますかー?」
「はーい! ここに居ますー」
「はい、ではボックス席が空きましたのでこちらにどうぞー」
店員の問いに、夏穂が元気よく手を上げて答える。店員は笑顔で、6人を奥の席に案内した。
「それではごゆっくりー」
店員は、6人が席に着くのを横目に去っていく。夏穂がサッとスマホを取り出して、席にあるQRコードを読み取った。
「とりあえず、定番のやつ頼んじゃうねー。ドリンクバーと、チキンのやつと……陽葵は何食べる?」
画面を見ながら彼女が告げる。陽葵はメニューを開いた。
「うーん、やっぱりドリアは外せないかな。あと、このラム肉の焼き串も食べてみたい!」
「おけおけ、じゃあこんな感じだねー。はい次!」
夏穂が順番に注文を聞いて、それを全てスマホに打ち込む。陽葵はその間に、難問で有名なクイズの紙を開いて解き始めた。彼女の斜め前に座った樹が、紙を覗き込んで目を細める。
「僕、ここの答え分かるよ」
「聞きたくない。待ち時間の暇潰しだし。……こっちがメインっていう人もいるけど、私はそうじゃないから」
紙に目を落としたまま、陽葵が即答する。樹は少し寂しそうな顔をしたが、結局何も言わなかった。その間に、夏穂は注文を送信してスマホをしまう。渚と夏穂は、先にドリンクバーを取りにいく。そして、陽葵がまだ半分も埋まっていない紙とにらめっこしている間に、店員が注文した商品を運んできた。机の上に料理が並んで、陽葵は顔を輝かせる。
「わあい久しぶり!」
ニコニコ笑顔でドリアから食べ始める彼女を、樹と玲央は愛おしそうに見つめた。陽葵はそんな彼らに気づいて、少しムッとした表情になる。




