表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/201

玲央の家での勉強会(中編)

「おい玲央(れお)、客が来たぞ」


千秋(ちあき)がドアを勢いよく開けて声をかける。部屋の中で座っていた玲央は、その声を聞いて振り返った。


「……よく来たな、陽葵(ひまり)


彼が表情を和らげる。陽葵は少し困ったような顔で、彼の真向かいに荷物を下ろした。


「えっと、その……」


「なあ玲央。(なきさ)から聞いたけど、なんかややこしいことになってんだって? ちょっと(ツラ)貸しな。アンタの話も聞いときたいから」


彼女の後ろに立ったままの千秋が、真剣な顔で手招きする。玲央は舌打ちして立ち上がった。そして彼は、姉に連れられて奥に引っ込む。残された陽葵は、不安そうな表情で彼が去った方向を見つめた。その肩を、夏穂がつつく。


「ほら、まだ宿題が終わってないの、アンタだけでしょ。ちゃっちゃとやっちゃいなさいよ」


「そうよ陽葵。来間(くるま)くんのことは、ちーちゃんに任せておけばいいわ」


姉からも背中を押されて、陽葵は戸惑いながらも参考書を取り出す。隣に座った(いつき)が、満面の笑みを彼女に向けた。


「分からないところがあったら、いつでも聞いてね」


その言葉に、彼女は苦笑を浮かべてペンを握る。妹の視線が問題集に移ったことを確認して、渚はそっと席を立った。


(ちーちゃんのことだから、きっと弟くんとも喧嘩してるんでしょうね)


その思考を裏付けるように、庭の方から物が崩れる音が聞こえてくる。千秋は勝手知ったる幼馴染の家で、台所の棚を開けて救急箱を取り出した。そして彼女はそれを持って、靴を履き直して庭の方に回る。その目の前を、姉に殴られて吹き飛ばされた玲央が横切った。彼は庭木に突っ込んで止まる。そこに、千秋がゆっくりと歩み寄った。


「なあ玲央。テメェまさか、腑抜けてんじゃねえだろうな」


「……そんなことは、ありません」


玲央が素早く起き上がると同時に、握った拳を思いっきり振り抜く。千秋は間一髪(かんいっぱつ)でそれを避けた。


「俺はあの男に勝ちたいだけです」


「本当にそれだけか? アタシを誤魔化せると思うなよ。御門(みかど)って奴に勝つためとか、そういうこと抜きで。お前自身は、あの子のことをどう思ってる?」


「……それは」


玲央の表情が曇る。その瞬間を、千秋は見逃さなかった。鋭いストレートでもう1度弟をふっ飛ばして、彼女は低い声で告げる。


「別にアタシは、お前の事情に口を挟む気はない。だけど忠告はしといてやる。そのままじゃ、お前は一生勝てねえぞ。まずは自分の気持ちを自覚しろ。勝負の土俵にも立ってねえのに、勝ちてえとか()かしてんじゃねえ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ