お出かけ(前編)
「……そろそろ混む時間でしょうし、行くなら早めに行きましょう?」
その場の雰囲気が少し悪くなったのを察して、渚が苦笑いを浮かべながら口を開く。彼女の言葉に従って、陽葵たちは駅前にあるサンセリアへと向かった。昼前のレストランには、既に数組の先客が並んでいる。
「アタシたちの組は6人だし、結構待ちそうだな。どうする?」
「まあ、近くにゲームセンターもあるし、1時間くらいは余裕で潰せると思いますけど」
千秋の問いに夏穂が答える。千秋は横目で樹の方を見た。
「お前はそれでいいのか?」
「構いませんよ。……何か勘違いされているのかもしれませんが、僕は陽葵と一緒に居られるのなら、それだけで満足できるんです。その時間が暇だと思うこともない。ただ、僕はそうでも、彼女は退屈してしまうでしょうから……ゲームセンターで遊ぶというのは、良い案だと思います」
ニコニコ笑顔で彼が返す。その言葉で話は決まった。レジ横にある白い紙に、千秋が自分の名字と待っている人数を書く。そしてその後に、彼らはゲームセンターへと移動した。
「さて、せっかくなら1度樹と勝負しておきたいところだが……」
「僕は何でもできるから、どれでもいいよ」
玲央が樹と視線を交わす。2人の間で火花が散った。夏穂はそんな2人を無視して、陽葵に向かって話しかける。
「あっちはあっちで盛り上がりそうだし、アタシたちは音ゲーでもやりましょ。お祭りの鉄人とかどう?」
「……あ、わ、待ってよ夏穂……!」
心配そうにしていた陽葵が、友人に引きずられる形で離れていく。渚は微笑みながら、彼女たちを見守るように少し離れて付いていった。千秋は無言でそれを見送って、目の前で言い争っている少年たちに視線を向ける。
「……なあ。前から疑問だったんだが、お前ら、どこかで会ったことでもあんのか?」
その問いに、樹と玲央の動きが止まる。千秋は目を細めて続けた。
「だいたい、いくらなんでもおかしすぎるだろ。生まれた時から何にも興味を持たなかった玲央が、急に『コイツに勝ちたい』って言い出したのもそうだが……大企業の御曹司が、突然田舎の高校に進学してくるってのも変な話だ。その上、そこでたまたま出会った女に一目惚れするなんてのもな。あまりにも話ができすぎてる。どこかで1度会っていたって考えた方が自然だ。……なあ玲央。お前、まだアタシに隠してることがあるんじゃないか?」
姉と弟の視線が重なる。そして。先に目を逸らしたのは、玲央の方だった。




